第4章 酔生夢死―すいせいむし―【NG】
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【OKシーン】
まるで猫のように。
五条の手に頬を摺り寄せる。
無意識であるがゆえに。質が悪い。
五条は自分でも恐ろしいほどに嗜虐心が煽られた。
瞳を閉じている彼女の、ぷっくりと膨らんだ唇に指を滑らせる。
小さく反応した渚沙は閉じていた瞳をゆっくりと開ける。
再びぶつかる視線に、涙で潤んだ彼女の瞳に。
五条の口は弧を描いて、そして彼女の唇にそっと己の唇を重ねた。
突然のことで渚沙の頭は真っ白に染まる。
何か、口に、当たっている。
が、それは一瞬のこと。
離れていく熱に、何度も瞬きを繰り返す。
そして未だに残る唇に、指先を添えた。
そして、クリアになっていく頭で自分が今何をされたかを理解した。
真っ赤に染め上げる顔は、恥ずかしさと混乱とわけのわからない感情で沸騰しそうだった。
五条は一人百面相をする彼女を見てくすりと笑い、渚沙の頬を掴むと、またキスをしようと唇を近づける。
拒もうとするも、大人と子供。男と女。
力で勝てるはずもなく、されるがままにその口を塞がれてしまった。
啄むような戯れるような口付けが降り注ぐ。
バタバタと暴れていた渚沙だったが、次第に大人しくなっていく。
慣れないキスと暴れたことによる体力の消耗で、身体を動かすという思考回路が止まってしまったのだ。
それをいいことに五条はより甘く熱いキスをしてきた。
慈しむように恋人にするように深く吸い付く。
甘ったるい音が、渚沙の耳や脳、神経を麻痺させていく。
息苦しさに耐えられず、酸素を取ろうと口を開けた。
瞬間。
口の中になにか生暖かい、別の生き物のようなものが入り込み、渚沙は驚きのあまりに再び暴れるが、五条はびくともしない。
五条の舌が渚沙の口内を犯していく。
上顎を舐められたり、逃げ惑う舌を追いかけては絡めて吸われる。
なもかもがおかしくなりそうだった。
渚沙はぎゅっと目を固く閉じると、思い切り五条の頭を殴りつけた。
無下限を解いていたが故、彼女の攻撃は簡単に当たってしまった。
流石の五条も脳への衝撃には耐えられず、唇を離し痛む頭を片手で押さえる。
痛みに悶絶したのは1秒か2秒程度。
しかし渚沙にとってはその時間で十分だった。
転がるように玄関へと走っていき、外へ飛び出した。
呼び止めようと彼女の名前を呼ぶ五条だったが、もう遅い。
追いかけることもできたが、それをしなかったのは、今追いかけて弁解をしたところで意味はないとわかっていたから。
【OK後】
監督からの「カット」がかかると同時に、五条はその場にいた七海と見学に来ていた夏油と家入に首根っこを掴まれ正座をさせられていた。
渚沙はというと、伏黒の影に護られる形で隠れていた。
「悟、どういうことか説明できるね?」
「えっと、抑えが効かなくなりました」
「よし、七海。今すぐ警察に連絡だ」
「ちょ、ちょっと待って!!」
家入の指示に素直に従う七海に慌てる五条。
一体何を待てと言うのか。
明らかに先ほどの行為は本人の同意を得ていない。
つまり青少年健全育成条例に引っかかり、淫行の罪に問われる。
台本に書いてある事ならまだしも、さっきのは台本には一切書いていない。
書いてあったのは、「渚沙の頭を優しく撫でる」それだけだ。
五条のアドリブという名の暴走が招いた今回のシーン。
大人組がそう簡単に許すはずもなく。
「流石にこれは目を瞑れないな」
「やっていいことと悪いことの区別もつかないんですか、貴方は」
「でも、監督はなにも言ってこないんだけど」
「そういうことを言ってるんじゃない」
「五条、オマエ反省してないだろ」
正座をさせられたままの五条は、けろりとした表情をしている。
監督も監督でこのシーンを撮り直さないのにはワケがあった。
まぁ、単純にいい画が撮れただけなのだが。
そのために、次のシーンに繋がる部分の台本を大幅に急ピッチで書き直している。
キャスト陣はそれまで休憩という形を取っているのだが、如何せん未成年に手を出すわ、スタッフに迷惑をかけるわで、堪忍袋の緒が切れた3人は五条に説教をしていた。
が、説教されている当の本人は何一つ反省などしていない。
そんな彼に近づく一つの影。
「あの……」
被害者の渚沙だった。
危ないからと危険人物から遠ざけようとする夏油たち。
しかし、次の瞬間渚沙から爆弾のような発言が投下された。
「私のために、ありがとうございます!!」
「へ?」
「最近スランプだった私を元気づけようとしてくれたんですよね。おかげで肩の力が抜けました。次のシーンも頑張れます!!五条さんのおかげです!!ありがとうございます!!」
純粋無垢な言葉だからこそ。
五条にはダメージが大きかった。
あんな大人なキスをされといて、渚沙はそれを五条からの好意として受け取ったのではなく、リラックスをさせるための行為だと受け取った。
これほどまでに伝わらないものかと肩を落とす五条に更に止めの一発。
「五条さんにこのようなことをさせないためにも、私もっと成長します!!頑張ります!!」
「う、うん……」
何一つ彼女は理解していなかった。
なぜ五条がアドリブまでもしてキスをしたのかなんて。
面白いくらいに五条のことなど眼中にない渚沙のその言動に、さきほどまで説教をしていた3人は肩が震えている。
どうやら笑いを堪えているらしかった。
そして撃沈する五条を残し、大人3人と渚沙と伏黒は外に食事をするため、スタジオを後にした。
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