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受話器の向こうから聴こえるウザったい声…これが目覚めに聞く声だと思うと少々…。
『いいねぇ。青い空、エメラルドグリーンの海、ベルファヴォーレイタリアン♪』
いや、めちゃくちゃイラつくな…俺はあしらう様に何だ。と問い頬に付いていたガーゼを剥がした。
鼻歌混じりにオウム返ししたかと思えば急に逆ギレする通信相手は…コムイだ。羨ましいんだの幽閉だのなんの愚痴ってくるがお前のせいでもあるだろ…そもそも
「文句はアイツらに云えよ!つかコムイ!俺アイツと合わねェ。」
『アイツってナナミちゃんの事?』
不意に出された名前につい食い気味に違う。と反応する…がなんかコムイがふーん。と気持ち悪い声を出すものだから素早くモヤシの方だ。と告げる。ふと俺はトマから受けっ取った棚の上に置いといたメモを眺めた。
綺麗な字で書かれていて、性格と合わないな。つい口角が上がる。
"ぐっもーにん!一昨日の夜はどーも。
これからアレンのとこに行くから気合で見つけろよ、多分ユウなら簡単に見つけられるさ。
期待のルーキー★ナナミより"
と、なんともまぁむか…陽気な手紙だった。すると受話器の向こうからコムイの笑い声が聞こえる。
「急に笑うな、気色悪ぃ。」
『ひどいなー…。いやね、意外だなーって。』
「は?何がだ。」
彼は誰にも関与しない俺があんなやかま…明朗快活なナナミと気が合うのは珍しいと告げる。気が合うと云うか…そんなつもりはないが…そもそもしっかり任務遂行すりゃあ誰だっていい。が!しかしコムイに云われると尚更むかつくな…。オレは、モヤシもナナミもきっと人形のところに行ったのだろう。そう云いながら点滴の針を引っこ抜いた。
かわいた笑い声のあとコムイは真面目な話に戻った。
『そのララっていう人形…そろそろなのかい?』
「多分な。もうアレは五百年動いてた時の人形じゃない。じき止まる。」
場の雰囲気が静まりかえった時。ドスドスと慌ただしい足音と共に焦りながらドクターが登場してきた。静かに歩け、院内だぞここ。そいつはなにしているのか。と聞きながら俺の行動を止めようとするが残念ながら止まるわけにも行かない。
「帰る、金はそこに請求してくれ。」
トマが素速くドクターに請求書を差し出す。医者驚いた顔をするがすぐこちらを向き返した。
「ダメダメ!あなた 全治3ヶ月の重症患者!!それに あの全治5ヶ月半の女の子は何処に行ったんだか!」
ドクターはまさにパニック状態…落ち着けって。
しかしナナミ…お前って奴は医者に何も云わず出て行ったのかよ…らしいけどな。
「治った、因みにアイツもだ。」
「そんなワケないでしょ!!」
うるせー奴だ。俺は体に巻かれた包帯を外し医者に渡しシャツを着て世話になった。と云い棚の上にある手紙と団服を取りこの場を去って行った。
勿論 俺のケガはすべて無くなった。もとから軽傷だったしな……
外に出ても、まだコムイとの電話は続いていた。
『今回のケガはどうだった神田くん。』
「どうもこうも今回は軽傷だしな。」
そっけない返事だったせいか、コムイの次の言葉が濁っていて出しにくそうだった。
『でも軽傷といえど時間がかかってきたって事はガタが来始めてるってことだ、計り間違えちゃいけないよキミの命の残量をね…。』
この言葉を切り出すのは俺らエクソシストの司令塔として中々云い難い事だろう…仲間にこんな宣告するのは楽じゃないだろうな。
暫しの沈黙が続きオレは小さく溜め息をついた後に口を開いた。
「 で 何の用だ。イタ電なら切るぞ コラ。」
そう脅しをかけるとコムイは受話器で話していることも忘れ叫びつつリーバーに辛辣だのほざいている。しかし、リーバーは呆れかえったような生半可な返事をしているのが聞き取れる…ったくうるせー野郎だな。
『違いますぅー次の任務の事です…』
「ならさっさと云え…。」
コムイは子供ぽい声を出しながら話を切り出した
『そう云えばミズキちゃんがこっちに戻って来たんだ。』
「何!?ミズキが?」
久々に聞くその名に驚いた。なんせ櫻井ミズキはいろんな支部を巡って何故か本部に戻って来ないという…どっかの元帥と似てるな…。それはさておきミズキはどうやら各支部に本部での資料を渡しつつアクマの破壊に回っている団員だ。実力はかなりある、俺と同じ刀を武器にしている。
「何時戻ってきた…。」
俺がそう問い質すとコムイは悪戯を仕掛けて楽しんでる子供のような声で応えた。
『神田くん達が任務に向かった時♪』
チッ…入れ違いか…。
『まっ…神田くんはミズキちゃんのことが好きだなんて噂がどっかで立ってみるみたいだしね、一応報告しときましたー。』
「いらねーよ…なんだよその噂、真に受けるな。」
『それで、任務の事だけどキミ…神田くんはそのまんま次の任務に向かって貰うよ。』
「人手不足か…。」
『ごめんね、疲れているところ。』
「かまわねーよ…。」
『云うと思ったよ…任務先にはマリとデイシャそれとミズキちゃんだ。』
あぁ…あいつらもか…つまり弟子カルテットで遂行か…ならやりやすい。
『あ!ナナミちゃんとアレンくんにはイノセンスを持って教団に戻ってくるように云っといてね。それじゃあ。』
受話器の音が聞こえたと共に自然と溜め息が零れた。トマはどうかしましたか?と聞いてきたが、俺はなんでもない、と応え受話器を戻した。
「ちっ…ナナミとモヤシの処に行くぞ。」
「はい。」
踵を返してアホ共の元に向かう。
*
―数時間前
盛大な欠伸をかきながら俺は起き上がった。ベットから起き上がり団服に腕を通そうとした時、自分の姿が窓ガラスに映った。
包帯以外にも沢山のガーゼが貼ってある…ボロボロでみすぼらしくて、まるで女っ気のない傷跡が残る自分の姿。
そっと包帯の上から一番でかい傷に触れる。俺の能力はケガ人の治療、もとい反転だ。大小構わず状態異常も含め治す、反転することが可能だ。流石に色んな武術を極めすぎてるしな、そんなペナルティがあってもおかしくはないだろう。が、
「ぐぬぬ…せめてユウが軽傷で済めば良かったのにな…。」
そう、これは仲間である神田ユウたんを治した時に反転した傷。本来ならユウが持っていなければならないはずなのだ。
治療したはいいんだけど物語が変わってしまう可能性だってある、けど目の前であんな酷いケガを負われてしまえば治さないと後味が悪いだろ。
それと包帯以外に目に入ったのは両手の甲にある十字架の痣らしきもの、第二のイノセンスかぁ…。
そもそも俺は錬金術モドキもとい召喚する能力がいつの間にか身についていた。それがイノセンスと関係しているのだろうか?それで進化したアレンのイノセンスの気にあてられたから発現した…てのがありえそうだな…はぁ、自分の後立たないケガやイノセンスの事、頻繁に溜め息が零れる理由だ。幸せが逃げてしまう。
云ってるそばからまた溜め息を漏らし団服を持ち、病室を出た瞬間…足に何かぶつかった、というより蹴ってしまった…。
ぶつけた足元を見てみるとそこには、寝ているトマがいた…!もしかして昨日からつきっきりで見張りを?いやーご苦労さま(ナナミが脱出しない為)。
苦笑をして部屋に戻り、布団をかけてやり、紙切れをトマの手に握らす。俺はトマの疲れが取れるようにとワンフレーズ歌い今度こそ部屋を後にした。
砂利混じりな石畳を歩き俺はまだかすかに聞こえる歌声を勘探り足をそちらへ向かわす。
「ララの歌…まだ聞こえる…。」
ほっとした。けど、そろそろで聞こえなくなるのを知っている。自然と駆け足になる。階段を駆け上ろうとしたが…止めた…ふたりの様子が気にはなるが…野暮だろう…。
階段の砂埃を軽くはたきよいしょと座る。ガルのほっぺをみょんみょんしたり、たまにララの歌声に合わせてハモったいたら足音が聞こえる目線を合わせたら…死んだ魚のような眼をしたアレン氏が立っていた。
「何で、全治5ヶ月半の人が僕より先に来て元気そうなんです?」
「治ったから。」
「嘘ですよね?」
「大マジ。俺は傷の治りが速い事だけが取り柄だから。」
そうですか。と別に否定もしない面白くもない返答で彼は俺から数段下に座り込む。ティムとガルは楽しそうに俺の前で仲良しそうにパタパタと飛んでいる。
相変わらず手持ち無沙汰でハモったりと時間を潰していく。こういう沈黙は流石に空気を読みますわな。
大分時間が経った…そんな中静かな丘に響き渡るドスが利いた声…。
「何ボケッとしてるナナミ。モヤシもだ…何寝てんだしっかり見張ってろ。」
「あれ…?今度は全治3ヶ月の人がなんでこんな処にいるんですか?」
「治った。」
「揃いもそろってバケモノですか?あなた達。」
アレンの口が開いたと思ったがなんともまぁ、皮肉たっぷりなお言葉なこと…
どうやらユウちゃんに次の任務が来たらしく、俺はアレンと一緒に本部に一時帰宅しイノセンスを届ける。と云う伝言を受け取った。俺とアレンは了承した。
しばし長い沈黙が―
俺らに察してなのかユウが辛いなら人形止めて来い、と厳しいながら最適解であろう言葉を投げかける。
たしかにあれはもう"ララ"じゃない、ただ歌い続ける魂がない人形…イノセンスを抜かれてしまえはまた、元の姿に戻ってしまう。
「ララを壊すのはグゾルさんじゃないとダメなんです。」
「約束してたからな…」
「ちっ……果たそうとしている。か。」
汲み取ってくれたか、と思ったがユウは小さく溜め息を零してこう続けた。―俺達は"破壊者"だ"救済者"じゃない、と。意地悪で云っているわけではない、それはわかっているが……酷だな…。
「でも 僕達は…」
アレンが云い掛けた途端だった。急に大きな風が俺らの間を通り抜ける。
ララの歌が、止まったのだ。
悲しき戯曲
子守唄を止めないで
