X破壊指令
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「ワイリー博士…何ですかその格好は…?」
呆れを含んだ溜め息は白く、雪に融けて消えていく。
ナナシは冷気の吹き込む玄関先で立ち尽くしている。
「どうじゃ!似合うじゃろ?」
サンタ服を着た博士は両手を広げて見せる。
サイズもぴったりで意外と似合っている。
おそらく買ってきたものではなく、裁縫の得意なニードルマンに作らせたものだろう。
毎度のことながら博士の突飛な思いつきに付き合わされるニードルマンに同情の念をいだく。
「なんで黒なんですか。サンタクロースといったら赤でしょう?」
「ブラックサンタじゃ!」
ブラックサンタクロース。
ドイツ語でクネヒトルプレヒト。
その名の通り黒いサンタである。
通常のサンタが良い子にプレゼントを与えるのに対し、黒いサンタは悪い子にお仕置きをするという。
「……それで、いったい誰にお仕置きする気なんですか?」
「決まっておるじゃろ!ワシをいじめるライトとロックマンじゃ!!」
すこし目を離すとこれだから、と諦めの溜め息。
両手一杯の買い物袋を玄関ホールに置いてマフラーをほどく。
「そうですか、夕飯は七面鳥です。お早めにお戻りを」
「何を言っておるナナシ、お前も付いて来るのじゃ」
「は?」
この人は今なんと言ったのか。
非力な人間の私を戦闘用ロボットの乱舞する戦場へ連れて行ってどうするつもりか。
私の仕事は家事であってロックマンとドンパチやることじゃ無い。
「お前の分の衣装もあるぞ」
冗談じゃない。
私が来たら完全にコスプレだ。
いや博士のもコスプレだが、さすがにサンタ服を着るのは恥ずかしい。
「いえ私は夕食の準備が」
「おーい、ニードル、ナナシの分を渡してやれ」
ニードルマンの嬉々とした表情。
彼には悪気はないだろうが、しゃくに障る。
一瞬でも同情なんてするんじゃなかった。
きっと彼は喜び勇んで衣装を作ったに違いない。
差し出された紙袋を開けてみると鹿の角の様なものが見えた。
「…何でしょうか…?これは…?」
「サンタにはトナカイが付き物じゃろ?ほれ赤鼻もあるぞ。……おお!ぴったりじゃ!お前に似合ってるぞ」
馬鹿にするかのようにニヤニヤ笑う博士に一瞬だが確かに殺意が湧いた。
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