また明日
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隔離病棟の窓は有刺鉄線の上に茜色の空を映している。
ナナシの血色が悪く化粧気の無い頬は西陽で紅く色づき、乾いた唇には幽かな笑みが浮かんでいる。
彼女はベッドの上で半身を起こし、窓の向こう、赤い空を、目を細めてじっと見つめていた。
突然黒い影が西日を遮り、彼女の前に降り立った。
大きく開いた窓から風が舞い込み、艶を失くした黒髪をまき上げる。
「ずいぶんとお久しぶりですのね、永いこと来てくださらなかったものね、シャドーマン」
「すまない、拙者も忙しくてな……怒っているか?」
「いいえ、少し寂しかっただけよ。貴方が来て下さって嬉しいわ」
「今度からもっとまめに来ることにしよう」
「皆もお元気かしら?」
「ナンバーズの事か?皆、達者であるぞ」
「博士は?」
……博士は、
博士はもう何年も前に亡くなられた。
拙者は世界を、博士の理想とした世界をご覧に入れることは出来なかった。
「博士も御健勝だ」
「そう、よかったわ。皆変わりないのね。貴方も元気そうで安心せたわ」
主を失い、目的を失ったナンバーズは散り散りになり、消息なぞ疾うに途絶えた。
護るべき者と存在意義を失い、自ら稼動を停止した者もいると言う。
しかし、拙者にはまだ護るべき者が、ここに。
「ああ……そろそろ行かねば」
「もう行ってしまわれるの?」
「明日も来よう」
そんな嘘を何度重ねた事だろう。
明日もナナシは此処で拙者を待っているのだろうか。
明日も拙者は壊れずに此処へ来られるだろうか。
嘘に嘘を重ね、貴女を置き去りにする拙者を、どうか許してくれ。
また明日
天まで積み上げた真っ赤な嘘
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