何だ？ この気持ちは。
今すぐ彼女に駆け寄って抱きしめたい。そんな衝動に駆られるが、その気持ちをぐっと堪える。
今はまだ早いのだ。もう少しだけ彼女を観察してからでも遅くないはずだ。そう思い直して、俺はサーチスネークを呼び戻す。

そして、最後にもう一度録画映像を再生し――彼女の姿を目に焼き付ける。

「……」

ああ、やっぱり良い女だ。俺には勿体無いくらいの。
だからこそ、今はまだその時じゃない。彼女が自分の意思で俺を選んでくれるまで待つと決めた以上、こんな感情を持って接するわけにはいかない。
それに、これは俺なりの意地でもある。今まで散々振り回されてきた仕返しという意味も込めて、絶対に惚れさせてやるぞという覚悟を決めた上での行動だった。
だから――
待っていてろ。いつか必ずお前を迎えに行く。それまではどうか……俺以外の男に目移りするなよ。
心の中で彼女に別れを告げると、サーチスネークによる映像を閉じ、俺はその場を離れた。