「何より美しいのは自分自身だと、そう思っていた。貴女に初めて会った時もそうだった」
ジェミニマンは囁くような声でぽつりぽつりとつぶやくように語りだした。

いつもの詩をそらんじているかのような朗々たる声ではない。

「でも今は違う。私だけが、貴女が何よりも美しいことを知っている」

まるで、大切な秘密を打ち明けるかのようにひそやかで切実な響きだ。

「他の誰にも渡したくない。貴女の美しさは私だけのものだ」
「……っ！」

まるで愛を告白するかのような言葉に、私は思わず息を呑んだ。
そんな風に言われたことは生まれて初めてだ。
困惑している間にもジェミニマンはどんどん距離を詰めてくる。
もう目の前にまで迫っていた。

「あの……？」

何か言わなければと思って口を開けた瞬間、ふわりと抱き寄せられた。

「え！？」

彼の胸の中にすっぽりと収まっている。
突然のことに頭が真っ白になった。

「あ……」

顔を上げるとすぐそこにジェミニマンの顔があった。美しいアーモンド形の目には熱っぽい光が宿っているように見える。

「…………」

彼は何も言わずにただじっと見つめていた。その視線に耐えられなくなって目を伏せると、指先で顎を持ち上げられた。
そのまま唇を奪われる。
最初は軽く触れるだけだった口づけは徐々に深くなっていく。

「んっ……」

息ができないほど苦しい。苦しくてたまらないはずなのに頭の芯が痺れるような心地よさを感じた。
どのくらい時間が経っただろうか。ようやく唇が離れていった時にはすっかり身体から力が抜けてしまっていた。
ジェミニマンが耳元で囁いた。

「やっと手に入れた」

低く甘い声音に背筋がゾクッとした。