涙腺エンプティ
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※失踪宣告(http://38.overplus.biz/)様よりお題をお借りしました。
(ひどい顔……)
鏡の前で独り言ちる。
まずは冷たい水で乾いた涙の痕を洗い流す。
赤く腫らしたまぶたにはアイシャドウを、目の下のクマにはコンシーラーを重ねて。
未だにものを言いたげな唇には赤い口紅を引けば、おそらくいつもどおりの顔だ。
こうなったのも、昨夜メタルマンと言い争いになって負けたせいである。
いつもなら多少の嫌味は受け流すのに、その時にかぎってひどくイラついていた私は、売り言葉に買い言葉で言い返してしまった。
そのまま口喧嘩がエスカレートし、最後には泣かされてしまった。
体調が悪かったせいで涙もろく感情的になってた節もある。
恥ずかしくなってそのまま逃げだしてしまったけれど、うまく言葉が出なくなり、代わりに涙がボロボロと溢れてきたとき、メタルマンはギョッとしたように見てきた。
その顔が何度も脳裏に浮かぶ。
涙は女の武器とは言うけれど、あそこで泣いて逃げてしまったのは卑怯だったと感じている。
言い返せもしないで逃げた私を軽蔑しているだろう。
彼からの私の評価などきっと散々なもので今更なのだけれど、そう思うだけでなぜかひどく心の奥が冷たく重たくなるような感じがした。
※ ※ ※
「あんたが泣くとこも初めて見たけどさ、メタルマンのあんな顔も初めて見たぜ」
フラッシュマンが冷蔵庫で冷やしていたE缶を開けながら笑う。
「化け物でも見たような顔してたわね」
いつもどおり博士の朝食を作りながら相槌を打つ。
卵が焦げないように弱火で手早くフライパンの上でかき混ぜる。
「あの後の任務、ひどかったんだぜ?ミスりまくりでらしく無いったらありゃしねぇ」
「人の噂をしてる暇があるなら仕事しろ」
フラッシュマンの後ろから噂をすれば影とばかりに本人が現れた。
「おっと、スネークからマッピングデータもらわないとなんねぇんだったわ」
フラッシュマンがそそくさとキッチンから出ていった。
(いつもはキッチンなんて寄り付かないのに)
昨日の今日で気まずいので会いたくなかったのだが、来てしまっては仕方がない。
火を止めながら何をしに来たのかとメタルマンを盗み見る。
「昨日はその、言い過ぎた」
「え?」
「二度はいわん」
そのままメタルマンは踵を返して行ってしまった。
まさか謝りに来るとは。
てっきり昨日の喧嘩の続きをするのかとばかり思っていた。
「待って!」
思わず追いかけて廊下に飛び出たが、あの赤い機体はもうどこにも見えなかった。
涙は女の武器とはいえ、ここまで効果的だとは、とトーストの焼けるにおいの中でぼんやりと思った。
涙腺エンプティ
少しパサついたスクランブルエッグは塩味が効いていた。
(ひどい顔……)
鏡の前で独り言ちる。
まずは冷たい水で乾いた涙の痕を洗い流す。
赤く腫らしたまぶたにはアイシャドウを、目の下のクマにはコンシーラーを重ねて。
未だにものを言いたげな唇には赤い口紅を引けば、おそらくいつもどおりの顔だ。
こうなったのも、昨夜メタルマンと言い争いになって負けたせいである。
いつもなら多少の嫌味は受け流すのに、その時にかぎってひどくイラついていた私は、売り言葉に買い言葉で言い返してしまった。
そのまま口喧嘩がエスカレートし、最後には泣かされてしまった。
体調が悪かったせいで涙もろく感情的になってた節もある。
恥ずかしくなってそのまま逃げだしてしまったけれど、うまく言葉が出なくなり、代わりに涙がボロボロと溢れてきたとき、メタルマンはギョッとしたように見てきた。
その顔が何度も脳裏に浮かぶ。
涙は女の武器とは言うけれど、あそこで泣いて逃げてしまったのは卑怯だったと感じている。
言い返せもしないで逃げた私を軽蔑しているだろう。
彼からの私の評価などきっと散々なもので今更なのだけれど、そう思うだけでなぜかひどく心の奥が冷たく重たくなるような感じがした。
※ ※ ※
「あんたが泣くとこも初めて見たけどさ、メタルマンのあんな顔も初めて見たぜ」
フラッシュマンが冷蔵庫で冷やしていたE缶を開けながら笑う。
「化け物でも見たような顔してたわね」
いつもどおり博士の朝食を作りながら相槌を打つ。
卵が焦げないように弱火で手早くフライパンの上でかき混ぜる。
「あの後の任務、ひどかったんだぜ?ミスりまくりでらしく無いったらありゃしねぇ」
「人の噂をしてる暇があるなら仕事しろ」
フラッシュマンの後ろから噂をすれば影とばかりに本人が現れた。
「おっと、スネークからマッピングデータもらわないとなんねぇんだったわ」
フラッシュマンがそそくさとキッチンから出ていった。
(いつもはキッチンなんて寄り付かないのに)
昨日の今日で気まずいので会いたくなかったのだが、来てしまっては仕方がない。
火を止めながら何をしに来たのかとメタルマンを盗み見る。
「昨日はその、言い過ぎた」
「え?」
「二度はいわん」
そのままメタルマンは踵を返して行ってしまった。
まさか謝りに来るとは。
てっきり昨日の喧嘩の続きをするのかとばかり思っていた。
「待って!」
思わず追いかけて廊下に飛び出たが、あの赤い機体はもうどこにも見えなかった。
涙は女の武器とはいえ、ここまで効果的だとは、とトーストの焼けるにおいの中でぼんやりと思った。
涙腺エンプティ
少しパサついたスクランブルエッグは塩味が効いていた。
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