第3話
夢小説設定
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(あとはこの部屋だけね)
目の前にあるドアの先はナンバーズの一人の自室らしいが、掃除する場所に含まれていた。
高度な情緒を持つナンバーズには個人的な場所を必要とする個体もおり、一体につき一部屋が自室として与えられている。
基本的には自室の掃除は自分ですることになっている。
失礼します、と一言断ってから入室すると、そこはよくあるような屋内プールだった。
(プール?まさかワイリーが泳ぐのかしら)
なぜか白黒ボーダーの大正スタイルの水着で浮き輪をしたじいさんを具体的に想像してしまった。
プールの水深はかなりあるようで、覗き込んでも底が見えない。プールサイドの緑色のスノコ状の床の上に温泉の素(入浴剤)の空袋が落ちている以外は目立ったゴミは無く、とりあえず今は掃除する必要はないように思えた。
「君、誰?」
突然の声に振り向くと、ゴーグルをかけたロボットが水面に顔を出している。
「私はナナシ、つい最近ここでハウスキーパーとして働き始めたの。よろしくね」
「ふ~ん」
さして興味もなさそうに返事をする。
「ところであなたは?」
「僕はバブルマン」
話すのも億劫だとでもいうかのように、気だるい調子で答える。
「水中用なの?」
「当たり前じゃん。そうでなけりゃ誰が好き好んでこんなところに独りでいると思うの?もう自己紹介は終わったよね、じゃあねバイバイ」
「ちょっと待ってよ」
再び水中に潜ろうとするバブルマンを引き止める。
「まだ何かあるの?僕も忙しいんだけど……何、この手?」
「握手」
バブルマンは怪訝な顔でナナシの手と顔を交互に見た後、手を伸ばした。
「うおあっ?!」
手を握られた瞬間プールの中に引きずり込まれた。
「ぷはあっ!な……何すんのよ!!」
必死で手足をバタつかせ、水飛沫を上げて水上に顔を出す。突然すぎて混乱しているナナシに、
「油断するからだよ」
と水面に浮かぶバブルマン。
「それにしても“うおあっ?!”って色気の無い悲鳴だよね」
わざわざ先ほどのナナシの悲鳴の録音を再生する。
顔を真っ赤にして抗議の声をあげるナナシを見て可笑しそうにプププ、と笑う。
完全に相手のペースに乗せられ、からかわれている。
ナナシは顔が火照っているのが自分でもわかったが、無視してプールサイドに上がった。
「あ~あ、びちょびちょ」
「そこのタオル使えば?」
山積みになって置いてあった真新しいタオルを一枚取って体に巻き付ける。
「またおいでよ、タオル返しにさ」
「プールに落とさないならね」
保証はしないよ、と言い残し、バブルマンは水中に消えた。