第3話
夢小説設定
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博士の書斎は台所の比では無かった。
インクの切れた文房具。数年前の紙の新聞。書き損じの設計図。恐らくはロボット関係の難しい専門書。脱ぎっぱなしの衣服。スナック菓子の袋やカップ麺の空き容器。
ありとあらゆる生活品と書類が無秩序に堆積していた。
(男やもめに蛆がわく、とはよく言ったものね。こんなに汚いとは思わなかった。ラボはきれいに片付いてたのに)
よく見るとネジやコードや見たことの無いような機械部品まで転がっていた。
捨てても良いものか自分では判断がつかないものは除けて置いておいた。
無造作に置かれた書類の一部を読んでみたが、どれも重要な内容のものでは無いか、機械の知識の無いナナシには理解できないものばかりであり、研究所やナナシ自身に関係するような資料はまったく無かった。
「ボクも手伝うよ!」
「ヒートくん!」
可愛らしく子供のような元気な声が響く。
ヒートマンと会うのは病室での邂逅以来だった。
どうやらナナシの病室に行こうとするたびに兄機達に止められていたらしい。
「あいつらひどいんだよ?ボクがナナシのとこいこうとすると、ニンゲンはシンヨウできない、とか、ニンゲンはこわれやすい、とかいうんだよ?ボク、ナナシのことシンヨウしてるし、だいじにするからこわさないもん!」
ヒートマンはクラッシュマンの物真似をしながら小さな口を尖らせる。
その様子は幼子のようでほほえましく、彼の体を覆う金属の箱が無ければ人間のようであった。
「ねぇねぇ、ナナシ、これもやしてもいい!?」
「お外でね」
大量に積まれた新聞紙や雑誌類を指さしてキラキラした目で聞いてくる。
ナンバーズは皆それぞれの特殊武器を持ち、彼の特殊武器はアトミックファイヤーという、最高一万二千度のプラズマ化した炎を放出できるものらしい。
たまに衝動的に何かを燃やしたくなるらしく、そのためウッドマンからは彼の管理する森への立ち入りを禁じられている。
「こっちは?!」
「それは燃えないゴミだからダメ」
「それは?!」
「あれは粗大ゴミかな」
「じゃあこれは?!」
「ジェミニマン?!!」
ゴミ袋の陰にジェミニマンが、正確に言えば瀕死のジェミニマンが白目を剥いて倒れていた。
「だ……大丈夫?!」
「ス……スネークマンに殺られました……」
ノイズ混じりの声でやっとそう言うと、ガクッと力無く息絶えた。
いや元から息してないけどね、ロボットだから。
博士に修理してもらってくると言って、ヒートマンはジェミニマンを引き摺って行った。
こんなことはヒートマン曰く、“いつものこと”らしい。
ジェミニマンがスネークマンに瀕死になるまでボコられるのがいつものことなのか、兄弟機同士で争うのがいつものことなのか、分からなかった。
※ ※ ※
「博士~、次のナンバーズの教育の件だけど……ってナナシ?」
「ナナシ?何で博士の書斎に?」
ノックも無く突然扉を開けて現れたのはタップマンとマグネットマンだった。
「この“魔窟”を掃除するの?!うわ~、頑張ってね……」
「俺達も手伝おう」
マグネットマンから思わぬ申し出があった。
2機とも仕事があるだろうと断ろうとした矢先、間髪入れずにタップマンが喋りだす。
「正気?!でもこれをナナシ一人にやらせるのも可哀想か……、よしっ!3人でやればすぐ終わるもんね!」
大きなゴミをどかしたり、いらない書類の束をまとめて縛るのはタップマンが、ナナシが捨てていいか判断が付かなかった山をマグネットマンが片付けていく。
「マグネット、それ今度のナンバーズの資料じゃん。捨てて良いわけ?」
「ありゃ……ま、いいだろ!もう纏めてしまったし!」
ナナシはこの二人に任せていいのか少し心配になってきた。
しかしながら、二人の尽力もあり床が見える程度には片付いてきた。
「まだいいかげんあるな……。他の奴らも呼ぶか。ジェミニマンとか暇だろ。どうせ一人で鏡見てるだろうよ」
「あ、ジャミニマンならさっき……」
スネークマンにボロボロにされてゴミの山に放置され、ヒートマンに連れられて修理に行ったことを伝える。
「またか……、スネークマンも何がそんなに気に入らないのか」
そう言ってため息をつくマグネットマン。マグネットマンはニードルマンと共にサードナンバーズのまとめ役を担っているらしい。
「スネークマンはジェミニマンに特にあたりが強いんだ」
「あたりが強いどころじゃないと思うんだけど~?ジェミニマンが蛇が苦手なのをいいことに一方的に痛めつけてさぁ~……」
「そのたびにニードルマンに怒られて同じ目に合わされてりゃ世話ないよな」
自分の兄弟機がそのような調子なのに、どこか他人事のように語るマグネットマンに、ニードルマンの苦労がしのばれる。
「マグネットマン、タップマン!いないと思ったら……こんなところで何をしている」
噂をすれば影が差すとばかりにニードルマンが仁王立ちしていた。
「いやぁ……ナナシの手伝いを……」
「お前たちは人の仕事を盗る前に自分の仕事をしろ!」
「だって大変そうだったから……人助けだよ!」
「悪の組織が人助けすんな!そんなに仕事がしたければさせてやる!」
ニードルマンにどつかれながらマグネットマン達は帰っていった。
結局その日はヒートマンは帰って来なかったが、マグネットマンやタップマンが手伝ってくれたお陰で思ったより早く片付いた。
自分のせいでニードルマンに叱られてしまったようなものだし、後でお礼を言いにいこうと思った。
インクの切れた文房具。数年前の紙の新聞。書き損じの設計図。恐らくはロボット関係の難しい専門書。脱ぎっぱなしの衣服。スナック菓子の袋やカップ麺の空き容器。
ありとあらゆる生活品と書類が無秩序に堆積していた。
(男やもめに蛆がわく、とはよく言ったものね。こんなに汚いとは思わなかった。ラボはきれいに片付いてたのに)
よく見るとネジやコードや見たことの無いような機械部品まで転がっていた。
捨てても良いものか自分では判断がつかないものは除けて置いておいた。
無造作に置かれた書類の一部を読んでみたが、どれも重要な内容のものでは無いか、機械の知識の無いナナシには理解できないものばかりであり、研究所やナナシ自身に関係するような資料はまったく無かった。
「ボクも手伝うよ!」
「ヒートくん!」
可愛らしく子供のような元気な声が響く。
ヒートマンと会うのは病室での邂逅以来だった。
どうやらナナシの病室に行こうとするたびに兄機達に止められていたらしい。
「あいつらひどいんだよ?ボクがナナシのとこいこうとすると、ニンゲンはシンヨウできない、とか、ニンゲンはこわれやすい、とかいうんだよ?ボク、ナナシのことシンヨウしてるし、だいじにするからこわさないもん!」
ヒートマンはクラッシュマンの物真似をしながら小さな口を尖らせる。
その様子は幼子のようでほほえましく、彼の体を覆う金属の箱が無ければ人間のようであった。
「ねぇねぇ、ナナシ、これもやしてもいい!?」
「お外でね」
大量に積まれた新聞紙や雑誌類を指さしてキラキラした目で聞いてくる。
ナンバーズは皆それぞれの特殊武器を持ち、彼の特殊武器はアトミックファイヤーという、最高一万二千度のプラズマ化した炎を放出できるものらしい。
たまに衝動的に何かを燃やしたくなるらしく、そのためウッドマンからは彼の管理する森への立ち入りを禁じられている。
「こっちは?!」
「それは燃えないゴミだからダメ」
「それは?!」
「あれは粗大ゴミかな」
「じゃあこれは?!」
「ジェミニマン?!!」
ゴミ袋の陰にジェミニマンが、正確に言えば瀕死のジェミニマンが白目を剥いて倒れていた。
「だ……大丈夫?!」
「ス……スネークマンに殺られました……」
ノイズ混じりの声でやっとそう言うと、ガクッと力無く息絶えた。
いや元から息してないけどね、ロボットだから。
博士に修理してもらってくると言って、ヒートマンはジェミニマンを引き摺って行った。
こんなことはヒートマン曰く、“いつものこと”らしい。
ジェミニマンがスネークマンに瀕死になるまでボコられるのがいつものことなのか、兄弟機同士で争うのがいつものことなのか、分からなかった。
※ ※ ※
「博士~、次のナンバーズの教育の件だけど……ってナナシ?」
「ナナシ?何で博士の書斎に?」
ノックも無く突然扉を開けて現れたのはタップマンとマグネットマンだった。
「この“魔窟”を掃除するの?!うわ~、頑張ってね……」
「俺達も手伝おう」
マグネットマンから思わぬ申し出があった。
2機とも仕事があるだろうと断ろうとした矢先、間髪入れずにタップマンが喋りだす。
「正気?!でもこれをナナシ一人にやらせるのも可哀想か……、よしっ!3人でやればすぐ終わるもんね!」
大きなゴミをどかしたり、いらない書類の束をまとめて縛るのはタップマンが、ナナシが捨てていいか判断が付かなかった山をマグネットマンが片付けていく。
「マグネット、それ今度のナンバーズの資料じゃん。捨てて良いわけ?」
「ありゃ……ま、いいだろ!もう纏めてしまったし!」
ナナシはこの二人に任せていいのか少し心配になってきた。
しかしながら、二人の尽力もあり床が見える程度には片付いてきた。
「まだいいかげんあるな……。他の奴らも呼ぶか。ジェミニマンとか暇だろ。どうせ一人で鏡見てるだろうよ」
「あ、ジャミニマンならさっき……」
スネークマンにボロボロにされてゴミの山に放置され、ヒートマンに連れられて修理に行ったことを伝える。
「またか……、スネークマンも何がそんなに気に入らないのか」
そう言ってため息をつくマグネットマン。マグネットマンはニードルマンと共にサードナンバーズのまとめ役を担っているらしい。
「スネークマンはジェミニマンに特にあたりが強いんだ」
「あたりが強いどころじゃないと思うんだけど~?ジェミニマンが蛇が苦手なのをいいことに一方的に痛めつけてさぁ~……」
「そのたびにニードルマンに怒られて同じ目に合わされてりゃ世話ないよな」
自分の兄弟機がそのような調子なのに、どこか他人事のように語るマグネットマンに、ニードルマンの苦労がしのばれる。
「マグネットマン、タップマン!いないと思ったら……こんなところで何をしている」
噂をすれば影が差すとばかりにニードルマンが仁王立ちしていた。
「いやぁ……ナナシの手伝いを……」
「お前たちは人の仕事を盗る前に自分の仕事をしろ!」
「だって大変そうだったから……人助けだよ!」
「悪の組織が人助けすんな!そんなに仕事がしたければさせてやる!」
ニードルマンにどつかれながらマグネットマン達は帰っていった。
結局その日はヒートマンは帰って来なかったが、マグネットマンやタップマンが手伝ってくれたお陰で思ったより早く片付いた。
自分のせいでニードルマンに叱られてしまったようなものだし、後でお礼を言いにいこうと思った。