第2話

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主人公



ウッドマンと別れ、中庭を後にしたナナシとシャドーマン。今はナンバーズの居住エリアを見てまわっている。
さきほど出会ったウッドマンはクラッシュマンやメタルマンの様に、こちらにあからさまな敵意を向けることは無く、むしろ好意的であった。
同じ人間に造られたロボットでも一体一体個性があり、性格も考え方もそれぞれ異なっているようだ。
DWNの全員が全員、自分が人間であるというだけで嫌ってくるのでは無いなら、ここでの生活もそう悪いものではないかもしれないとナナシは思った。


ナナシ、お主は面白いおなごでござるな。誰に対しても物怖じせず、同じ様に振る舞おうとする。例え相手が世界的指名手配犯や戦闘用ロボットであっても。あのメタル殿と握手した時には驚かせられた。彼奴は人間との馴れ合いは好まぬ故」

「そう?……ところでメタルマンってどんなロボットなの?」
「メタルマンは博士が初めて造られた戦闘用ヒューマノイドでござる。博士への忠誠心はナンバーズ随一で経験も豊富、しかもなかなかの切れ者でござる。それ故、ナンバーズをまとめる司令塔としての役割と権限を与えられておる。いわば長兄のような位置にあるのでござる」

「でも彼はDWN.009よね?」
「一から八は欠番でござる。博士はDRNを加えるお積もりだったらしい」
「DRN……?」

シャドーマンはDr.ワイリーの宿敵、ライト博士とそのロボット“ロックマン”について説明してくれた。
世界的ロボット工学の権威、ライト博士の造り上げた家庭用ロボット、ロック。
Dr.ワイリーに改造され暴走したライト製のロボット達を止めるべく、自ら志願して戦闘用ロボットに改造されたという。
過去四度の世界征服計画はことごとく彼一人によって潰されている。

「そのロックマンを倒すのが第一目標ってわけね」
「ああ。時にお主、ロックマンを知らぬとは、一体どんな生活をしておったのだ?」
「まぁ、いろいろとね……」

「……まあ良い。拙者も詮索するような事を言って悪かった」

お互いどこまで探ってもよいものか図りかねていた。
シャドーマンは自ら自分のことを語ろうとはしないし、ナナシもまた同じだった。
と言うより、語っても差し支えの無い過去がなかった。

しばらく続いた沈黙を破ったのは、

「あっ!シャドー!!」
「スパーク殿!」

現れたのはオレンジ色のコイルのようなボディに針のような腕のロボットだった。
そのスパークマンに連れられて入った部屋には、まだ会ったことの無いロボット6体がいた。

「サードナンバーズ全員集合だねー」
「おっ、彼女が噂のナナシちゃん?」

磁石を額につけた赤いロボットはマグネットマン。
メタルマン同様マスクを着けているが、目元と雰囲気から表情は分かりやすい。

「よろしくねー!ところでキミ、ダンス好き?」

日本の伝統的な玩具、独楽をモチーフとしたタップマンは陽気な笑顔とオーバーリアクションで迎えてくれた。

「ヒートマンやエアーマンからお前の話は聞いてるぞ」

エアーマンの様に頭部と腹部が合体した姿をしたニードルマン。
ヒートマン達が自分のことをどのように言っていたのか気になるところだ。

「初めまして、ナナシさん。以後お見知りおきを」

丁寧な物腰で挨拶をするのはジェミニマン。
身体中についている反射板がきらびやかだ。

「……よろしく」

ハードマンは寡黙で口数が少ないらしい。
挨拶した後ずっと黙ったままだったが、別に怒っているわけではないようだ。

「はじめまして、ナナシです。こちらこそよろしくね」





第二期ナンバーズとは打って変わり、歓迎ムードかと思いきや、独り輪から外れ、値踏みするようにこちらを見ている男がいた。

「ヒートマンやフラッシュ先輩だけじゃなく、あのメタルマンとも握手したって?……ケッ、正気の沙汰じゃネェよ」
「おい、スネーク」

蛇の被り物をした長身の男が毒を吐くのをマグネットマンがたしなめる。

「だって純・戦闘用だぜ?冷酷な殺人ロボットだぜ?メタルマンなんか感情あんだか分かんネェ面してるしよォ」
「悪口はその辺にしておけ。後が怖いぞ」


「普通の人間なら当然恐怖するところを、こいつは馬鹿みてェに笑顔でお手々繋いじゃってサ」
「止めろって」

「テメェもマトモな感情無いんじゃネェの?」
「スネークッ!!」

ニードルマンが恐ろしい形相で睨み付ける。
しかしスネークマンは人を小馬鹿にするように薄い唇を吊り上げ、説教はうんざりだとでも言いたげに、大げさに肩をすくめる。

去り行きさまに、

「お隣のシャドーマンも戦闘用だから気を付けな」
「止めろと言ってるだろ!!」

ニードルマンの怒声が収まる前にはもう爬虫類のような姿はなかった。

「……すまない、あいつ誰に対してもああなんだ。気にしないでくれ」
「あぁ、うん……。気にしてないわ」


「まったく、あの陰気な性格、なんとかして欲しいものですね」
「…………」

ジェミニマンが誰もいない戸口を睨み、ハードマンが無言で頷く。
どうやらスネークマンはナンバーズの中でもあまり好かれていないようだ。

「あの物言いに慣れればそこまで悪い奴では無いのだがな……」

困り顔のシャドーマンのフォローも虚しく響いた。





「俺達サードナンバーズのほとんどは、戦闘用に改造されてはいるが、元は工業用や作業用でな」

気まずい雰囲気の中、ニードルマンが話題を変える。

「拙者は戦闘と隠密の為だけに造られておる」
「オレもだよ、シャドー。オレだって高速バリアの試作機だぜ?」
「高速バリア?」
「そう!見てて!!」

そう言ってタップマンは部屋の中央に躍り出た。
腕を横に大きく広げ、ちょっと離れていてね、と笑うと、両腕に付いたブースターが火を吹いた。
加速していく回転に、空気がヒュンヒュンと音をたてる。

「どう?!スゴいでしょ、オレのタップスピン!!」

しかし急に回転速度が弱まり、軸がぶれ始め、派手に転んでしまった。

「ほらまた調子に乗るから~」

目を回しているタップマンにスパークマンが駆け寄る。

「お前のそれは未完成の試作品なんだから無茶するな」
「てへ、カッコ悪いとこ見せちゃったね」

舌を出して笑うタップマンに皆苦笑する。
もとの和気藹々とした空気が戻った。




「では某とナナシ嬢は基地の案内がある故、これにて御免」
「えぇ~、もう行っちゃうの?まだ歓迎のダンスも独楽も見せてないのに」
「あなたまだ回り足りないんですか……」

呆れ顔のジェミニマンがため息をつき、また笑い声が巻き起こる。
そんな陽気なナンバーズの声を背に、ナナシ達は部屋を後にした。



※ ※ ※



「……っと、大方はこんなもんでござるかな。あと一ヶ所で拙者の案内は終わりでござる」

中庭、居住区、自分の部屋、屋上、食料貯蔵庫など自身の生活と仕事に関係ありそうな場所だけをまわったにも関わらず、案内だけでかなりの時間がかかった。
広大な敷地に建てられているのであろうこの基地の廊下には同じドアが並び、どのドアが何の部屋か目印すらない。
シャドーマンからもらった基地内の見取り図が無ければ迷子になるのは確実である。
もっともこの見取り図も完全なものでは無く、立ち入り禁止の区画はほぼ白紙である。
一度迷ったらもとの場所に戻るのは難しいだろう。

「ありがとう、シャドーマン。あなたにも仕事があったんじゃないの?」
「いや、拙者は隠密機動用故、任務以外の仕事はほとんどござらん」

隠密用ロボットか。
ここのロボット達はそれぞれの能力で役割を分担しているようだ。
シャドーマンは気配を消して影の中から諜報活動するのだろう。
忍者なのはワイリーの趣味か。





「ここで最後でござる」

そう言われて連れてこられたのは厨房であった。


汚い。


調理をする場所として、ありえない汚さだった。
まともに料理も作ってないのだろう。
大量のカップ麺の容器がゴミ袋に詰められ山になっている。
隅には埃がたまり、壁には変な染みまでできていた。
思わず目を逸らしたくなるような有り様だ。

「お主の仕事のうちに博士の食事の支度も含まれるが……」
「まずは掃除ってわけね」
「……面目無い」

シャドーマンが気まずそうに目を伏せる。

「あなたのせいじゃないでしょ?それに掃除も私の仕事に含まれているわ」

それでもこの部屋をまともに料理のできる衛生的な状態にするには一人では骨が折れるだろう。
食事の支度も含め、一日で終わるだろうか?

「とりあえず料理は明日の夜からで良いとのことだ」
「了解、博士と私の分だけでいいのよね?」

頷くシャドーマンの横で調理場の惨状を見渡す。
この基地に住む人間は博士だけで、家事をしてくれるような人がいなかった。
研究に没頭するあまり身の回りのことがおろそかになり、一流のレストランにも匹敵する厨房は巨大なゴミ箱と化した。
良い設備なのに誰も使わずに埃にまみれて眠っている部屋は他にもありそうだ。

「ところで、あなた達ロボットは何を食べるの?」
「エネルギー摂取は専らエネルギーパックや回復エネルギーに頼っておる。人間の食べ物も口にすることは出来るが、エネルギー変換率の低い嗜好品といったところでござるな。……経済難で食べるのは禁じられておるがな」
「そ、そうなんだ……」

大丈夫かこの基地。世界征服を企む悪の組織が経済難なんて、世知辛くて泣けてくる。



※ ※ ※



「はぁ…」

ナナシは与えられた自室のベッドに身を投げ出し、ため息をついた。

(正直疲れた…)

明日は片付けきれなかった部屋の掃除をしよう。
朝から働けば、日が沈むまでには終わるだろう。
料理も作らねばならないが、博士の分だけで良いのが救いだった。
ナンバーズ全員だったら、大変なことになっていただろう。
まともな食事をしている様子は無いし、食材は買いに行かねばならないだろう。
近くに食料品の手に入る街や店はあるのだろうか。
この基地がどこの国のどんな場所にあるのかすらよく分かっていない。
逃げてきた研究所からそう遠く離れた場所ではないようだが、自室の窓から見える景色は鬱蒼とした森と煌めく星空ばかりで、人間の生活圏からは離れているように思える。

それにしても、よく何処の誰とも知れぬ私に料理をさせる気になったものだ……いや、もう素性は知った上でここに置いているのか。
いったい何がロボット学者の興味を引いたのかは知ったことでは無いが、私が何処の誰で何をしていた人間なのかは気になる。

家族はいたのか?
恋人は?
仕事は何を?
学校は?
出身地はどこか?
住んでいた場所は?
生年月日は?

私はいったい、何者なのか?

夜空に浮かぶ月は何も答えず、微睡むナナシを窓越しに照らすだけである。




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