構ってちゃん
「いやはや、今年の夏も暑いね」
「……マツバさんが離れてくれれば少しは涼しくなりますよ」
「それは嫌だ」
クーラーをガンガン効かせている部屋の中で、マツバさんは私を後ろから抱き締めながら座り込んでいる。つまり今の私はマツバさんの膝の上に座っている体制となっているのだが、流石に密着していると幾らクーラーを作動させているとはいえ、暑い。マツバさんはこの体制が好きなのか、私を膝の上によく乗せたがるけど、冬ならともかく夏は勘弁して貰いたいものだ。
「ねー、かまってよ~」
「ちょっと待ってください、今良いとこなので」
私の好きなイッシュ地方のモデルさんがSNSを更新していたので、それをゆっくりと眺めていると頭上からマツバさんの声が耳に届いた。マツバさんの相手もしてあげたいけど、でも今は推しモデルさんの更新を楽しみたいので、とりあえず私はマツバさんを後回しにしておくことに。
「このコーデも可愛いな……」
「君だって可愛いよ」
「あ、この小物持ってるんだ。小物かぁ、お揃いの買っちゃおうかな……」
「それ買いに行くなら今度のデートする時に、僕とも何かお揃いのもの買おうよ~」
「いいなぁ、イッシュ地方。また長期休暇が取れたら行きたいな」
「イッシュも良いけどジョウトだって良い所だよ?あ、今度イッシュに旅行に行くなら僕も一緒に行くから」
「……マツバさん、独り言に返事をしなくても良いんですよ?」
「だって君の言葉は全部拾いたいんだもん。それよりもSNSばっかり見てないで僕にかまってよ」
「マツバさんに構うとそればっかりになって余所見が出来ないじゃないですか」
「だって僕だけを見て欲しいからさ、仕方がないよね」
「開き直らないで下さい。もう少ししたら構ってあげますから……ちょっとだけ時間を下さい」
「……ちょっとだけだよ?」
マツバさんは少し不満げにしながらも、とりあえず黙り込んだ。やっと静かになったと思いながら私はSNSの閲覧に集中していく。推しモデルさんの更新を見ながら目の保養に励んでいると、私のお腹の辺りに置かれていたマツバさんの手が動き始めた。
「……ちょっと、何してるんですか?マツバさん」
「いや、そろそろかまってくれても良い頃合いかなと思って」
「だからと言って私の服のボタンを外していくのは何故ですか?やめてくださいよ」
「だって、君が僕じゃなくて僕の知らない女の子達に夢中なんだもん」
「……夢中って、相手は女の子ですよ?しかも私と面識もない方々ですし……」
「それでも面白くないよ、僕は」
マツバさんは若干拗ねたように言いながら、私の服を脱がす手を止めようとしてくれない。
「ちょっとマツバさん、それ以上は止めてください」
「……君は僕の事なんて気にせず好きな事をしていれば良いじゃないか?僕もそうするだけだよ」
……これは、どうやら完璧に拗ねてしまったようだ。
こうなったマツバさんは中々機嫌を直してはくれないので、些か面倒なのだ。頭の中でさてどうしたものかなと考えつつも、とりあえずは私のブラウスを脱がそうとする彼の手を止める事に専念する事にしてみた。とは言え、もう既に半分くらい脱がされているのでこの行為は無意味なものかも知れないが……。
「……何?今せっかく良い所なんだから邪魔しないでよ」
「良い所って……まだ真昼間ですよ、マツバさん」
「別に僕が何をしようが君には関係ないだろ?」
「大ありですよ。私、脱がされているんですが?」
「僕の手元にたまたまボタンが合ったからそれを弄ってるだけだよ」
どこかつっけんどんな態度のマツバさんは、まだご機嫌ナナメな模様だった。
……マツバさんは中々に嫉妬心が強いお方でもある。それは恋人同士になってから知った事であったが、その対象がまさか会った事もない同性にまで及ぶとは……流石の自分でも思わなかった。もうこうなると生きとし生ける物の全てがマツバさんの嫉妬の対象なんじゃないかと思ってしまうが、それは大丈夫……だと思いたい。
「わー、僕と会う時にこんなやらしー下着着てるなんて……君も期待してたの?」
「ちょっと、マツバさん。見ないで下さい」
「この柄……僕が見た事無いやつだけど、もしかして新しいの?」
「そうですよ……って、だから見ないでくださいったら」
マツバさんは先程とは打って変わって何処か上機嫌な様子になったものの、視線の先は私の下着な訳で。恋人同士とはいえじっくりと見つめられるのは恥ずかしい。とりあえず見えないように手で胸元を覆い隠す。だが、マツバさんは余裕そうにこんな事を口にするのであった。
「隠しても無駄だよ。千里眼でお見通しだから」
「……こんな破廉恥な事に神聖な千里眼を使わないで下さい」
「君の全てをこの目に焼き付けておきたいと思うのは美しい愛の証だよ。それに僕の為に新調してくれたんでしょ?」
「……違いますよ、好きなモデルさんがデザインしたから買ったんです」
……私の言葉は半分は本当で半分は嘘だ。確かにマツバさんに可愛いって思って貰いたい一面もあるけど、この下着が好きなモデルさんのデザインなのも本当なのだ。だけど、それをそのまま言うのは何だか癪なので黙っておくことにした。
「……へぇ、君に良く似合うデザインだけど、それを聞いたら何だか面白くないな」
「あ!こら、マツバさん!ホック外そうとしないで下さい!」
マツバさんが本格的に脱がしに掛かってきたので、慌てて止めようと私はじたばたするも、彼はそんなの意に介さず余裕の表情を浮かべている。
「さっきまでスルーされてた分、今から思う存分僕に構ってもらう事にしたから」
「ちょ、ちょっと!変なとこ触らないでください!マツバさんのえっち!」
「何とでも言えば良いよ。全ては僕に構わない君が悪いんだから」
「か、構ってたじゃないですか!そんなまるで無視してたみたいに人聞きの悪い事を言わないで下さい!」
「だって全然……足りないんだもん。僕と居る時は僕に時間を費やしてよ」
「……もう!マツバさんたら欲張り屋さんなんですから……!」
惚れた弱みも合ってこうなったマツバさんはもう止められない。結局この身は彼のされるがままなのだ。
太陽が昇っているにも、関わらず。
私は今日もマツバさんの飽くなき欲求に翻弄されていくのであった。
「……マツバさんが離れてくれれば少しは涼しくなりますよ」
「それは嫌だ」
クーラーをガンガン効かせている部屋の中で、マツバさんは私を後ろから抱き締めながら座り込んでいる。つまり今の私はマツバさんの膝の上に座っている体制となっているのだが、流石に密着していると幾らクーラーを作動させているとはいえ、暑い。マツバさんはこの体制が好きなのか、私を膝の上によく乗せたがるけど、冬ならともかく夏は勘弁して貰いたいものだ。
「ねー、かまってよ~」
「ちょっと待ってください、今良いとこなので」
私の好きなイッシュ地方のモデルさんがSNSを更新していたので、それをゆっくりと眺めていると頭上からマツバさんの声が耳に届いた。マツバさんの相手もしてあげたいけど、でも今は推しモデルさんの更新を楽しみたいので、とりあえず私はマツバさんを後回しにしておくことに。
「このコーデも可愛いな……」
「君だって可愛いよ」
「あ、この小物持ってるんだ。小物かぁ、お揃いの買っちゃおうかな……」
「それ買いに行くなら今度のデートする時に、僕とも何かお揃いのもの買おうよ~」
「いいなぁ、イッシュ地方。また長期休暇が取れたら行きたいな」
「イッシュも良いけどジョウトだって良い所だよ?あ、今度イッシュに旅行に行くなら僕も一緒に行くから」
「……マツバさん、独り言に返事をしなくても良いんですよ?」
「だって君の言葉は全部拾いたいんだもん。それよりもSNSばっかり見てないで僕にかまってよ」
「マツバさんに構うとそればっかりになって余所見が出来ないじゃないですか」
「だって僕だけを見て欲しいからさ、仕方がないよね」
「開き直らないで下さい。もう少ししたら構ってあげますから……ちょっとだけ時間を下さい」
「……ちょっとだけだよ?」
マツバさんは少し不満げにしながらも、とりあえず黙り込んだ。やっと静かになったと思いながら私はSNSの閲覧に集中していく。推しモデルさんの更新を見ながら目の保養に励んでいると、私のお腹の辺りに置かれていたマツバさんの手が動き始めた。
「……ちょっと、何してるんですか?マツバさん」
「いや、そろそろかまってくれても良い頃合いかなと思って」
「だからと言って私の服のボタンを外していくのは何故ですか?やめてくださいよ」
「だって、君が僕じゃなくて僕の知らない女の子達に夢中なんだもん」
「……夢中って、相手は女の子ですよ?しかも私と面識もない方々ですし……」
「それでも面白くないよ、僕は」
マツバさんは若干拗ねたように言いながら、私の服を脱がす手を止めようとしてくれない。
「ちょっとマツバさん、それ以上は止めてください」
「……君は僕の事なんて気にせず好きな事をしていれば良いじゃないか?僕もそうするだけだよ」
……これは、どうやら完璧に拗ねてしまったようだ。
こうなったマツバさんは中々機嫌を直してはくれないので、些か面倒なのだ。頭の中でさてどうしたものかなと考えつつも、とりあえずは私のブラウスを脱がそうとする彼の手を止める事に専念する事にしてみた。とは言え、もう既に半分くらい脱がされているのでこの行為は無意味なものかも知れないが……。
「……何?今せっかく良い所なんだから邪魔しないでよ」
「良い所って……まだ真昼間ですよ、マツバさん」
「別に僕が何をしようが君には関係ないだろ?」
「大ありですよ。私、脱がされているんですが?」
「僕の手元にたまたまボタンが合ったからそれを弄ってるだけだよ」
どこかつっけんどんな態度のマツバさんは、まだご機嫌ナナメな模様だった。
……マツバさんは中々に嫉妬心が強いお方でもある。それは恋人同士になってから知った事であったが、その対象がまさか会った事もない同性にまで及ぶとは……流石の自分でも思わなかった。もうこうなると生きとし生ける物の全てがマツバさんの嫉妬の対象なんじゃないかと思ってしまうが、それは大丈夫……だと思いたい。
「わー、僕と会う時にこんなやらしー下着着てるなんて……君も期待してたの?」
「ちょっと、マツバさん。見ないで下さい」
「この柄……僕が見た事無いやつだけど、もしかして新しいの?」
「そうですよ……って、だから見ないでくださいったら」
マツバさんは先程とは打って変わって何処か上機嫌な様子になったものの、視線の先は私の下着な訳で。恋人同士とはいえじっくりと見つめられるのは恥ずかしい。とりあえず見えないように手で胸元を覆い隠す。だが、マツバさんは余裕そうにこんな事を口にするのであった。
「隠しても無駄だよ。千里眼でお見通しだから」
「……こんな破廉恥な事に神聖な千里眼を使わないで下さい」
「君の全てをこの目に焼き付けておきたいと思うのは美しい愛の証だよ。それに僕の為に新調してくれたんでしょ?」
「……違いますよ、好きなモデルさんがデザインしたから買ったんです」
……私の言葉は半分は本当で半分は嘘だ。確かにマツバさんに可愛いって思って貰いたい一面もあるけど、この下着が好きなモデルさんのデザインなのも本当なのだ。だけど、それをそのまま言うのは何だか癪なので黙っておくことにした。
「……へぇ、君に良く似合うデザインだけど、それを聞いたら何だか面白くないな」
「あ!こら、マツバさん!ホック外そうとしないで下さい!」
マツバさんが本格的に脱がしに掛かってきたので、慌てて止めようと私はじたばたするも、彼はそんなの意に介さず余裕の表情を浮かべている。
「さっきまでスルーされてた分、今から思う存分僕に構ってもらう事にしたから」
「ちょ、ちょっと!変なとこ触らないでください!マツバさんのえっち!」
「何とでも言えば良いよ。全ては僕に構わない君が悪いんだから」
「か、構ってたじゃないですか!そんなまるで無視してたみたいに人聞きの悪い事を言わないで下さい!」
「だって全然……足りないんだもん。僕と居る時は僕に時間を費やしてよ」
「……もう!マツバさんたら欲張り屋さんなんですから……!」
惚れた弱みも合ってこうなったマツバさんはもう止められない。結局この身は彼のされるがままなのだ。
太陽が昇っているにも、関わらず。
私は今日もマツバさんの飽くなき欲求に翻弄されていくのであった。
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