6月

「一年前って、どんなだったかしら?」
 シラスが読んでいる新聞を見て、リゼットはふと思った。
「国は特に変わってませんし……わたくしも、勉強して、遊んで、シラス君が傍にいてくれるのも変わってないのですわ」
 敢えて違いを言えば、シラスの正体を全く気にしていなかったことくらいだろうか。
「──大きな変化はなくても、リゼット様はこの一年でずいぶん成長されてますよ」
 背が伸びて少し大人っぽくなった。知識が増え、思慮深さが身についてきた。まだまだお転婆ではあるが、淑女らしい振る舞いができるようになった。 
「一年後は、更に成長なさっているのでしょうね」
 シラスの期待が込められた言葉に、リゼットは少し恥ずかしそうに返した。
「……努力しますわ」
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