6月

「第二の図書室ですわね」
 シラスの部屋の本棚を眺めながら、リゼットが言った。
 聖なる書物に神学論、兵法に戦術論、君主論、天体や毒薬の学術書から魔術書、世界の神話に英雄譚……。この城には学術機関に負けないくらいの蔵書の立派な図書室があるが、シラスの部屋もなかなかのものだ。
「あ、この本懐かしい」
 シラスに許可をもらったリゼットは、綺麗な装丁の絵本を手に取りソファに座った。
「童話も好きだったけど、このお話が好きなのですわ」
 リゼットが幼い頃に何度もシラスに読み聞かせてもらった、星座の物語だ。
「僕も好きですよ」
 紅茶を淹れてきたシラスが、リゼットの隣に座る。
「うふふ、一緒に読みましょう」
 ふたりがよくバルコニーで星空を見上げているのは、この絵本が影響しているのかもしれない。
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