6月

 城から続く森の道を抜けると、建物と石畳が見えてきた。
「久しぶりの街なのですわ」
 簡素なタブリエドレス姿の王太女リゼットは、楽しそうに景色を眺める。広場は屋台や大道芸で賑わっていた。
「建国祭が近いので人も増えています。迷子にならないでくださいね」
 いつもより軽装の騎士団長シラスが言った。休暇中だが、リゼットが暇そうにしていたので、国王夫妻の許可をもらって街に連れて来たのだ。
「わかりましたわ」
 カフェやブティックのある通りは、昼前なのもあり人が多い。宮廷なら周囲が避けてくれるが、街はそうはいかない。
「……御手を」
 シラスが手を繋ぐと、リゼットは嬉しそうに微笑む。
「ありがとう。ところで何処へ行きますの?」
「そうですね、リゼット様が行ったことのない処へ行くのはどうでしょう」
11/25ページ
スキ