6月

 幼い頃は、年相応になったら父のように海軍に入り、いずれは王太子を支える。
 やりたいこと、というより王弟の息子として生まれた運命だと思っていた。それも、権力争いで叶わぬことになったが。
「このまま従騎士になるか、他の道を選ぶか。お前のやりたいことをするといい」
「やりたいこと……」
 母の祖国に亡命した僕は、国王陛下の計らいで騎士見習いということになっていた。小姓から従騎士になる年齢らしい。
「──僕、私は王太女殿下をお守りしたいです」
 騎士の道を進めば、僕に生きる目的を与えてくれた王太女殿下を守ることに繋がるだろう。
「それなら、護衛騎士を目指すことだな」
「王立騎士団の精鋭中の精鋭……シラス様なら大丈夫でしょう」
 僕のそっと声に出した希望に、国王陛下と騎士団長は笑顔で応えてくれた。
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