6月

 彗星が近づいている。
「太陽に近づくと尾ができるのよね。見られるかしら?」
 巨大な天球儀を眺めるリゼット。
「半世紀も前なら、凶兆だ世界の終わりだと騒ぎになっていたのでしょうね」
 シラスが言った。
 学術の進歩で、彗星に災いがないことは解明されている。この星に衝突するというのなら別だが。
「世界の終わり……ね」
 リゼットはシラスの傍に寄り、手を握る。
「リゼット様?」
「最期は一緒に、というのが理想だけれど、いつ終わるかわからないもの。離れていてもお互いの存在が感じられるくらい、思い出が溢れるくらい……できるだけ傍にいるのですわ」
 シラスは、愛しい小さな手を優しく握り返した。
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