6月

 ある日の昼下がり、城内の一角に作られた小集落にある水車小屋を訪れたリゼットとシラス。
 二階に上がると、簡素な机と棚に寝台が置かれただけの狭い部屋があった。部屋に入ったリゼットは、窓から外を眺める。
「うふふ、昔の貴族が田舎暮らしに憧れたのもわかる気がしますわ」
 長身のシラスは、頭をぶつけないようにしながら窓に寄った。
「……そうですね」
 小川のせせらぎ、風邪にそよぐ木の葉の音。穏やかな時間が流れてゆく。
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