6月

「あの方たちは、嘘で塗り固めた化粧をして、虚飾のドレスを纏っているのですわ」
 自室のソファに座った王太女は、ぽつりと毒を吐いた。おべっか使いの貴婦人たちの相手に疲れたのだろう。
「手厳しいお言葉。ですが、仰る通りですね」
 騎士団長が言った。
「宮廷で正直に生きていくのは難しいことです」
「ねぇ、シラス君……わたくしも、嘘が増えてゆくのかしら?」
 お気に入りの熊のぬいぐるみを抱え、リゼットは呟く。
「リゼット様」
 シラスは背後から優しく頭を撫でる。
「時には嘘も必要になるでしょう。でも、僕の前でだけは……」
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