5月

 この命と引き換えに、新たな国と女王を守った。修道騎士であったこの魂は、復活の日までは天の園、または黄泉に旅立つ。
 そう思っていたのだが、ある少年の中で覚醒したのだ。偶然なのか因果なのか、昔と同じシルワノという名前に公爵の称号で似たような境遇、容姿もほぼ同じだ。
 生まれかわりというものらしいが、この身体の持ち主──今はシラスと呼ばれる者の人生だと、昔の記憶は眠らせてきた。それでも、やがて自分が守った国で、王太女を守る為に騎士団長になるという同じ道を辿った。
「シラス君、来月の静養の旅は一緒に行けそう?」
 このリゼットと呼ばれる愛くるしい王太女も、女王エリサベトの生まれかわりらしい。女王と静養地を訪れた懐かしい記憶が蘇る。
「僕はリゼット様の護衛騎士ですから、どこまでもお供いたしますよ」
「うふふ、楽しみなのですわ」
 シラスの返事に、リゼットは花が綻ぶような笑顔を見せた。
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