3月

 花の棘が刺さった。怖い夢を見た。
 大切にしていた物が壊れてしまった。
 大好きな騎士が悪く言われた。
 小さな王太女は、優しい性格ゆえに泣くことも多かった。
 いつからだろうか。その瞳は潤むことはあっても、涙を零すことは少なくなった。
「……強くなられましたね」
 成長を頼もしく思う反面、少し寂しい気もする騎士団長だった。
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