5月

 この国の宗教では、信者は死ぬと主のみもと、つまり天国に上げられる。終わりの日に復活し、新しい天と地に永遠に住むのだという。不信者はまず黄泉に行く。終わりの日に復活し、裁きの後に燃える火の池、地獄に投げ込まれ永遠の住まいとなるそうだ。
「……神様と和解してるなら、死後も復活後も皆と一緒にいられるのかしら?」
 聖なる書物を閉じたリゼットが言った。
「僕は地獄行きかもしれませんよ」
 修道院にいたシラスは信心深い。しかし、騎士として守る為に命を殺めた罪は赦されるのか。それこそ神のみぞ知るだが。
「……シラス君が地獄なら、天国に行ける人がいないと思いますわ」
 リゼットは自分の両手を、シラスの右手に重ねる。
「天国でも地獄でも、永遠に一緒なのですわ」
 約束ね、とリゼットは天使のような笑顔を見せた。
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