5月

 雨が上がり、久しぶりの星空にリゼットはバルコニーに出た。隣の部屋は灯りがついている。
「月が綺麗なのですわ」
 リゼットは窓から顔を覗かせ、まだ起きていたシラスに言った。彼もバルコニーに出てきた。
「……リゼット様と見るから綺麗なのでしょうね」
 月を眺めていたシラスが、ぽつりと言った。
「あら、何だか意味深長なのですわ」
「ふふ、どうでしょう」
 白く輝く満月の光が、微笑むシラスを照らしている。
 もう少しこの時間が続きますように、とリゼットは月に願った。
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