5月

「この運命からは逃れられないのですわ」
 リゼットが呟いた。
 王太女として生まれたからには、いずれこの国の母となることがさだめられている。聡明で慈愛に満ちた彼女もまだ十二歳。将来を憂うこともあるだろう。
「僕が傍でお守りします」
 シラスはいつものように、リゼットの頭を撫でる。
 今は騎士団長として、いずれは王配として、リゼットを守り支えることがシラスの運命だ。
「え、お茶会も一緒にいてくれるの?」 
 将来ではなく、公爵夫人のお茶会に招かれているのが憂鬱なだけだったらしい。
 貴婦人の集まりに、騎士団長がいるのは場違いだろう。 
「……お部屋の外で見守ってます」
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