5月

「ねぇ、シラス君。恋ってどんな味がするのかしら?」
「味、ですか」
 リゼットの一言に、紅茶を淹れる準備をしていたシラスが手を止める。何かの恋物語を読んでいたのは知っているが、思うところがあったのだろうか。
「このお砂糖のように甘いのかしら」
「……あ」
 何かを思い出したように、シラスは棚から小さな陶器の入れ物を出した。蓋を開けると、小さな宝石のようなお菓子が入っている。
「綺麗ね。ボンボン?」
「ええ。中は液体なので気をつけて」
 シラスはボンボンをひとつ取ると、優しくリゼットの口内に入れた。
 リゼットがそっと砂糖の殻を噛むと、果実と微かにお酒の味が溢れる。
 甘くてほろ苦い、ちょっと大人の味がした。
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