5月

 広間をくるくると舞うリゼット。
 躓きそうになったが、すぐにシラスの手が腰に回され支えられる。
「ありがとう」
「……ヒールが高すぎるのでは?」
 いつもより近い目線に、シラスは気づいていた。
「さすが、シラス君」
 舞踏の練習を終えたリゼットは靴を脱いだ。シラスが思った以上にヒールの高い靴。
「お御足を痛めてしまいますよ」
「シラス君と少しは釣り合えるかと思ったけど、まだまだですわね」
 最近、リゼットはシラスとの身長や年齢の差を気にしているようだ。
「そんなに急いで大人にならなくていいのですよ」 
 リゼットと目線を合わせたシラスが優しく言う。
 知識や思想はもう大人以上だ。今は愛らしさが勝っている姿も、あと数年で眩い美しさへと変わるだろう。
「……僕の余裕がなくなってしまいますから、ゆっくり成長なさってください」
「え、ええ。シラス君の余裕……?」
 リゼットは、よくわからないが焦らなくていいのだと理解した。
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