3月

 騎士団長シラスが自室で本を読んでいたら、バルコニーから小さな物音が聞こえた。そっと窓を開け覗いてみると、隣の部屋の主が真夜中の空を見上げている。
「お風邪を召されてしまいますよ」
 シラスは、王太女リゼットの華奢な肩にブランケットを掛けた。
「ありがとう。流れ星が見られないかなと思って」
「……ああ、星座の流星群があるとか」
 昼間、学者たちが集まって話していたのを思い出した。
「お願い事を叶えてくれるかしら? シラス君も一緒に見ましょう」
 楽しそうに話すリゼットの、菫青石のような大きな瞳には星が溢れていた。
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