5月

「花言葉は“初恋”なのですわ」
 中庭に咲いた紫色のリラを見て、リゼットが言った。
「ねぇ、シラス君の……」
「わかりません」
 リゼットが訊ねる前に、シラスは即答した。
「ちょっ、まだ言ってなくてよ」
「初恋はいつ、ではないのですか?」
「その通りですわ。というか、わからないってどういうこと?」
 一回り年下の少女を愛しく大切に思う。この気持ちを恋と呼んでいいものか、シラスにはわからなかった。
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