5月

「月が大きくて明るいのですわ」
 満月の光が、バルコニーにいるリゼットとシラスを照らす。
「本当ですね。灯りが要らないくらいだ」
 リゼットはふと不安になった。
「綺麗だけど……月が落ちてくることはないわよね?」
 そんな想像をしてしまうくらい、大きく見える。
「この星に最も近づいているのでしょう。また離れていきますよ」
 月の軌道は太陽や地球の重力を受け刻々と変化するものだと、シラスは簡単に説明した。
「よかったのですわ。明日世界が終わるなんてなったら……シラス君はどうする?」
 安心したリゼットの物騒な質問に、シラスはしばらく考える。
「……そうですね、皆に感謝を伝えて、いつも通りリゼット様のお傍に」 
「うふふ、シラス君らしい」
「リゼット様は?」
「わたくしもいつも通り過ごして、シラス君に抱きしめてもらいながら眠るのですわ」
 それならきっと怖くないわ、とリゼットは無邪気に笑った。
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