5月

「運命の出逢いってあるのかしら?」
 中庭を歩くリゼットが、いつものように問いかけた。
「……あると思いますよ」
 少し考えたシラスが応えた。珍しく早い結論に、リゼットは大きな目をさらに大きく見開く。
「例えば?」
「そうですね……何の希望もなかった少年が、ある赤子と出逢って未来を与えられることもあります」
 赤子だった王太女と出逢い、彼女を守ることに生きる意味を見つけた少年。やがて彼は騎士団長となった。
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