5月

 礼拝堂の扉を開けると、シラスが十字架に向かって祈るように立っていた。
 神聖な空間に美しい騎士団長。剣を振るう大天使はきっとこんな姿なのですわ、とリゼットはシラスの後ろ姿を眺める。
 気配に気づいていたのだろう。振り返ったシラスは、リゼットを見て眩しそうに目を細めた。
「……天使が降りてきたのかと思いました」
 光が天窓のステンドグラスを透し、礼拝堂を色鮮やかに染める。リゼットの頬も赤く染まっていた。
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