4月

「神様からしたら、わたくしたち人間の一生なんて極めて短いものなのですわ」
 ペンの羽根を弄りながら、リゼットが言った。
 これは勉強に飽きてきたな、と見張っていたシラスは気づいた。
「そうですね……人の生の何十年何百年も、神にとっては瞬きするようなものなのでしょう」
 ただの愚痴なら集中しろと再開させるのだが、この少女はなかなか哲学的だったり興味深いことを言うから、つい話に付き合ってしまう。
「ねぇ。一年が早く感じるのに、何でこの一時間がこんなにも長く感じるのかしら?」
 シラスは壁時計を見る。
「苦痛に思う時間ほど長く感じますからね。あと十五分残ってます」
「はぁ〜……壮大ながらも儚い歴史を振り返りますわ」
 何とか大陸史の分厚い本に向かったリゼットに、紅茶と菓子を用意しておこうとシラスは部屋を後にした。
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