4月

 両親は海の底に消え、この右目は何も見えない。
 自分の存在も隠さなければならない。
 城を出て、爵位を捨て、僕の世界は色を失った──かと思えたが。
「緑が鮮やかになりましたわね。シラス君のお目々の色みたい」
 菫に青灰と色を変える大きな瞳が、僕を見上げた。
 無色だった世界が彩られていく。
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