4月

 結ばれた。けれど、幸せな時は短くて、想いを伝えきれないまま、あの人は亡くなった。
「──……ト様、リゼット様」
 自分の名を呼ぶ声に、目を開ける。
「シルワノ……シラス君?」
 春の陽射しに、ソファでそのまま眠ってしまっていたようだ。それより、何故シラスはそんな心配そうな顔をしているのか。
「怖い夢でも?」
 シラスの指先がリゼットの頬に触れ、涙を拭う。
「……あら、わたくし泣いてたのね」
 たまに見る女王と騎士の夢。この涙は、騎士を愛した女王の想いなのだとリゼットは思った。
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