4月

 地平線に沈む夕日は、全てのものを赤く染めていくようだ。
「シラス君!」
 馬から飛び降りた王太女は、騎士団長のもとに駆け寄る。処々を血に染めたシラスと聖剣。辺りには斬り伏せた魔獣が転がっていた。
「リゼット様、何故」
 来たのかとシラスが問う前に、血で汚れた身体に触れられた。貴婦人なら卒倒してそうな状況だが、この王太女は怯むことがない。
「大丈夫そうね……怪我は?」
「ご心配なく。全て返り血です」
 安心させようとリゼットに触れかけて、シラスは手を止めた。綺麗なリゼットを汚してしまう。
「……えいっ」
 リゼットはシラスに抱きついた。
「汚れることなど構わないのですわ」
 笑うリゼットを、シラスは優しく抱き返した。
「もうすぐ日が沈みますわ。早く帰って休みましょう」
 
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