4月
「エリサベトだ。愛称はリゼット」
国王陛下に呼ばれ初めて対面したのは、もうすぐ一歳になられる王太女殿下。
王妃殿下の腕の中で安らかに眠っていると思ったら、ぱっちりと目を開けた。菫青石のような色合いの大きな無垢な瞳が、僕を見つめる。
「お、リゼット。シルワノを連れてきたぞ」
顔の半分が包帯で隠れた僕の姿に、赤子は怯えて泣いてしまうのではないか、と緊張したのは一瞬だった。
「あーい」
花が咲いたような笑顔。
僕に向けて両手を伸ばしてくる。戸惑いながら右手の人差し指を出すと、思った以上の力で握り返された。
「あらあら、シルワノが気に入ったのね」
王妃殿下が言われたように不思議と懐かれ、あれから十二年が経つ。
森を散歩中にふと視線が合い、僕はリゼット様の目を見つめる。
出会った時から変わらない無垢で美しい瞳。やや鋭さを見せるようにはなったが。
「シラス君、どうかしましたの?」
「いえ」
花が咲くように笑うところも変わっていない。
国王陛下に呼ばれ初めて対面したのは、もうすぐ一歳になられる王太女殿下。
王妃殿下の腕の中で安らかに眠っていると思ったら、ぱっちりと目を開けた。菫青石のような色合いの大きな無垢な瞳が、僕を見つめる。
「お、リゼット。シルワノを連れてきたぞ」
顔の半分が包帯で隠れた僕の姿に、赤子は怯えて泣いてしまうのではないか、と緊張したのは一瞬だった。
「あーい」
花が咲いたような笑顔。
僕に向けて両手を伸ばしてくる。戸惑いながら右手の人差し指を出すと、思った以上の力で握り返された。
「あらあら、シルワノが気に入ったのね」
王妃殿下が言われたように不思議と懐かれ、あれから十二年が経つ。
森を散歩中にふと視線が合い、僕はリゼット様の目を見つめる。
出会った時から変わらない無垢で美しい瞳。やや鋭さを見せるようにはなったが。
「シラス君、どうかしましたの?」
「いえ」
花が咲くように笑うところも変わっていない。