4月

 王族の政略結婚は当たり前のこと。
「陛下の選ばれた方です。きっとリゼット様の支えとなるでしょう」
 シラスが優しく言った。仮面で表情は読み取れない。
「そうね、きっとご立派な方なのですわ……消息不明だけど」
 国王の従弟にあたる隣国の公爵。リゼットの婚約者とされている。 
「婚姻も王太女の義務。この国の為になるのなら、それでいいのですわ」
 凛とした声。しかし、寂しそうに微笑むリゼット。
 打ち明けるのはもう少し待ってください、とシラスは心の内で詫びた。
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