4月

「ひとつだけ願いが叶うとしたら、シラス君は何をお願いします?」
 唐突なリゼットの質問に、シラスはしばらく考える。
「……特にないですね」
 この国、王家からは十分過ぎるほどの恩恵を受けている。騎士団長の地位も名誉もある。
「えー。でも、シラス君らしいですわ」
 俗世の欲まみれの貴族とは違う、禁欲的な彼らしい答えだと、リゼットは納得したように微笑む。
 シラスはリゼットの耳に届かないように言った。
「一番の望みはもう叶いましたから」
 貴女の傍にいて、守ること。
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