4月

「シラス君、マントに汚れが」
 王太女は、騎士団長のペリースを軽く叩いた。
「はい、取れましたわ」
「……ありがとうございます」
 リゼットが自室に入ったのを確認してから、シラスは自分の背中に手を回した。
「……ポワソンダブリルか」
 剥がした小さな紙片には、可愛らしい魚の絵が描かれていた。
 この国では、今日は魚を模したお菓子を食べる風習がある。子供たちは魚の絵を描いた紙を背中に貼るいたずらをする。
「あら、もう気づきましたの」
 着替えを済ませ、自室から出てきたリゼットは、シラスの手にある紙を見た。
「うふふ、今日のおやつは魚の形のパイですわ」
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