3月
シラスが厚めの本を開くと、四つ葉のクローバーを押し花にした手作りの栞が入っていた。クローバーにそっと触れる。
──五年前。
日課を終え、自室に戻ろうと中庭を歩いていたシラスは、草むらの物音に足を止めた。猫でもいるのだろうかと、そっと覗いてみる。
「……リゼット様、何をされているのですか?」
クローバーと白詰草の中にいる王太女を驚かさないように、優しく声を掛けた。
「あ、シラス君」
リゼットは、シラスの姿を認めると花が綻ぶように笑った。
「あのね、四つ葉を探してましたの」
先日、四つ葉のクローバーを見つけると幸せになれると教えたのだった。見つかる確率はかなり低いらしいが。
「すごい」
リゼットの小さな手には、四つ葉のクローバー。
「きっと、幸せがありますよ」
頭を撫でるシラスに、リゼットは手を差し出した。
「シラス君にあげたくて探してたの」
近く、見習いから正式に騎士となることが決まっていた。そのお祝いに探していたという。
「幸せがありますように」
リゼットの可愛くて優しい祝福を、シラスは大切に残しておきたくて栞にしたのだった。
「……沢山の幸せをもらってますね」
シラスは本を閉じた。
──五年前。
日課を終え、自室に戻ろうと中庭を歩いていたシラスは、草むらの物音に足を止めた。猫でもいるのだろうかと、そっと覗いてみる。
「……リゼット様、何をされているのですか?」
クローバーと白詰草の中にいる王太女を驚かさないように、優しく声を掛けた。
「あ、シラス君」
リゼットは、シラスの姿を認めると花が綻ぶように笑った。
「あのね、四つ葉を探してましたの」
先日、四つ葉のクローバーを見つけると幸せになれると教えたのだった。見つかる確率はかなり低いらしいが。
「すごい」
リゼットの小さな手には、四つ葉のクローバー。
「きっと、幸せがありますよ」
頭を撫でるシラスに、リゼットは手を差し出した。
「シラス君にあげたくて探してたの」
近く、見習いから正式に騎士となることが決まっていた。そのお祝いに探していたという。
「幸せがありますように」
リゼットの可愛くて優しい祝福を、シラスは大切に残しておきたくて栞にしたのだった。
「……沢山の幸せをもらってますね」
シラスは本を閉じた。