3月

 城下で仕事を終えた騎士団長が見つけたのは、ローズブロンドをふたつに結った少女。
「リゼット様」
 屋台で焼き菓子を選んでいた少女が顔を上げた。
「あら、シラス君。お仕事は終わりましたの?」
 リゼットと呼ばれた少女──王太女は、騎士団長に見つかることがわかっていたのか、動じることなく微笑んだ。
「ええ。またお忍びですか」
 本来なら午睡の時間なのだが、抜け出して城下をうろつくことが日常になってしまっている。
 シラスが何か言う前に、リゼットはバスケットを見せた。先程買った焼き菓子が入っている。
「うふふ、美味しそうでしょ。もちろんシラス君の分もありますわ」
 キラキラとした笑顔に、シラスは困ったように微笑んだ。
「……帰ったら紅茶でも淹れましょうか」
2/22ページ
スキ