3月

 物心がつく頃には、近くにいた存在。
 絵本を読んでくれたり、讃美歌や異国の民謡を子守歌に聴かせてくれたのを覚えている。
 他の貴族のように媚びへつらうこともせず、本当の優しさをくれる。
「わたくしの騎士……」
 たまにそう呼ぶけれど、彼は主従以上のもっと特別な存在。
「わたくしはまだ子供だから、恋や愛はわかりません。でも、シラス君以上に好きになれる人はこの先もいないと思いますわ」
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