3月

「今日の姫様は一段と愛らしいですわ。白いドレスがよくお似合いで」
「本当に。花も恥じらうとはこのことですな」
「うふふ、ありがとう。侯爵夫妻もとても素敵よ」
 おべっか使いの貴族たちを、あしらう王太女。
 誰もいなくなったところで、彼女は少し寂しそうに微笑んだ。
「……お互い心にもない言葉を。バカみたいね」
 後ろに控えていた騎士団長は、無言で王太女の頭を撫でた。
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