6月

「シラス君の手は大きいのね」
 ごつごつした無骨な手に、白い花のような手が重ねられる。
「うふふ、指も長い」
 無邪気に自分の手との大きさを比べているリゼット。小さな手は包み込めてしまう。
「……傷だらけで硬いでしょう」
 剣を握り続ける武人の手。リゼットに触れるのに傷つけないよう、最低限の手入れはしているが。
「そうね。わたくしを守ってくれる、強くて優しい手なのですわ」
 シラスの手の甲に口づけて頬擦りをしたリゼットは、花が綻ぶように笑む。
「ありがとう」 
 思い出すのは、純真無垢な笑顔と懸命に握り返す小さな手。
 失ったはずの希望を与えてくれた。
 守る為に戦う強さを与えてくれた。
 貴女がいたから、僕は生きている。
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