6月

 兵舎を出ると、弱い雨が降っていた。
 このくらいの雨ならたいして濡れずに済むか、と空を眺めていたシラスの視界が遮られた。
「お疲れ様なのですわ」
 傘をさしたリゼットだった。
 長身のシラスに合わせ、右腕を高く上げ、背伸びまでしている。いじらしい姿に思わず笑みが溢れる。
「シラス君?」
「いえ、ありがとうございます……御腕が疲れてしまいますね」
 シラスは傘を受け取り、リゼットが濡れないようにできるだけ低く傾ける。
「……わたくしたちの相合傘は難しいですわね。うふふ」
 ふたりは寄り添いながら、王宮へ帰る。
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