6月

 中庭を歩くシラスは、自分の背より少し高い塀を見た。塀の向こうは迷路になっており、そっちからガサガサと物音がするのだ。
「……っ」
 塀を乗り越えて、ふわりと落ちてきたのは天使、ではなく王太女リゼットだった。
 シラスは、華奢で軽い身体を抱きとる。
「……お転婆もほどほどに」
 目線が合い、軽く窘める。
「うふふ、見つかってしまいましたわ」
 さすが騎士団長様なのですわ、と頭に葉っぱをくっつけたリゼットは、シラスの腕の中で楽しそうに笑った。
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