龍神が審神者になりました?
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――柳side――
あの日から五日。
アオは自室に籠ってるらしく、飯は自分で何とかするからと、皆に会っていないようだ。
「一人にして、誰も入らないよう」とまで言って。
俺は鶴丸の様子も気になり見に来ている。
薬研が言うには、何か夢を見ているみたいなんだが、魘されながら「父様、母様」と言うらしい。
刀剣に父が居るとしたら、そういう神か、刀工だろうけど…母様はわかんねぇな。
神に連絡して、テレビ電話で様子を見せ、この間のことも話すと、憶測だがと言い話してくれた。
〈アオの霊力を治癒術を通して流れたろ?しかも腕を治すほどの量〉
「あぁ、そういうことになるな」
〈たぶん、アオの記憶を見てるんじゃないか?〉
「アオの?」
〈龍神の里の頃のな。あいつが今まで生きてきた中で、父様、母様と呼んでたのはその時代だけだ〉
「感応してるってことか?」
〈たぶんな〉
ということらしい。
あと。
〈もし部屋から出てこないなら、そっとしとけ。落ち込んでるかもだし〉
「まぁ…落ち込んでるだろうけど…」
〈あの日、俺と神楽はあいつを連れて逃げたから、どれだけ悔しかったか、逃げずに一緒に居たかったか…わかるからな。お前に、アオに指導する際、あの話はするなと言ったのも、こうなるとわかってたからだ〉
「…だから、知ることになる時がくるまで、話すなと言ったのか」
〈あぁ。でも俺は――〉
「あいつはあいつのままでいいと思う」とも、言っていた。
俺もそう思うが…そうも言ってられない時が、いつかはくると思うとなぁ…。
「柳さん」
「ん、小夜。どうした」
「鶴丸さん、今目を覚ましたそうです」
「わかった」
知らせを聞いて、医務室へ行けば、鶴丸が床に座り込んでいた。
「鶴丸の旦那、いきなり動いたらダメだ」
「アオ…アオは…」
「大丈夫だ。あれから五日経つが、お前を医務室に運んでからずっと部屋に籠ってるが、怪我してねぇよ」
「や、なぎ…五日…?」
「お前、ずっと魘されてたんだぞ」
「…あぁ……夢を…悲しくて、悔しくて…嫌だ、と思っていた…」
「夢を見たくないという事か」
「いや、一緒に居たいのに、居れない…離れたくなくて、嫌だと…悲しい夢だった…」
鶴丸を布団に横たわらせ、神から聞いた話をする。
憶測だから確実とは言えないが、可能性あるとしたらそうだろうと。
「アオの記憶…」
「しかも大将の古い記憶…里に居た頃の」
「俺も話でしかわかんねぇけど…あいつが両親を【父様、母様】と呼んでいたのはその頃だけらしいから、神も可能性としてはそれが高いんじゃないか、と」
「そうか…あの子は…あんな、悲しい思いをしたんだな…」
「……あぁ、そうだ。帰還できなかったあれな、柚が調査班と調べてくれたんだが、帰還しようとしてた時に、お前らが襲われたろ?」
「あぁ、平野が狙われたから、俺が間に入って、遠ざけたな」
「帰還しようとしていたところに無理矢理お前が離れたこともあって、道が一時的に麻痺したんじゃないか、と」
「麻痺…?」
調査班によると、出陣部隊と本丸を繋げてる霊力がある。
それが道にもなるし、審神者が中心になる。
鶴丸が襲われ離れ、繋がりの道を乱されたことで、道が繋がりにくくなったんだろうと。
「あと、審神者が電波みたいな役割をしてるんだが、道が不安定になってるところに、アオもそっちへ行ったから、霊力の道が迷子?のようになってたんじゃないか、と」
「わかるような…わからないような…」
「まぁ、俺も感覚的にしか分かってないからな」
「じゃあ、もしもまた今回みたいに、帰還中に襲われ、上手く帰還できない中でアオまで出陣すると、連絡が取れなくなるかもしれいってことか」
「可能性はあるな」
「そうなると、大将を出陣させるわけにはいかなくなるな…」
「あの子は飛び出すぞ」
「だな…あいつの性格上、何かあれば助けに行くな」
その場にいる皆でため息をついていると、遠くから「できたー!!」と叫び声がした。
そしてドタドタと走ってくる音も。
「アオが部屋から出てきたってのは、まぁ分かるが」
「なんか、こっちに走ってきてるような…?」
「アオ!?」
「こら!廊下は『鶴は!?』」
「さっき、起きました…」
『ありがとうあとごめんね皆にも後で渡すから!』
そんなやりとりの後バンッ!と医務室の戸が開かれた。
『鶴!』
「え、アオ…どうし…」
『先に謝るごめん!そんでもってお馬鹿ー!』
と、バッ、バッと行動したかと思うと、鶴丸に叫ぶアオだった。
『うちは絶対捨てないし置いてかない!いくら言われてもこれは譲らない!うちが居ないと皆も危険に晒すけど、それでも捨てないから!うちは昔から何かと誰かを庇ったりして怪我もしてきた!けど!皆を置いて死ぬ気はない!以上!』
俺も医務室に居たやつも、ポカーンとなった。
いや一番ポカーンなのは鶴丸だ。
いきなり現れたかと思ったら説教だもんな…。
つか口調元に戻ってるし…。
鶴の傍に座ると、本体を手に取り、鞘に何かをつけるアオ。
「アオ、それは?」
『俺が作った組紐とウッドレジンっていうアクセ。念も込めてるから、お守りに』
取り付けると満足したかのように優しく本体を戻す。
『うちを心配してくれてありがとう。でもごめん、うちは逃げないし置いてかない。何が何でも』
「…あぁ…君って子は……わかった。お守り、ありがとう」
『うん、元気になってよかった』
…喧嘩してたわけじゃなぇけど、なんだろうな、この仲直りムードは…。
「…ところで君、ずっと部屋に籠ってたそうじゃないか」
『あぁ、アクセの仕上げをしてた』
「あくせ?」
「装飾品な、首飾りや腕輪とか」
『もともとある程度みんなの出来てたんだけど、仕上げがまだやったから、それをね』
「五日もずっと?」
『大丈夫、ご飯はカレー麺食べてたから!』
「…五日もずっと??」
『美味しいし手軽やしすぐに作業に戻れる!』
「……小夜、厨に行って、何か栄養取れる飯を頼んできてくれ…鶴丸も何か食わないとだし…」
「はい…」
説教するとしたら、飯の後だな。
男士高校生のような飯…しかも五日間カレー麺…飽きないのか…。
厚が神に連絡を取り、報告してくれた時、神から「アオの集中力はやばいらしいから、まぁできれば説教しないでやってくれ」とのことだった。
詳しく知りたかったら風雅や風蝶に聞いてくれ、とも。
俺はそんなにやばいのか?と思い、あいつらが飯食ってる間に、風雅辺りに連絡を取った。
〈どないしたん?鶴丸起きたん?〉
「あぁ、さっきな。アオも「できたー!」って叫びながら部屋からようやく出てきた」
〈さよか。無事でよかったわ〉
「でさ、アオってそんなに集中力やばいのか?」
〈ん?…もしかして、ずっと出てきてなかったんは作業でもしとったん?〉
「作業がアクセ作りと言うなら、そうだな」
〈あらら…それで籠ってたんか、相変わらずやなぁ〉
のんびり煙草吸って聞いてる姿がすっげぇ目に浮かぶわ…。
〈柳たちが知らんのもしゃあないわ、レジンにハマってウッドレジンにもハマってから、時間あれば作業に集中するからの〉
「けどマンション居るときは、お前らと一緒だろ?籠るほどすんのか?」
〈せやな、ずっとやるで。やから作業するのはかまわんけど、飯食ったりもしなあかんから、タイマーかけさせてたんや。そのタイマーが鳴らん限り呼びかけても聞こえとらんよ〉
「実際見てないからわかんねぇけど、マジかよ…」
〈てか籠ってたんなら、なんか食うてたん?〉
「……五日間ずっとカレー麺らしい…」
〈あー…あいつ好きやからなぁ…〉
呆れたため息が聞こえてきた。
そうなるよな。
〈…離れは一応審神者が生活するには十分な部屋やったな…〉
「あぁ…だから籠ってたんだ、一度も出てきたなんて聞いてないし…」
〈つか音とか聞こえんかったん?リューターの音とか〉
「?リューターが何かわかんねぇけど…音らしい音はなにも」
〈…防音の結界張ってずっとしとったんやな…はぁ…〉
「アクセ作りで使ってる機械か何かか?」
〈せや。部屋の近く通ったら聞こえると思うんやけどなぁ…それがなかったんやったら、防音の結界張ってたやろな〉
「……さすがに…なんとかならんの?」
〈ある意味精神統一、ストレス発散でもあるから、やめさせるんはの。決まり事作ったらええんちゃう?んで音の違うタイマー、もしくは時計を用意して、この音が鳴ったら休憩、この音は飯、とか。もともと前からしとったやろけど。そこに、外に出る、もしくは業務をするためのアラーム置くんじゃ〉
「……それでいいのか?」
〈まぁ機会があればやってみ。音楽聞いてだいたいしとるから、音楽以外の音が入ればいいんや。ただ人の声は聞こえとらんから、必ずタイマーでの。下手に肩叩いたり驚かせたら、怪我もするからの〉
「その口ぶりだと、前にあったのか…」
〈せやな。タイマーとかしとらん頃、呼びに行った時に驚かせてもうての。幸い爪を削っただけやったけど〉
「…わかった、ここの本丸の連中にも伝えとく」
〈頼むわ。なんかあったら連絡いれ、厚と小夜も知っとるから〉
「あぁ、ありがとな」
連絡を終えると、ちょうど歌仙の雷が聞こえてきた。
そりゃそうだな、せめて何か違うもの毎日食べてたらな…。
雷もアクセ配りも終わった頃、初期組を呼んで、風雅に聞いたことを話す。
まぁ俺も呆れたりしたけど、こいつらも苦笑したりいろいろだった。
「その装飾品作りだけやったらええんやけんど」
「そうだな。他にも何か集中するかもしれないと、時計が手放せないな…」
「アオさん、書類仕事でも集中するけど…声かけても平気でした…」
「自分の好きなことかどうか、で変わりそうだな」
「まぁ、一応約束作って、作業やらさてやってくれ。アオの好きなことだしな」
俺もなにかあればまた来るし、とも伝え。
アオ達に挨拶して、今日は帰った。
「帰ったぞー」
「おかえりー主」
「アオさんたちどうだった?」
「鶴丸も起きたし、アオも部屋から出てきたぞ」
「落ち込んではなかったか?」
「いきなりあんなこと言われたらな…」
「そんな感じはなかったな、むしろ鶴丸に説教?啖呵きってた?感じだな、うん」
あっちであったこと、とくにあの日出陣してた奴らは心配してたからな。
俺が帰るたんびに聞いてきてたから、さっそく何があったか教えてやる。
「がっははは!アオは強い者だな!」
「ほんとだね!」
「心配してた俺らがバカみたいだけど、よかったな!」
「アオは大丈夫だろう。昔神たちに聞いてた頃から、頑固だったしな」
「まぁ落ち込んでたのもあるだろうが、それに負けない、って意志も感じた。そこは見守るしかできねぇが…」
「あ、主お帰りー」と清光がやってきた。
「ちょうどよかった、さっきアオからなにか届いてたよ」
「アオから?」
「うん、ちょうど主の部屋に届けようとしてたんだ」
「はい、これ」と、小さな箱を渡される。
なんで帰る時渡さなかったんだ?
箱を開けると、一回り小さめの箱。
それも開けると、あの本丸で皆に渡してた、ウッドレジンがあった。
俺の瞳に似た色で、髪の色も混ざった色。
周りから「綺麗…」と聞こえた。
「主さんの色だね」
「派手さはそんなにないけど、綺麗でいいじゃん!」
「へーこれアクセサリーってやつ?」
「アオの本丸で、皆にアオが配った奴だな」
「見事なものだな」
「…なんで帰りに渡さなかったんだあいつ…」
「恥ずかしかったんじゃない?」
「アオさんのことだし、もしかしたら忘れてたとか?」
「ありえそうだな」
箱を覗くと、底にメモが入っていたから読む。
『やな兄、いつもありがとう。組紐は長めにしてるから、髪を結う時やネックレス、鞘につけたりできます。 アオ』
と書かれていた。
「どうやら、恥ずかしかったようだな」
「…いや、単に忘れてたんだろうな」
「ねぇねぇ主さん!そのアクセサリーで髪結わせて!」
「んー…んじゃ頼もうかな、せっかくだし」
「あ、俺も俺も!」
そういって、乱と清光が二人で俺の髪をいじりだした。
後ろには編み込みと三つ編みがされ、高い位置でポニテに。
ポニテはアオのくれたウッドレジン付きの組紐でしっかりしばってくれた。
「おお、久々に首すーすーする」
「似合ってるよ主さん!」
「うん、髪に映えるいい色のアクセサリー。いいじゃんいいじゃん」
「おお…!主かっこいい!」
「ありがとな」
「うむ、良いではないか!」
「皆にも見せよう!」
乱に引っ張られ、本丸の皆に見せに回る俺。
…まぁ……。
「悪くない、な」
それから、獅子王やオシャレに詳しい奴らが髪を結うようになった。
ちなみに柚にも贈られてたみたいで、後日まんばとあっちの厚が写真交換してた。
しかもまんばはアオの厚たちにも送ってた。
あの日から五日。
アオは自室に籠ってるらしく、飯は自分で何とかするからと、皆に会っていないようだ。
「一人にして、誰も入らないよう」とまで言って。
俺は鶴丸の様子も気になり見に来ている。
薬研が言うには、何か夢を見ているみたいなんだが、魘されながら「父様、母様」と言うらしい。
刀剣に父が居るとしたら、そういう神か、刀工だろうけど…母様はわかんねぇな。
神に連絡して、テレビ電話で様子を見せ、この間のことも話すと、憶測だがと言い話してくれた。
〈アオの霊力を治癒術を通して流れたろ?しかも腕を治すほどの量〉
「あぁ、そういうことになるな」
〈たぶん、アオの記憶を見てるんじゃないか?〉
「アオの?」
〈龍神の里の頃のな。あいつが今まで生きてきた中で、父様、母様と呼んでたのはその時代だけだ〉
「感応してるってことか?」
〈たぶんな〉
ということらしい。
あと。
〈もし部屋から出てこないなら、そっとしとけ。落ち込んでるかもだし〉
「まぁ…落ち込んでるだろうけど…」
〈あの日、俺と神楽はあいつを連れて逃げたから、どれだけ悔しかったか、逃げずに一緒に居たかったか…わかるからな。お前に、アオに指導する際、あの話はするなと言ったのも、こうなるとわかってたからだ〉
「…だから、知ることになる時がくるまで、話すなと言ったのか」
〈あぁ。でも俺は――〉
「あいつはあいつのままでいいと思う」とも、言っていた。
俺もそう思うが…そうも言ってられない時が、いつかはくると思うとなぁ…。
「柳さん」
「ん、小夜。どうした」
「鶴丸さん、今目を覚ましたそうです」
「わかった」
知らせを聞いて、医務室へ行けば、鶴丸が床に座り込んでいた。
「鶴丸の旦那、いきなり動いたらダメだ」
「アオ…アオは…」
「大丈夫だ。あれから五日経つが、お前を医務室に運んでからずっと部屋に籠ってるが、怪我してねぇよ」
「や、なぎ…五日…?」
「お前、ずっと魘されてたんだぞ」
「…あぁ……夢を…悲しくて、悔しくて…嫌だ、と思っていた…」
「夢を見たくないという事か」
「いや、一緒に居たいのに、居れない…離れたくなくて、嫌だと…悲しい夢だった…」
鶴丸を布団に横たわらせ、神から聞いた話をする。
憶測だから確実とは言えないが、可能性あるとしたらそうだろうと。
「アオの記憶…」
「しかも大将の古い記憶…里に居た頃の」
「俺も話でしかわかんねぇけど…あいつが両親を【父様、母様】と呼んでいたのはその頃だけらしいから、神も可能性としてはそれが高いんじゃないか、と」
「そうか…あの子は…あんな、悲しい思いをしたんだな…」
「……あぁ、そうだ。帰還できなかったあれな、柚が調査班と調べてくれたんだが、帰還しようとしてた時に、お前らが襲われたろ?」
「あぁ、平野が狙われたから、俺が間に入って、遠ざけたな」
「帰還しようとしていたところに無理矢理お前が離れたこともあって、道が一時的に麻痺したんじゃないか、と」
「麻痺…?」
調査班によると、出陣部隊と本丸を繋げてる霊力がある。
それが道にもなるし、審神者が中心になる。
鶴丸が襲われ離れ、繋がりの道を乱されたことで、道が繋がりにくくなったんだろうと。
「あと、審神者が電波みたいな役割をしてるんだが、道が不安定になってるところに、アオもそっちへ行ったから、霊力の道が迷子?のようになってたんじゃないか、と」
「わかるような…わからないような…」
「まぁ、俺も感覚的にしか分かってないからな」
「じゃあ、もしもまた今回みたいに、帰還中に襲われ、上手く帰還できない中でアオまで出陣すると、連絡が取れなくなるかもしれいってことか」
「可能性はあるな」
「そうなると、大将を出陣させるわけにはいかなくなるな…」
「あの子は飛び出すぞ」
「だな…あいつの性格上、何かあれば助けに行くな」
その場にいる皆でため息をついていると、遠くから「できたー!!」と叫び声がした。
そしてドタドタと走ってくる音も。
「アオが部屋から出てきたってのは、まぁ分かるが」
「なんか、こっちに走ってきてるような…?」
「アオ!?」
「こら!廊下は『鶴は!?』」
「さっき、起きました…」
『ありがとうあとごめんね皆にも後で渡すから!』
そんなやりとりの後バンッ!と医務室の戸が開かれた。
『鶴!』
「え、アオ…どうし…」
『先に謝るごめん!そんでもってお馬鹿ー!』
と、バッ、バッと行動したかと思うと、鶴丸に叫ぶアオだった。
『うちは絶対捨てないし置いてかない!いくら言われてもこれは譲らない!うちが居ないと皆も危険に晒すけど、それでも捨てないから!うちは昔から何かと誰かを庇ったりして怪我もしてきた!けど!皆を置いて死ぬ気はない!以上!』
俺も医務室に居たやつも、ポカーンとなった。
いや一番ポカーンなのは鶴丸だ。
いきなり現れたかと思ったら説教だもんな…。
つか口調元に戻ってるし…。
鶴の傍に座ると、本体を手に取り、鞘に何かをつけるアオ。
「アオ、それは?」
『俺が作った組紐とウッドレジンっていうアクセ。念も込めてるから、お守りに』
取り付けると満足したかのように優しく本体を戻す。
『うちを心配してくれてありがとう。でもごめん、うちは逃げないし置いてかない。何が何でも』
「…あぁ…君って子は……わかった。お守り、ありがとう」
『うん、元気になってよかった』
…喧嘩してたわけじゃなぇけど、なんだろうな、この仲直りムードは…。
「…ところで君、ずっと部屋に籠ってたそうじゃないか」
『あぁ、アクセの仕上げをしてた』
「あくせ?」
「装飾品な、首飾りや腕輪とか」
『もともとある程度みんなの出来てたんだけど、仕上げがまだやったから、それをね』
「五日もずっと?」
『大丈夫、ご飯はカレー麺食べてたから!』
「…五日もずっと??」
『美味しいし手軽やしすぐに作業に戻れる!』
「……小夜、厨に行って、何か栄養取れる飯を頼んできてくれ…鶴丸も何か食わないとだし…」
「はい…」
説教するとしたら、飯の後だな。
男士高校生のような飯…しかも五日間カレー麺…飽きないのか…。
厚が神に連絡を取り、報告してくれた時、神から「アオの集中力はやばいらしいから、まぁできれば説教しないでやってくれ」とのことだった。
詳しく知りたかったら風雅や風蝶に聞いてくれ、とも。
俺はそんなにやばいのか?と思い、あいつらが飯食ってる間に、風雅辺りに連絡を取った。
〈どないしたん?鶴丸起きたん?〉
「あぁ、さっきな。アオも「できたー!」って叫びながら部屋からようやく出てきた」
〈さよか。無事でよかったわ〉
「でさ、アオってそんなに集中力やばいのか?」
〈ん?…もしかして、ずっと出てきてなかったんは作業でもしとったん?〉
「作業がアクセ作りと言うなら、そうだな」
〈あらら…それで籠ってたんか、相変わらずやなぁ〉
のんびり煙草吸って聞いてる姿がすっげぇ目に浮かぶわ…。
〈柳たちが知らんのもしゃあないわ、レジンにハマってウッドレジンにもハマってから、時間あれば作業に集中するからの〉
「けどマンション居るときは、お前らと一緒だろ?籠るほどすんのか?」
〈せやな、ずっとやるで。やから作業するのはかまわんけど、飯食ったりもしなあかんから、タイマーかけさせてたんや。そのタイマーが鳴らん限り呼びかけても聞こえとらんよ〉
「実際見てないからわかんねぇけど、マジかよ…」
〈てか籠ってたんなら、なんか食うてたん?〉
「……五日間ずっとカレー麺らしい…」
〈あー…あいつ好きやからなぁ…〉
呆れたため息が聞こえてきた。
そうなるよな。
〈…離れは一応審神者が生活するには十分な部屋やったな…〉
「あぁ…だから籠ってたんだ、一度も出てきたなんて聞いてないし…」
〈つか音とか聞こえんかったん?リューターの音とか〉
「?リューターが何かわかんねぇけど…音らしい音はなにも」
〈…防音の結界張ってずっとしとったんやな…はぁ…〉
「アクセ作りで使ってる機械か何かか?」
〈せや。部屋の近く通ったら聞こえると思うんやけどなぁ…それがなかったんやったら、防音の結界張ってたやろな〉
「……さすがに…なんとかならんの?」
〈ある意味精神統一、ストレス発散でもあるから、やめさせるんはの。決まり事作ったらええんちゃう?んで音の違うタイマー、もしくは時計を用意して、この音が鳴ったら休憩、この音は飯、とか。もともと前からしとったやろけど。そこに、外に出る、もしくは業務をするためのアラーム置くんじゃ〉
「……それでいいのか?」
〈まぁ機会があればやってみ。音楽聞いてだいたいしとるから、音楽以外の音が入ればいいんや。ただ人の声は聞こえとらんから、必ずタイマーでの。下手に肩叩いたり驚かせたら、怪我もするからの〉
「その口ぶりだと、前にあったのか…」
〈せやな。タイマーとかしとらん頃、呼びに行った時に驚かせてもうての。幸い爪を削っただけやったけど〉
「…わかった、ここの本丸の連中にも伝えとく」
〈頼むわ。なんかあったら連絡いれ、厚と小夜も知っとるから〉
「あぁ、ありがとな」
連絡を終えると、ちょうど歌仙の雷が聞こえてきた。
そりゃそうだな、せめて何か違うもの毎日食べてたらな…。
雷もアクセ配りも終わった頃、初期組を呼んで、風雅に聞いたことを話す。
まぁ俺も呆れたりしたけど、こいつらも苦笑したりいろいろだった。
「その装飾品作りだけやったらええんやけんど」
「そうだな。他にも何か集中するかもしれないと、時計が手放せないな…」
「アオさん、書類仕事でも集中するけど…声かけても平気でした…」
「自分の好きなことかどうか、で変わりそうだな」
「まぁ、一応約束作って、作業やらさてやってくれ。アオの好きなことだしな」
俺もなにかあればまた来るし、とも伝え。
アオ達に挨拶して、今日は帰った。
「帰ったぞー」
「おかえりー主」
「アオさんたちどうだった?」
「鶴丸も起きたし、アオも部屋から出てきたぞ」
「落ち込んではなかったか?」
「いきなりあんなこと言われたらな…」
「そんな感じはなかったな、むしろ鶴丸に説教?啖呵きってた?感じだな、うん」
あっちであったこと、とくにあの日出陣してた奴らは心配してたからな。
俺が帰るたんびに聞いてきてたから、さっそく何があったか教えてやる。
「がっははは!アオは強い者だな!」
「ほんとだね!」
「心配してた俺らがバカみたいだけど、よかったな!」
「アオは大丈夫だろう。昔神たちに聞いてた頃から、頑固だったしな」
「まぁ落ち込んでたのもあるだろうが、それに負けない、って意志も感じた。そこは見守るしかできねぇが…」
「あ、主お帰りー」と清光がやってきた。
「ちょうどよかった、さっきアオからなにか届いてたよ」
「アオから?」
「うん、ちょうど主の部屋に届けようとしてたんだ」
「はい、これ」と、小さな箱を渡される。
なんで帰る時渡さなかったんだ?
箱を開けると、一回り小さめの箱。
それも開けると、あの本丸で皆に渡してた、ウッドレジンがあった。
俺の瞳に似た色で、髪の色も混ざった色。
周りから「綺麗…」と聞こえた。
「主さんの色だね」
「派手さはそんなにないけど、綺麗でいいじゃん!」
「へーこれアクセサリーってやつ?」
「アオの本丸で、皆にアオが配った奴だな」
「見事なものだな」
「…なんで帰りに渡さなかったんだあいつ…」
「恥ずかしかったんじゃない?」
「アオさんのことだし、もしかしたら忘れてたとか?」
「ありえそうだな」
箱を覗くと、底にメモが入っていたから読む。
『やな兄、いつもありがとう。組紐は長めにしてるから、髪を結う時やネックレス、鞘につけたりできます。 アオ』
と書かれていた。
「どうやら、恥ずかしかったようだな」
「…いや、単に忘れてたんだろうな」
「ねぇねぇ主さん!そのアクセサリーで髪結わせて!」
「んー…んじゃ頼もうかな、せっかくだし」
「あ、俺も俺も!」
そういって、乱と清光が二人で俺の髪をいじりだした。
後ろには編み込みと三つ編みがされ、高い位置でポニテに。
ポニテはアオのくれたウッドレジン付きの組紐でしっかりしばってくれた。
「おお、久々に首すーすーする」
「似合ってるよ主さん!」
「うん、髪に映えるいい色のアクセサリー。いいじゃんいいじゃん」
「おお…!主かっこいい!」
「ありがとな」
「うむ、良いではないか!」
「皆にも見せよう!」
乱に引っ張られ、本丸の皆に見せに回る俺。
…まぁ……。
「悪くない、な」
それから、獅子王やオシャレに詳しい奴らが髪を結うようになった。
ちなみに柚にも贈られてたみたいで、後日まんばとあっちの厚が写真交換してた。
しかもまんばはアオの厚たちにも送ってた。