龍神が審神者になる?
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──アオside──
あの泣いてる声、今ならハッキリわかる。
この堕ちた刀剣からするんだ。
悲しい、愛して、寂しい、守らないと、苦しい、助けて……──
いろんな想いが強く、聞こえる。
『君、俺の言葉わかるかい』
「ゔゔぅ」
『いや、なんとなくわかるくらいかな、意識ないと聞いてたけど、完全になくなってない…君から声が聞こえるからね』
俺に追いつき、太郎さん達が驚く。
「こいつからの声…?」と。
夢で見たのは、さっきのシーンか…こちらにやな兄が向かってきてるし。
ミサンガ渡しといてよかった。
虎を柚兄のそばに行かせ、鉄扇、龍華から花弁を出し、柚兄を中心に囲う。
『その花弁は、結界になってる。そこから出るなよ。太郎さん達も、すみませんが手だし無用で』
「アオ!やめろ!」
「アオっ…だめ、だ…」
『俺にしか、あの子は止められないから』
「だからって!」
『ところで、そちらの大和守さんは無事?』
「なんとかな…だが折れかけだ…あまり動かしたくないんだが…」
「…お、ねがい…」
大和守さんが、俺を見て何かを伝えようとしてる。
やな兄がゆっくり下ろし、横たえる。
その傍に寄り、耳を近づかせる。
「お願い…あいつを…たすけ…て……」
『……願って、あの子が助かるように。俺がなんとかするから』
「う、ん……」
絶対、助ける。
例え折れる結果だとしても、心を助けたい。
俺は再び、堕ちた刀剣と向かい合う。
攻撃してこなかったのは、戸惑ってたのかわからないが、その間に大和守さんの想いを聞けた。
なら応えれるように頑張るだけだ。
刀は抜かず、構えると、相手が獣のような咆哮をあげ向かってくる。
攻撃が鋭い…だがなんとかいなしながら、皆から離す。
出来れば、怪我をさせたくないんだ。
「なんで刀を……」
「………怪我をさせたくないんだろうな。あいつが聞こえてた声、あの堕ち神らしいからな」
「けどこのままじゃっ」
「すぐに加勢できるようにしとくぞ」
なんか聞こえるけど、邪魔はしないでほしいかな…と、何か嫌な気配を感じた俺は、堕ちた刀剣から距離を取り、上を見た。
『何……』
「!おいおい…なんで時間遡行軍が」
刀が降ってきたため、避けて様子を見ると、刀が形を変え、時間遡行軍になった。
『めんどいな……やな兄たち、そっちはお願い!』
仕方ねぇなっ!と聞こえたため、あっちを対処してくれるようだ。
俺は堕ちた刀剣と再び向かい合い、刀を(俺は鞘付きで)打ち合う。
『君は、いつまで泣いてるの』
『このままでいいの』
『君の相棒は君を助けてと、君が戻るの願ってるよ』
戦いながら言葉を伝える。
少し反応があり、時々鈍くなる剣筋。
まだ間に合う。
心はなくなってない。
「ゔゔ…ぁ…あ…」
『!』
「ぁ、ああ…た、す…け……」
『……それが、本心だね。ちょっと手荒なことするけど、耐えろよ』
俺はすばやく相手の足を引っ掛け倒し、上に乗る。
そして、しばらく使ってなかった治癒の力を使い、彼に流し込む。
「ガアアアアァァァアアア!」
『っ…耐えろっ…』
荒治療になるから、ほぼ堕ちてる彼にしたら、陽に値する治癒の力は、苦しいし痛いだろう。
でも耐えて…。
まだ不安定な中無理やり解放してるが…ゆっくり力を流しながら、魂に触れる…
俺が先にダメになるか、彼が持たないか……。
賭けではあるが、約束したから。
暴れるから俺にも小さい傷、噛み付いてきた傷、刀で刺された傷など増えていく。
でもやめない。
見つけた、君を。
そして魂に話しかける。
─『帰っておいで』─
─「だれ…」─
─『君の帰りを待ってるよ』─
─「あんたは………なんで、なんで……」─
─『君を助けてと、頼まれたから。あと、助けてと泣いてたから』─
─「俺が…?」─
─『君、強いんだね。剣の腕も、心も。だから、完全に堕ちなかった』─
─「……俺…守りたかったんだ、仲間を、相棒を……でも、傷つけた…もう、俺は……」─
─『間に合うよ、だから、俺がきた。帰ろう?』─
─「…………」─
─『助けれなかった刀剣もいるけど、数振りは、 助かる。君も含めだ』─
─「!…数振りでも、間に合う…?俺も…?」─
─『そう。君の場合は、君の心次第』─
─「……引き継ぎ審神者が、アンタなら、よかったのに………あんたの刀になら、なりたい…」─
─『なれるかはわからんけど、諦めず願ってよ、叶うかわからないとしても、願うだけは自由なんだし』─
─「………あんた、名前は…」─
─『君が戻ってきたら、教えてあげる。加州清光』─
そう話すと、俺は現実に、加州さんも元に戻り涙を流していた。
「っあ…おれ…」
『あぁ…大丈夫、致命傷じゃないから』
自分がつけた傷だとわかるんだろうね、俺の傷を見て、自分が痛そうな顔をして泣く。
よしよしと頭を撫でる。
そして周りを見渡せば、奏さんに奏さんの刀剣、やな兄の刀剣も居た。
時間遡行軍は皆がなんとかしてくれたみたいだ。
俺は加州さんを姫抱きすると、大和守さんの傍に下ろす。
風蝶が持ちこたえさせてくれたみたいだけど…。
「やす、さだ…」
「…ばか、きよ…みつ…」
「っごめ、ん…こめんっ…」
「だい、じょ、ぶ…わかってる…清光は、守り、たかった…みんなを…」
「でもっ…俺はっ…!」
「清、光…さい、ごまで…生きて、よ…ぜったい…」
微笑む大和守さん。
そして俺の方へ顔を向ける。
「や、くそく…ありが、とう……あと、また…」
『…うん、どうなるかは、まだわからないけど、なんとかするよ、俺の家族もいるから』
「よか、た…しし、お…たちも…おねが、い…」
そう言いながら微笑むと、大和守さんは静かに折れた。
皆、大きく泣いたり、静かに泣いたり…涙を見せないようにしていたりと、様々だった。
それから少しして、こんのすけが日誌のようなものや、閉じ込められてるここのこんのすけを見つけ、処理班を呼び、そちらは任せた。
「さて、残った刀剣男士達ですが、一度私預かりにしようと思います」
「「「「「…」」」」」
「…」
「話も聞かなくてはいけませんので…よろしいですか?」
『あー奏さん』
「はい?」
「彼ら、俺の本丸で預かっていい?」
「アオさん…」
『いやほんと勝手してすみませんし本当にすみませんが!
…俺の本丸は、俺の霊力がたまってますし、休息にも癒しにもなると思うんです』
「俺も賛成だ。柚を俺の本丸より、アオの本丸に任せたいと思ってる。俺も行くがな」
奏さんは悩んだ後、ため息をつき、苦笑する。
「私も貴方たちによわいわね」
『奏さん…!』
「会長、並びに代表にお話しします。なので、まずは一日預かって下さい。こういうときに権力を使ってもらう方がいいでしょうし」
「サンキュ、奏さん」
「いえ。では、私は九重のこともありますので、先に行きます」
そういうと、奏さんはゲートを潜り先に戻った。
俺らも俺の本丸へ戻り、先に柚兄を寝かせる。
そしてやな兄は、一度自分の本丸へ戻って行った。
このあと、戻った俺の刀剣達に心配されまくりました。
しばらくすると、ナナシがやってきて柚兄に点滴を。
怪我は俺の札である程度治ってたから、先に点滴をし、俺の状態を確認するとのこと。
あ、あの本丸の刀剣達は、別室で話をしてます。
加州さんも謝りたかったみたいだし。
別室で怪我を見てもらうと、驚かれた。
出血は酷いし軽い怪我も多いけど、大きな傷はそこまで酷くないらしい。
無意識に加州さんが手加減したんじゃないかとのこと。
「はぁー…ひやひやしたぜ…」
『ごめんて…我慢できんかった…』
「声が聞こえたんだろ?…仕方ないが、もう少し耐えてくれ…柳の部隊待つとか…」
『ごめんなさい…』
ナナシにも注意され、しょぼーんとなる俺。
と、そこに薬研が。
「旦那、大将、入るぞ」
「お、きたな。いいぞ」
『え、ナナシ?』
「失礼s………………大将…?」
はい、薬研は今俺の上半身(サラシ付き)を見て驚いてます。
その心は?
「…女人だったのか…?」
『そうなりますよね!ごめんね驚かせて!』
「薬研にも教えてなかったのかよ…」
『俺の性格知ってるでしょうがっ』
「あー…うん、そうだな、うん。ほら、驚かせれたし、成功だな、うん」
『適当!』
適当にナナシに返事された俺、悲しい…。
なんでも俺の治療を見せてなんとなくのやり方を見せようと思ったらしい。
「薬研、とりあえずお前みたいにバレるまでは、アオが女ということは伏せててくれ。女扱いもなしだ」
「あ、あぁ…それは、いいんだが…?」
「女とバレたときの反応を見てこいつ楽しんでるからな、今の薬研みたいに」
『まぁもともと男装も趣味だし』
「…なんか、ほんととんでもねぇお人のとこに顕現したな…」
「頑張れ」
俺は横になり、ナナシが薬研に教えながら治療される。
あ、部分麻酔はしてもらってます。
一通り治療が終わると、ナナシは薬研に俺の注意事項を説明するため、その場に薬研と残る。
俺は柚兄のとこへ向かうが、ちょうど来客の鈴の音が。
『このシステムどうにかできんかな…』
許可のところを押し、玄関へ向かうと、やな兄と国広、光忠さんがきた。
荷物持って。
『え、どしたのその多くも少なくもない荷物』
「しばらくこっち泊まるからな。お前も傷癒さないとだし、柚のこともあるしな」
『大丈夫なんに…』
「アオくん、その怪我で料理したりはダメだよ?ちゃんと治さないと」
「そうだぞ。あの刀剣達のこともある。向こうは歌仙も居るから、燭台切がしばらくこっちでお前たちの飯を作る」
『でも、大丈夫…?任務とかあるやろに…』
「問題ない。今回の不手際の役員のせいで刀剣も審神者も役員も、いろんな犠牲が出たしな。文句行ってくるなら黙らせるとよ、神楽たちが」
『あ、はい』
「てなわけで、奏さんから伝言。刀剣達をしばらくお願いします。彼らが大丈夫なとき、話をさせてください、だ」
さすが奏さん…許可が早い…。
まぁ……まだ仮の俺が出たのもあるからか…。
『じゃあ…光忠さん、すみませんが、しばらくお願いします』
「うん。任せて」
「俺は柚と国広と一緒に部屋を使わせてもらうぞ」
『うん、お願いします』
「お願いされました」
「世話になる」
『お世話されます…』
やな兄達を柚兄の部屋へ通し、皆に伝達。
そういえば、あの子虎。
柚兄の傍から離れないんだよね。
なんでだろ。
説明も点滴も終わると、ナナシは一度政府に行くらしい。
容態が悪化したらいつでも連絡入れろとのことだった。
さっそくお昼は光忠さんや小夜たちがやってくれて、美味しくいただく。
預かった刀剣達も一緒に食べれたらよかったんだけど、遠慮されたので、別々に…。
のんびりゆっくり過ごさせてもらう。
けどなんもしないというのは…こんなにソワソワするものだっけ?
しばらくバタバタやったから、感覚がおかしいや。
なので暇そうにしてる人と話したり、柚兄の様子見に行ったりとしていた。
そんな生活から約一週間…長く感じる…。
あれから預かった刀剣達も、少しづつ話してくれるようになった。
柚兄もだいぶ回復し、重症な部分は俺の札も使ったから、あとは軽い怪我の治りを待つだけ。
俺も風蝶に治癒術をしてもらい、だいぶ回復している。
そうそう。
あの虎君。
なんでも柚兄が軽い怪我なら治せる札を持ってたらしいんだけど、あの子はまだ軽傷だったし、数もいらなかったみたいで、少しでも五虎退や皆の怪我を治してくれて嬉しかったらしい。
俺も治したけど、最初が柚兄だったから、懐いたんだろう。
で、約一週間の今日、奏さんと九重さんがきている。
彼らも話さないといけないとわかってるからね。
ただ俺と柚兄は出来ればいてほしいとのこと。
もちろん俺らも同席するし、やな兄にも同席してもらう。
そしてその時近侍だった鶴と一緒にきた厚にも同席してもらう。
やな兄のところは国広。
「九重、もう大丈夫なのか?」
「はい!これでも元気と頑丈さがウリですから!」
「夕方には話を聞けるほど元気でしたよ」
『すげぇな九重さん』
「アオさんですね!改めまして、九重です!助けていただきありがとうございました!」
『いや俺なんもしてませんよ、九重さんを守ったのは柚兄と来派です』
「だとしても、結果的には助けていただきましたので!」
『やだまぶしいこの人俺日陰に居たい…』
「大将…」
「こほん…では、確認もありますから、お話を聞かせてもらえますか?」
奏さんが仕切り直しというように咳ばらいをすると、刀剣達の話を聞く。
「最初の審神者は、体も霊力も弱くて…でも俺らの主だから、俺らのペースでやってた」
「加州さんが始まりの一振りで、五虎退が初鍛刀なんだ」
「他の本丸をあまり知らないから、どうかはわからないけど、刀剣も増やしつつ、俺らなりに主を支えていたんだ」
「で、ですが…主様…体調が、悪化して…治療の専念のため、に、現世へと戻られ、ました…」
「引継ぎは、問題なく行われ、俺たちも二人目の主と何日か生活して…それから正式に引継ぎになったんだ」
「そう…今のところ、報告書通りですね。二人目の審神者に異変が現れたのは…?」
「…いつからかはわからない。だんだん体調がよくない日が続き、機嫌も悪い日が増えていった」
『機嫌も?』
「うん…怒りやすくなってた…」
「それで、暴力や、折られたりはされましたか…?」
「…うん…何振りも、折られたし、何度も殴られたよ…」
「加州が一番頑張ってくれてたんだ…始まりの、最初の一振りだからって」
「…っ」
『加州さん、辛いならまだ無理しなくていいんだよ』
「…ううん。このままじゃ、いけないのはわかってるし…」
「…では、続きをお願いします」
加州さんもみんなも辛そうだけど、加州さんの言うように、このままじゃいけないのは、皆分かってる。
五虎退さんと乱さんの傍に柚兄がいて、辛そうなときは頭を撫でていた。
「二人目の審神者がおかしくなって、だいたい三か月かな…こんのすけが姿を見せなくなったのは。それから少しして、担当官もきて、話してたけど、体調がよくないってことしかわからなくて…」
「その担当も、様子を見に来るようになってひと月くらいで殺された…そのあと、加州が…」
「…そう…お話ありがとうございます。発見、対処が遅れ、申し訳ありませんでした」
『…奏さん、今の話は報告書と同じ?』
「担当官の報告書までは、ですね」
「なぁ、いつもの担当官じゃない、調査にきた役員はいたか?」
「あ、はい、いま、した…」
「でも、こわくて…」
「…そいつらも、堕ちた加州に殺される可能性があったから、俺や大倶利伽羅、大和守で帰るように言ってたんだけど…」
「…あいつらはハナから俺たちを折るためにきていた。それで、何振りか折れた」
「…ここからが、違うんです。調査にきた役員の報告書と、例の役員の報告書」
「と言うと?」
「…問題なし、もしくは、対処済とあげていた?」
「厚の言うとおり。そう報告書に上がっていました。少なくともひと月は」
『…九重さんを行かせたことで判明?』
「いえ、担当官と連絡が取れなくなり、調査部門で調査、その報告書次第で、我々が動くという動きの予定でしたが…担当官が居なくなって、問題もないというのはおかしいとなり、以前からこちらで報告書や、調査部門の例の役員の調査などをしていたんです」
「そこにここさんが行った連絡が入り、緊急案件に…」
「奏姉さんや柚さんに相談する間もなく放り出されまして…」
『ちょっとその役員しばこうか、奏さんそいつどこ』
「大丈夫です。今頃神さんが私たちの分もしてるはずですから」
にっこり話す奏さん。
素敵、さすが!
「皆さんのお話は、直接私が上へ報告させてもらいますね。なので、安心してください。龍神様や刀剣男士様に誓って、必ずです」
『奏さんが悪さする人じゃないのは俺らが一番分かってる。まぁ信用できないなら他にも材料用意するから、安心して』
奏さんや俺もそういうと、彼らは少し安心したのか、肩の力が抜けた。
「実は、みなさんの審神者で、わかったことがありました。二人目の審神者は、何か呪具を使われていたみたいです」
「呪具?」
「はい。調べてもらったところ、あなた方刀剣を他に渡したくない、そんな怨念が込められていたんです」
「え…」
「そんな、誰が…」
『…まさか、最初の審神者…?』
「「「「「!!」」」」」
「…残念ながら、そうなります」
「ま、まって!なんで、あのひとが…」
「あ、主様は…いい、人だったのに…」
「私も報告を聞き不思議に思い、最初の審神者の家を調べました。ですが普通の一般家庭…違ったのは、体が弱かったこと。そして、妹が溺愛されていたこと」
「妹がいたのか」
「はい……その妹が、引継ぎ審神者でした」
つまり嫉妬から渡したくないと、本丸にかな、呪具を設置して壊れさせた?
『その兄妹?姉妹?は仲悪かったの?』
「そこまでは…ですが、近所の人の話では、仲のいい、姉思いのいい妹だとか、評判は良かったみたいです」
「で、でも…僕たち、引継ぎの人が妹って、聞いてなかったよっ」
「…表向きは仲良さそうだけど、蓋を開ければ、ってやつだね…」
『えーと、姉は、溺愛されてる妹に刀剣達を渡したくなくて、妹を壊す?ような呪具を設置したと?』
「おそらく…」
まさかそんなことがね…。
信じたくないだろう刀剣達は、唖然としていたり、泣きそうだったりだ。
少し休憩にしようと、厚と鶴にお茶のお代わりをお願いする。
『奏さん、少し休憩しよう。さすがに今の話は、皆にも辛いしね』
「…そうですね。休憩にしましょうか」
さぁ、クールダウンしようね。
あの泣いてる声、今ならハッキリわかる。
この堕ちた刀剣からするんだ。
悲しい、愛して、寂しい、守らないと、苦しい、助けて……──
いろんな想いが強く、聞こえる。
『君、俺の言葉わかるかい』
「ゔゔぅ」
『いや、なんとなくわかるくらいかな、意識ないと聞いてたけど、完全になくなってない…君から声が聞こえるからね』
俺に追いつき、太郎さん達が驚く。
「こいつからの声…?」と。
夢で見たのは、さっきのシーンか…こちらにやな兄が向かってきてるし。
ミサンガ渡しといてよかった。
虎を柚兄のそばに行かせ、鉄扇、龍華から花弁を出し、柚兄を中心に囲う。
『その花弁は、結界になってる。そこから出るなよ。太郎さん達も、すみませんが手だし無用で』
「アオ!やめろ!」
「アオっ…だめ、だ…」
『俺にしか、あの子は止められないから』
「だからって!」
『ところで、そちらの大和守さんは無事?』
「なんとかな…だが折れかけだ…あまり動かしたくないんだが…」
「…お、ねがい…」
大和守さんが、俺を見て何かを伝えようとしてる。
やな兄がゆっくり下ろし、横たえる。
その傍に寄り、耳を近づかせる。
「お願い…あいつを…たすけ…て……」
『……願って、あの子が助かるように。俺がなんとかするから』
「う、ん……」
絶対、助ける。
例え折れる結果だとしても、心を助けたい。
俺は再び、堕ちた刀剣と向かい合う。
攻撃してこなかったのは、戸惑ってたのかわからないが、その間に大和守さんの想いを聞けた。
なら応えれるように頑張るだけだ。
刀は抜かず、構えると、相手が獣のような咆哮をあげ向かってくる。
攻撃が鋭い…だがなんとかいなしながら、皆から離す。
出来れば、怪我をさせたくないんだ。
「なんで刀を……」
「………怪我をさせたくないんだろうな。あいつが聞こえてた声、あの堕ち神らしいからな」
「けどこのままじゃっ」
「すぐに加勢できるようにしとくぞ」
なんか聞こえるけど、邪魔はしないでほしいかな…と、何か嫌な気配を感じた俺は、堕ちた刀剣から距離を取り、上を見た。
『何……』
「!おいおい…なんで時間遡行軍が」
刀が降ってきたため、避けて様子を見ると、刀が形を変え、時間遡行軍になった。
『めんどいな……やな兄たち、そっちはお願い!』
仕方ねぇなっ!と聞こえたため、あっちを対処してくれるようだ。
俺は堕ちた刀剣と再び向かい合い、刀を(俺は鞘付きで)打ち合う。
『君は、いつまで泣いてるの』
『このままでいいの』
『君の相棒は君を助けてと、君が戻るの願ってるよ』
戦いながら言葉を伝える。
少し反応があり、時々鈍くなる剣筋。
まだ間に合う。
心はなくなってない。
「ゔゔ…ぁ…あ…」
『!』
「ぁ、ああ…た、す…け……」
『……それが、本心だね。ちょっと手荒なことするけど、耐えろよ』
俺はすばやく相手の足を引っ掛け倒し、上に乗る。
そして、しばらく使ってなかった治癒の力を使い、彼に流し込む。
「ガアアアアァァァアアア!」
『っ…耐えろっ…』
荒治療になるから、ほぼ堕ちてる彼にしたら、陽に値する治癒の力は、苦しいし痛いだろう。
でも耐えて…。
まだ不安定な中無理やり解放してるが…ゆっくり力を流しながら、魂に触れる…
俺が先にダメになるか、彼が持たないか……。
賭けではあるが、約束したから。
暴れるから俺にも小さい傷、噛み付いてきた傷、刀で刺された傷など増えていく。
でもやめない。
見つけた、君を。
そして魂に話しかける。
─『帰っておいで』─
─「だれ…」─
─『君の帰りを待ってるよ』─
─「あんたは………なんで、なんで……」─
─『君を助けてと、頼まれたから。あと、助けてと泣いてたから』─
─「俺が…?」─
─『君、強いんだね。剣の腕も、心も。だから、完全に堕ちなかった』─
─「……俺…守りたかったんだ、仲間を、相棒を……でも、傷つけた…もう、俺は……」─
─『間に合うよ、だから、俺がきた。帰ろう?』─
─「…………」─
─『助けれなかった刀剣もいるけど、数振りは、 助かる。君も含めだ』─
─「!…数振りでも、間に合う…?俺も…?」─
─『そう。君の場合は、君の心次第』─
─「……引き継ぎ審神者が、アンタなら、よかったのに………あんたの刀になら、なりたい…」─
─『なれるかはわからんけど、諦めず願ってよ、叶うかわからないとしても、願うだけは自由なんだし』─
─「………あんた、名前は…」─
─『君が戻ってきたら、教えてあげる。加州清光』─
そう話すと、俺は現実に、加州さんも元に戻り涙を流していた。
「っあ…おれ…」
『あぁ…大丈夫、致命傷じゃないから』
自分がつけた傷だとわかるんだろうね、俺の傷を見て、自分が痛そうな顔をして泣く。
よしよしと頭を撫でる。
そして周りを見渡せば、奏さんに奏さんの刀剣、やな兄の刀剣も居た。
時間遡行軍は皆がなんとかしてくれたみたいだ。
俺は加州さんを姫抱きすると、大和守さんの傍に下ろす。
風蝶が持ちこたえさせてくれたみたいだけど…。
「やす、さだ…」
「…ばか、きよ…みつ…」
「っごめ、ん…こめんっ…」
「だい、じょ、ぶ…わかってる…清光は、守り、たかった…みんなを…」
「でもっ…俺はっ…!」
「清、光…さい、ごまで…生きて、よ…ぜったい…」
微笑む大和守さん。
そして俺の方へ顔を向ける。
「や、くそく…ありが、とう……あと、また…」
『…うん、どうなるかは、まだわからないけど、なんとかするよ、俺の家族もいるから』
「よか、た…しし、お…たちも…おねが、い…」
そう言いながら微笑むと、大和守さんは静かに折れた。
皆、大きく泣いたり、静かに泣いたり…涙を見せないようにしていたりと、様々だった。
それから少しして、こんのすけが日誌のようなものや、閉じ込められてるここのこんのすけを見つけ、処理班を呼び、そちらは任せた。
「さて、残った刀剣男士達ですが、一度私預かりにしようと思います」
「「「「「…」」」」」
「…」
「話も聞かなくてはいけませんので…よろしいですか?」
『あー奏さん』
「はい?」
「彼ら、俺の本丸で預かっていい?」
「アオさん…」
『いやほんと勝手してすみませんし本当にすみませんが!
…俺の本丸は、俺の霊力がたまってますし、休息にも癒しにもなると思うんです』
「俺も賛成だ。柚を俺の本丸より、アオの本丸に任せたいと思ってる。俺も行くがな」
奏さんは悩んだ後、ため息をつき、苦笑する。
「私も貴方たちによわいわね」
『奏さん…!』
「会長、並びに代表にお話しします。なので、まずは一日預かって下さい。こういうときに権力を使ってもらう方がいいでしょうし」
「サンキュ、奏さん」
「いえ。では、私は九重のこともありますので、先に行きます」
そういうと、奏さんはゲートを潜り先に戻った。
俺らも俺の本丸へ戻り、先に柚兄を寝かせる。
そしてやな兄は、一度自分の本丸へ戻って行った。
このあと、戻った俺の刀剣達に心配されまくりました。
しばらくすると、ナナシがやってきて柚兄に点滴を。
怪我は俺の札である程度治ってたから、先に点滴をし、俺の状態を確認するとのこと。
あ、あの本丸の刀剣達は、別室で話をしてます。
加州さんも謝りたかったみたいだし。
別室で怪我を見てもらうと、驚かれた。
出血は酷いし軽い怪我も多いけど、大きな傷はそこまで酷くないらしい。
無意識に加州さんが手加減したんじゃないかとのこと。
「はぁー…ひやひやしたぜ…」
『ごめんて…我慢できんかった…』
「声が聞こえたんだろ?…仕方ないが、もう少し耐えてくれ…柳の部隊待つとか…」
『ごめんなさい…』
ナナシにも注意され、しょぼーんとなる俺。
と、そこに薬研が。
「旦那、大将、入るぞ」
「お、きたな。いいぞ」
『え、ナナシ?』
「失礼s………………大将…?」
はい、薬研は今俺の上半身(サラシ付き)を見て驚いてます。
その心は?
「…女人だったのか…?」
『そうなりますよね!ごめんね驚かせて!』
「薬研にも教えてなかったのかよ…」
『俺の性格知ってるでしょうがっ』
「あー…うん、そうだな、うん。ほら、驚かせれたし、成功だな、うん」
『適当!』
適当にナナシに返事された俺、悲しい…。
なんでも俺の治療を見せてなんとなくのやり方を見せようと思ったらしい。
「薬研、とりあえずお前みたいにバレるまでは、アオが女ということは伏せててくれ。女扱いもなしだ」
「あ、あぁ…それは、いいんだが…?」
「女とバレたときの反応を見てこいつ楽しんでるからな、今の薬研みたいに」
『まぁもともと男装も趣味だし』
「…なんか、ほんととんでもねぇお人のとこに顕現したな…」
「頑張れ」
俺は横になり、ナナシが薬研に教えながら治療される。
あ、部分麻酔はしてもらってます。
一通り治療が終わると、ナナシは薬研に俺の注意事項を説明するため、その場に薬研と残る。
俺は柚兄のとこへ向かうが、ちょうど来客の鈴の音が。
『このシステムどうにかできんかな…』
許可のところを押し、玄関へ向かうと、やな兄と国広、光忠さんがきた。
荷物持って。
『え、どしたのその多くも少なくもない荷物』
「しばらくこっち泊まるからな。お前も傷癒さないとだし、柚のこともあるしな」
『大丈夫なんに…』
「アオくん、その怪我で料理したりはダメだよ?ちゃんと治さないと」
「そうだぞ。あの刀剣達のこともある。向こうは歌仙も居るから、燭台切がしばらくこっちでお前たちの飯を作る」
『でも、大丈夫…?任務とかあるやろに…』
「問題ない。今回の不手際の役員のせいで刀剣も審神者も役員も、いろんな犠牲が出たしな。文句行ってくるなら黙らせるとよ、神楽たちが」
『あ、はい』
「てなわけで、奏さんから伝言。刀剣達をしばらくお願いします。彼らが大丈夫なとき、話をさせてください、だ」
さすが奏さん…許可が早い…。
まぁ……まだ仮の俺が出たのもあるからか…。
『じゃあ…光忠さん、すみませんが、しばらくお願いします』
「うん。任せて」
「俺は柚と国広と一緒に部屋を使わせてもらうぞ」
『うん、お願いします』
「お願いされました」
「世話になる」
『お世話されます…』
やな兄達を柚兄の部屋へ通し、皆に伝達。
そういえば、あの子虎。
柚兄の傍から離れないんだよね。
なんでだろ。
説明も点滴も終わると、ナナシは一度政府に行くらしい。
容態が悪化したらいつでも連絡入れろとのことだった。
さっそくお昼は光忠さんや小夜たちがやってくれて、美味しくいただく。
預かった刀剣達も一緒に食べれたらよかったんだけど、遠慮されたので、別々に…。
のんびりゆっくり過ごさせてもらう。
けどなんもしないというのは…こんなにソワソワするものだっけ?
しばらくバタバタやったから、感覚がおかしいや。
なので暇そうにしてる人と話したり、柚兄の様子見に行ったりとしていた。
そんな生活から約一週間…長く感じる…。
あれから預かった刀剣達も、少しづつ話してくれるようになった。
柚兄もだいぶ回復し、重症な部分は俺の札も使ったから、あとは軽い怪我の治りを待つだけ。
俺も風蝶に治癒術をしてもらい、だいぶ回復している。
そうそう。
あの虎君。
なんでも柚兄が軽い怪我なら治せる札を持ってたらしいんだけど、あの子はまだ軽傷だったし、数もいらなかったみたいで、少しでも五虎退や皆の怪我を治してくれて嬉しかったらしい。
俺も治したけど、最初が柚兄だったから、懐いたんだろう。
で、約一週間の今日、奏さんと九重さんがきている。
彼らも話さないといけないとわかってるからね。
ただ俺と柚兄は出来ればいてほしいとのこと。
もちろん俺らも同席するし、やな兄にも同席してもらう。
そしてその時近侍だった鶴と一緒にきた厚にも同席してもらう。
やな兄のところは国広。
「九重、もう大丈夫なのか?」
「はい!これでも元気と頑丈さがウリですから!」
「夕方には話を聞けるほど元気でしたよ」
『すげぇな九重さん』
「アオさんですね!改めまして、九重です!助けていただきありがとうございました!」
『いや俺なんもしてませんよ、九重さんを守ったのは柚兄と来派です』
「だとしても、結果的には助けていただきましたので!」
『やだまぶしいこの人俺日陰に居たい…』
「大将…」
「こほん…では、確認もありますから、お話を聞かせてもらえますか?」
奏さんが仕切り直しというように咳ばらいをすると、刀剣達の話を聞く。
「最初の審神者は、体も霊力も弱くて…でも俺らの主だから、俺らのペースでやってた」
「加州さんが始まりの一振りで、五虎退が初鍛刀なんだ」
「他の本丸をあまり知らないから、どうかはわからないけど、刀剣も増やしつつ、俺らなりに主を支えていたんだ」
「で、ですが…主様…体調が、悪化して…治療の専念のため、に、現世へと戻られ、ました…」
「引継ぎは、問題なく行われ、俺たちも二人目の主と何日か生活して…それから正式に引継ぎになったんだ」
「そう…今のところ、報告書通りですね。二人目の審神者に異変が現れたのは…?」
「…いつからかはわからない。だんだん体調がよくない日が続き、機嫌も悪い日が増えていった」
『機嫌も?』
「うん…怒りやすくなってた…」
「それで、暴力や、折られたりはされましたか…?」
「…うん…何振りも、折られたし、何度も殴られたよ…」
「加州が一番頑張ってくれてたんだ…始まりの、最初の一振りだからって」
「…っ」
『加州さん、辛いならまだ無理しなくていいんだよ』
「…ううん。このままじゃ、いけないのはわかってるし…」
「…では、続きをお願いします」
加州さんもみんなも辛そうだけど、加州さんの言うように、このままじゃいけないのは、皆分かってる。
五虎退さんと乱さんの傍に柚兄がいて、辛そうなときは頭を撫でていた。
「二人目の審神者がおかしくなって、だいたい三か月かな…こんのすけが姿を見せなくなったのは。それから少しして、担当官もきて、話してたけど、体調がよくないってことしかわからなくて…」
「その担当も、様子を見に来るようになってひと月くらいで殺された…そのあと、加州が…」
「…そう…お話ありがとうございます。発見、対処が遅れ、申し訳ありませんでした」
『…奏さん、今の話は報告書と同じ?』
「担当官の報告書までは、ですね」
「なぁ、いつもの担当官じゃない、調査にきた役員はいたか?」
「あ、はい、いま、した…」
「でも、こわくて…」
「…そいつらも、堕ちた加州に殺される可能性があったから、俺や大倶利伽羅、大和守で帰るように言ってたんだけど…」
「…あいつらはハナから俺たちを折るためにきていた。それで、何振りか折れた」
「…ここからが、違うんです。調査にきた役員の報告書と、例の役員の報告書」
「と言うと?」
「…問題なし、もしくは、対処済とあげていた?」
「厚の言うとおり。そう報告書に上がっていました。少なくともひと月は」
『…九重さんを行かせたことで判明?』
「いえ、担当官と連絡が取れなくなり、調査部門で調査、その報告書次第で、我々が動くという動きの予定でしたが…担当官が居なくなって、問題もないというのはおかしいとなり、以前からこちらで報告書や、調査部門の例の役員の調査などをしていたんです」
「そこにここさんが行った連絡が入り、緊急案件に…」
「奏姉さんや柚さんに相談する間もなく放り出されまして…」
『ちょっとその役員しばこうか、奏さんそいつどこ』
「大丈夫です。今頃神さんが私たちの分もしてるはずですから」
にっこり話す奏さん。
素敵、さすが!
「皆さんのお話は、直接私が上へ報告させてもらいますね。なので、安心してください。龍神様や刀剣男士様に誓って、必ずです」
『奏さんが悪さする人じゃないのは俺らが一番分かってる。まぁ信用できないなら他にも材料用意するから、安心して』
奏さんや俺もそういうと、彼らは少し安心したのか、肩の力が抜けた。
「実は、みなさんの審神者で、わかったことがありました。二人目の審神者は、何か呪具を使われていたみたいです」
「呪具?」
「はい。調べてもらったところ、あなた方刀剣を他に渡したくない、そんな怨念が込められていたんです」
「え…」
「そんな、誰が…」
『…まさか、最初の審神者…?』
「「「「「!!」」」」」
「…残念ながら、そうなります」
「ま、まって!なんで、あのひとが…」
「あ、主様は…いい、人だったのに…」
「私も報告を聞き不思議に思い、最初の審神者の家を調べました。ですが普通の一般家庭…違ったのは、体が弱かったこと。そして、妹が溺愛されていたこと」
「妹がいたのか」
「はい……その妹が、引継ぎ審神者でした」
つまり嫉妬から渡したくないと、本丸にかな、呪具を設置して壊れさせた?
『その兄妹?姉妹?は仲悪かったの?』
「そこまでは…ですが、近所の人の話では、仲のいい、姉思いのいい妹だとか、評判は良かったみたいです」
「で、でも…僕たち、引継ぎの人が妹って、聞いてなかったよっ」
「…表向きは仲良さそうだけど、蓋を開ければ、ってやつだね…」
『えーと、姉は、溺愛されてる妹に刀剣達を渡したくなくて、妹を壊す?ような呪具を設置したと?』
「おそらく…」
まさかそんなことがね…。
信じたくないだろう刀剣達は、唖然としていたり、泣きそうだったりだ。
少し休憩にしようと、厚と鶴にお茶のお代わりをお願いする。
『奏さん、少し休憩しよう。さすがに今の話は、皆にも辛いしね』
「…そうですね。休憩にしましょうか」
さぁ、クールダウンしようね。