龍神が審神者になる?
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ーー柚sideーー
二振りを送り出して、戦況を見守る中、陸奥守さんが中傷を負った。
その一瞬、アオの霊力が漏れ出したけど、真剣必殺に驚いてか、何とか治った…。
あのまま爆発してたら大変だったろうな…。
「お疲れ様です、陸奥守さん、薬研さん。じゃあアオ、手入れをしようか」
『手入れて、刀の手入れのポンポン?』
「その方法と、式神の方法を教えるね」
『ん。陸奥、歩けるか?』
「なんちゃあない」
「旦那、無理するな」
「そうだぜ、陸奥守。厚、小夜坊、アオ達と手入れ部屋の用意を頼めるかい」
「ほいきた!」
「わかりました…」
『鶴丸場所わかる?』
「何、薬研がいるしな」
「ああ、俺は自分で歩けるしな。大将達は先に向かってくれ」
『ん。わかった。辛かったら呼んでくれ』
鶴丸さんが陸奥守さんに肩を貸し、アオや俺らに先に行くよう言うと、俺は鶴丸さん達に軽く頭を下げ、手入れ部屋に行く。
『厚、小夜、お前達は神に俺の事何か聞いてるか?』
「あ、はい…」
「お二方も、ボクと同じくアオ様の事は神様より聞いております」
「大将の龍神としての力、治癒術がオレたちに効くか知りたいんだろ?」
『まあ他もあるけど、それについては?』
「使えますが、まだ皆に話さないのであれば…今は、使うべきではないと、思うよ…」
『ふむ…なるほろ。ちなみに、二人は元本丸で近侍とか内番とか、いろいろやってた?』
「そりゃな!神さんの元にいる時は、内番は訓練くらいしかなかったけど、元本丸ではいろいろやってたぜ」
『そか』
アオなりに何か考えているんだろう。
考え事しながら向かっていると、あっという間に手入れ部屋についた。
「陸奥守さん達まだだけど、説明しとくね。
ポンポンはアオもやる、風雅に教えてもらったあれなんだけど、刀剣男士の本体である刀を預かり、霊力を込めながらポンポンする。
メリットは、直接霊力を込めるから、その刀剣男士を強化できる」
「強化と言っても、オレらの調子が良くなるって意味な!」
『ふむ、デメリットは刀種によって時間が変わる、ってところ?』
「はい…ボク達短刀や脇差だと…怪我の度合いによるけど、数分から数十分くらいです…。けど、刀種が打刀や太刀など…大きくなると、時間もかかります…」
「だから、急いでる時や、折れる寸前状態の時は、あまりオススメしない。やるなら、時間もあって、中傷寄りの重傷まで。
それならその方法でも構わないよ」
『下手に霊力込めすぎると逆に折れるから、とか?』
「はい。この方法は霊力が多い方に勧めてはいるのですが、折れる寸前の刀剣男士様の手入れをした際、慌てすぎて霊力を込めすぎて、折れた事例があります」
『なるほど』
「アオさん理解早い!」
「アオ、準備できてるかい」
『あ、きた』
「じゃあやろうか、鶴丸さん、入ってきてください」
説明してる間に鶴丸さん達が手入れ部屋に到着し、中へ入ってもらう。
「こちらにある布団に陸奥守さんを。薬研さんも辛いようでしたら、もう一組の布団へ」
「いや、俺は大丈夫だ。ありがとな、柚の旦那」
そう指示すると、鶴丸さんはゆっくり陸奥守さんを座らせる。
座布団を小夜さんが用意してくれて、そこへ薬研さんが座る。
「じゃあ薬研さんをポンポンで、陸奥守さんをもう一つの手入れでやろうか。後者の方法は手順確認で、手伝い札使うからね」
「今回は、軽傷の短刀だとどれくらいかかるかの把握も兼ねております」
『わかった。なら先に陸奥をやろう。血とか平気だけど、見ていて辛いし、実際辛そうだしな』
「そうしてやってくれ」
「すまんのぉ…」
『もーまんたい。てか謝らない』
「では、こちらに資源がありますので、今回はこちらを使用していただきます」
「式神に頼むやり方は、鍛刀と同じだけど、違いは依頼札は必要ないってところ。式神に手入れを任せる時は、刀置きに本体を乗せると、手入れをしてくれる式神が出てきて、資源を使ってやってくれるよ」
『本体は審神者である俺が置けばいい?』
「いや、審神者が置けない場合もあるから、そこは誰でもいい。本丸に審神者の霊力が行き届いていれば問題ないから」
アオは『ふむふむ』と言いながら、陸奥守さんから本体を預かり、刀置きにゆっくり乗せる。
手入れをしてくれる式神が出てきて、資源を使い手入れを始める。
表示された時間はだいたい一時間半。
『あ、モニターにも表示された』
「はい、そちらにも表示されました時間が手入れの時間になります。今回はこちらの手伝い札を使いましょう」
こんのすけがアオへ手伝い札を渡すと、それを式神へ。
するとあっという間に手入れが完了した。
『おぉ。早い…陸奥、大丈夫?』
「あぁ、なんちゃあない!ありがとにゃあアオ!」
「うん、問題なさそうだね。それじゃ、次やろうか」
『ん。じゃあ薬研、待たせてごめん。手入れしようか』
「あぁ、大丈夫だぜ、大将。頼む」
薬研さんはアオへ本体を渡し、慣れた手つきでポンポンの準備をしていく。
準備が終わると、傍に用意していた道具で手入れを始める。
その様子を感心した様子で皆が見ている。
「アオ手慣れているな」
「ほぉじゃのぉ」
「主さんから聞いてたけど、ほんと手際いいね!」
『家族に教えてもらったし、自分のもやるしなぁ…薬研、違和感あれば我慢せず言ってくれ』
「そうだね。薬研さん、小さな違和感でもあればすぐに言ってくださいね」
「あぁ、けど何もないんだ。心地いいくらいだしな」
「アオ様は手慣れている分、手入れの作業がとても丁寧ですね」
『てか正直霊力をどれくらい込めればいいかわかんないんだよな…』
「あぁ… アオは感覚派だからね…今はどれくらい込めてるの?」
『んー…マッサージ感覚で軽く押さえてる感じ…?』
「マッサージ…」
「マッサージですか…」
「マッサージって…」
「まっさーじとはなんだ?」
小夜さんと乱さんがマッサージについて、鶴丸さんや陸奥守さん、薬研さんに説明している。
まさかマッサージ感覚とは…。
「大将…他に例えなかったのか?」
『んー……そうだなぁ…ポンポンに軽く水をつけてる感じか?』
「あー…まだそっちがわかる、かな…」
優しく、丁寧に進めるアオ。
霊力を込めながらだから、普通の刀の手入れより早い。
もう少ししたら終わるかな?
『あぁ、考えてたことがあるんだけど、今話して大丈夫か?』
「もちろん、どうしたの?」
『この本丸は、近侍と第一部隊隊長を別とする。で、近侍についてだけど、俺やみんなが慣れるまで、厚と小夜を近侍補佐に任命したい』
「僕たちを、ですか…?」
『二人の経験で俺らを支えてほしい。俺もわからないことだらけだし、慣れてきたら戦闘系審神者として活動しなきゃならないしな。政府にも居た経験がある二人は特に頼る事になるけど…』
手を休めず、視線も薬研さんの本体に向いてはいるけど、申し訳なさそうな表情で言うアオ。
厚さんと小夜さんは顔を見合わせると、厚さんはニッと、小夜さんは小さく笑う。
「大将、そんなに遠慮しなくていいぜ。オレも小夜も、大将や本丸のためになるならいくらでも力を貸すしな!」
「はい。頼ってもらえるのは、すごく、嬉しいです…」
『そか…ありがとう。陸奥達も、それでいいかい?』
「わしはもちろんえいよ」
「あぁ、心強い助っ人じゃないか」
「だな。俺らもわからん事は多いから、頼る事が増えるだろうしな。
今後のことを考えると、今のうちに厚達からいろいろ指南してもらう方がいいだろう」
『ありがとな』
安心したように笑うアオ。
手元の手入れはほとんど終わっている。
軽傷の薬研さん(短刀)だけど、こんなに早かったっけ…?
モニターを確認すると、ちょうど手入れが終了したようだった。
『よし、終わった。薬研、どう?』
「問題ない。今出陣しても敵大将の首を取れる気さえする」
『そんなにかい。まぁ出陣するかはこの後の予定によるんじゃないか?』
「そういや、柚。この後は何をするんだい?」
「そうですね。遠征は出陣と違い、難しいことはないので、各審神者のタイミングでやっていただきますし、アオは演練はしばらく免除ですから、内番についてですかね…ただ厚さんや小夜さんがいらっしゃるので、あまり意味はないと思いますが」
『てことは、一通りやった感じ?』
「だね。まぁ、後は柳という指導係にいろいろ聞くといいかな。現役審神者だしね」
「そういやぁ、柳はどこに…」
「ここに居たか」
『あ、国広』
「お帰りなさい、山姥切さん!」
「山姥切さん、お帰りなさい。柳と蛍丸は?」
「厨の隣の部屋だ。昼餉が出来たから呼びにきた」
『え、やな兄達お昼作ってくれてたん?』
「時間も微妙だったしな。昨日久々に主達の飯を食いたいと言っていただろう。柚はやることがあったからな」
「いくぞ」と言い、俺たちは山姥切さんについて行く。
「蛍丸には荷物持ちを頼んだんだが、俺と主で作るつもりだった昼餉を手伝ってくれてな。柚のとこでも手伝いしてるからか手慣れていたぞ」
「あ、ははは……」
前は俺が作って、それを手伝って貰ってたけど…疲れてるとそのままソファーで寝ちゃうし、仕事も遅くなることがあるからか、近侍じゃない刀剣が当番を決めて作る、って決まりができたんだよね……。
帰ったら蛍丸のお願い聞いてやろう……後みんなにお土産もだな。
厨の隣に、小さくもなく広くもない部屋がある。
大きめのテーブルに椅子があり、厨当番の作業やちょっとした休憩スペースになる場所だ。
そこに着くと、テーブルには人数分の食器があった。
柳は窓を開け、換気扇をつけ煙草を吸っていた。
「あ、主、アオさん。初出陣お疲れさまー」
『俺はまだ出陣したわけじゃないけどね。やな兄も蛍丸さんも国広も、お昼作ってくれてありがとう』
「ま、適当にな。手伝ってくれてる二人のリクエストだけど」
テーブルには大量のおにぎりがあった。
柳は煙草を灰皿に押し付けると、コンロの火を入れる。
「柳…灰皿どうしたの?」
「食料調達の際ついでに買ってきた。ここにきた時用に。アオ、後でお前の部屋にも一つ置いといてくれ」
『おけー。おにぎりいっぱいだな』
「俺が手軽に食べれそうな握り飯を提案した。蛍丸は豚汁だ」
「美味そうだなー」
「豚汁も野菜いっぱいだしね!」
「ほら、お前ら刀置くなりしろ。飲み物は緑茶用意してるが、冷たいのがよかったら氷入れてくれ」
「具材はなんですか…?」
「塩だけ、梅、ツナマヨ、昆布、焼肉風、オムライス風、おかか…後だし巻き卵もある」
『おおう、豪華…』
「主さんのオムライス!」
「オムライス風だけどな」
温め直した豚汁をお椀に入れ、それをテーブルに置く山姥切さんを手伝う。
蛍丸は湯呑みに緑茶を入れていく。
アオの指示で、みんな近くに本体を置いたり、羽織などを置いたりしている。
みんなが椅子に座ると、アオが手を合わせる。
『手短に。やな兄達ありがとう。陸奥と薬研はお疲れさん。いただきます』
アオの掛け声の後、みんなでいただきますを言うと、おにぎりに手を伸ばし食べ出す。
こんのすけはお稲荷さんを食べている。
さすが柳…。
「美味い!」
「おいしーねー」
「豚汁も美味いぞ」
「柳の旦那は料理が上手いんだな」
「実家でも手伝ってたし、審神者なりたては俺が料理してたしな」
「神さんの作るだし巻きと違いますね…」
「俺は風華達に教わったしなぁ… アオもこれくらいの味付けじゃねぇか?」
『やな兄のおにぎりにだし巻きに豚汁…うまぁ…』
「聞いてないね、これは」
柳の料理の美味しさにふにゃふにゃの顔をしているアオ。
昨日も見たけど、やっぱり美味しそうに、嬉しそうに食べてるアオを見ると安心するなぁ。
それぞれ豚汁もおかわりし、おにぎりもだし巻きも、全部の料理がなくなると、緑茶で一息つく。
柳は煙草吸ってるけど。
この後の予定を柳に話すと、何やら考えている。
「どうしたの?柳」
「あーほら、アオの刀剣に風呂の入り方を教えたり、万屋街教えたりとしないとな、って」
「あぁ…それで人選が乱さんか」
「まぁな」
「なら、人の感覚を教えたりできる乱さんと、厚さんと小夜さんを除く三人は今から風呂。俺たちは片付けと、畑の確認。で、その後万屋街でどう?俺は畑の確認したら政府戻らないといけないけど」
「あぁ…ん、了解。乱、まんばから端末借りて、風呂場の確認頼む」
「はーい!じゃあ山姥切さん、端末借りるね!」
『乱さん場所わかる?』
「大丈夫だよ!最初の本丸の作りはだいたい同じだからね!」
『そっか、ありがとう』
山姥切さんから借りた端末を持って、乱さんは風呂場へ向かう。
使った食器を流しに運ぶと、アオと小夜さん、厚さんが洗い始める。
「陸奥守達は洗い方とか、食器棚の確認とかしとけよ。これからはお前達がやるんだしな」
「わかっちゅうよ!」
「これくらいの大きさだと、三人くらいでやる方がいいな」
「そうだな、一人が洗い、一人が流し、一人が拭く。もう一人いるなら、食器棚に戻すという流作業がいいだろうな。小夜助、拭いたら俺が仕舞おう」
「ありがとうございます…」
薬研さんが拭いた食器を棚に戻し、鶴丸さんと陸奥守さんはアオ達の洗い方などを見学。
窓と換気扇の近くで、柳が煙草を吸っている。
「主、国行から連絡きたよ。厚が訓練から帰宅したって」
「あ、ほんとだ。俺の方にも連絡きてた」
「主のことだから、アオの研修中は音を出さないようにしてるだろうって、国行が俺の方にも連絡したみたいだね」
「あはは…よくお分かりで…」
「柚、政府戻ったら仕事か?」
「うん。書類仕事だね、ちょっと溜まってる感じで」
「ならこっちは大丈夫だから、戻っていいぞ?こんのすけもまんばも乱もいるしな」
「んー…それもそうだね……じゃあ任せるね」
「おう」
「アオ、俺と蛍丸は政府に戻るね。ここは柳たちに任せるから」
『あ、マジか。柚兄ありがとう。これからもよろしく』
ちょうど片付けが終わったみたいで、アオがそばにくる。
すると、ぎゅーと抱きついてきた。
俺は笑いながら頭を撫でてやる。
「些細なことでも、関係ないことでも何でもいい。連絡してきなよ。
これからはすぐに会えるんだしね」
『ん。ありがと、柚兄。ちゃんと布団で休んで、ちゃんとご飯食べてよ。蛍丸さん、みんなで見張りお願いね』
「任せて、アオ」
「酷くないか…」
「事実だろ」
苦笑しながらも、アオを離し、蛍丸と玄関へ。
アオと柳とこんのすけが見送りに来てくれた。
「こんのすけ、アオを頼むよ」
「はい、お任せください」
「あ、柚。四月のゆっくり休める日わかったら連絡しろよ。恒例行事すっから」
「あぁ、わかってるよ」
『恒例行事?』
「お前は今年からな」
『??』
それじゃ、と言い、俺と蛍丸は政府へゲートを繋げる。
ゲートを抜けると、奏さんが居て驚いた。
「え、奏さん。どうしたんですか?」
「お帰りなさい、柚。あなたを待ってたんです」
「?何か急用な案件でも入りました?」
「急用ではないですが…少し心配でしたので」
「あ、アオのこと?」
「はい…部署に戻りながら話しましょうか」
歩き出した奏さんについていくと、難しいような顔をしていた。
「新人だから心配、というだけじゃなさそうだよね」
「…アオさんは、霊力では戦闘系の条件をクリアしています。体力や運動面も、柳や山姥切さんと手合わせ出来るくらいですから、おそらくクリアでしょう。
…ですが、時間圧に耐えれるかはまだ分かっていません」
「あぁ、なるほど…確かにそこはまだ分かっていませんね」
「はい…なので、登録を候補者としての登録にしてます。代表は登録していいと言ってましたが、もしものこともありますし…それに、登録してしまえば、情報として他の役員にも連絡が回ります。
審神者を始めたばかりのアオさんの噂が出回れば、負担が大きくなると思いますので…」
「ですね…昨日始めたばかりなのに、不安や心配を与えることは、俺としても嫌ですし…教育係が柳ということは、もう知られてますか?」
「今のところはまだですが、時間の問題でしょうね。
柳が見習い受け入れ…教育係になったと知れ渡れば、アオさんが戦闘系審神者である証明にもなります…少しでも負担にならないよう、こちらで時間稼ぎをするしかないです」
部署に到着すると、奏さんは自分のデスクへ、俺も俺のデスクに座る。
パソコンを立ち上げ、書類と睨めっこを始める。
「…急がないとな…」
プライベート用のスマホを取り出し、神や神楽、奏さんへ送るメールを作成しながら、仕事を始めた。
二振りを送り出して、戦況を見守る中、陸奥守さんが中傷を負った。
その一瞬、アオの霊力が漏れ出したけど、真剣必殺に驚いてか、何とか治った…。
あのまま爆発してたら大変だったろうな…。
「お疲れ様です、陸奥守さん、薬研さん。じゃあアオ、手入れをしようか」
『手入れて、刀の手入れのポンポン?』
「その方法と、式神の方法を教えるね」
『ん。陸奥、歩けるか?』
「なんちゃあない」
「旦那、無理するな」
「そうだぜ、陸奥守。厚、小夜坊、アオ達と手入れ部屋の用意を頼めるかい」
「ほいきた!」
「わかりました…」
『鶴丸場所わかる?』
「何、薬研がいるしな」
「ああ、俺は自分で歩けるしな。大将達は先に向かってくれ」
『ん。わかった。辛かったら呼んでくれ』
鶴丸さんが陸奥守さんに肩を貸し、アオや俺らに先に行くよう言うと、俺は鶴丸さん達に軽く頭を下げ、手入れ部屋に行く。
『厚、小夜、お前達は神に俺の事何か聞いてるか?』
「あ、はい…」
「お二方も、ボクと同じくアオ様の事は神様より聞いております」
「大将の龍神としての力、治癒術がオレたちに効くか知りたいんだろ?」
『まあ他もあるけど、それについては?』
「使えますが、まだ皆に話さないのであれば…今は、使うべきではないと、思うよ…」
『ふむ…なるほろ。ちなみに、二人は元本丸で近侍とか内番とか、いろいろやってた?』
「そりゃな!神さんの元にいる時は、内番は訓練くらいしかなかったけど、元本丸ではいろいろやってたぜ」
『そか』
アオなりに何か考えているんだろう。
考え事しながら向かっていると、あっという間に手入れ部屋についた。
「陸奥守さん達まだだけど、説明しとくね。
ポンポンはアオもやる、風雅に教えてもらったあれなんだけど、刀剣男士の本体である刀を預かり、霊力を込めながらポンポンする。
メリットは、直接霊力を込めるから、その刀剣男士を強化できる」
「強化と言っても、オレらの調子が良くなるって意味な!」
『ふむ、デメリットは刀種によって時間が変わる、ってところ?』
「はい…ボク達短刀や脇差だと…怪我の度合いによるけど、数分から数十分くらいです…。けど、刀種が打刀や太刀など…大きくなると、時間もかかります…」
「だから、急いでる時や、折れる寸前状態の時は、あまりオススメしない。やるなら、時間もあって、中傷寄りの重傷まで。
それならその方法でも構わないよ」
『下手に霊力込めすぎると逆に折れるから、とか?』
「はい。この方法は霊力が多い方に勧めてはいるのですが、折れる寸前の刀剣男士様の手入れをした際、慌てすぎて霊力を込めすぎて、折れた事例があります」
『なるほど』
「アオさん理解早い!」
「アオ、準備できてるかい」
『あ、きた』
「じゃあやろうか、鶴丸さん、入ってきてください」
説明してる間に鶴丸さん達が手入れ部屋に到着し、中へ入ってもらう。
「こちらにある布団に陸奥守さんを。薬研さんも辛いようでしたら、もう一組の布団へ」
「いや、俺は大丈夫だ。ありがとな、柚の旦那」
そう指示すると、鶴丸さんはゆっくり陸奥守さんを座らせる。
座布団を小夜さんが用意してくれて、そこへ薬研さんが座る。
「じゃあ薬研さんをポンポンで、陸奥守さんをもう一つの手入れでやろうか。後者の方法は手順確認で、手伝い札使うからね」
「今回は、軽傷の短刀だとどれくらいかかるかの把握も兼ねております」
『わかった。なら先に陸奥をやろう。血とか平気だけど、見ていて辛いし、実際辛そうだしな』
「そうしてやってくれ」
「すまんのぉ…」
『もーまんたい。てか謝らない』
「では、こちらに資源がありますので、今回はこちらを使用していただきます」
「式神に頼むやり方は、鍛刀と同じだけど、違いは依頼札は必要ないってところ。式神に手入れを任せる時は、刀置きに本体を乗せると、手入れをしてくれる式神が出てきて、資源を使ってやってくれるよ」
『本体は審神者である俺が置けばいい?』
「いや、審神者が置けない場合もあるから、そこは誰でもいい。本丸に審神者の霊力が行き届いていれば問題ないから」
アオは『ふむふむ』と言いながら、陸奥守さんから本体を預かり、刀置きにゆっくり乗せる。
手入れをしてくれる式神が出てきて、資源を使い手入れを始める。
表示された時間はだいたい一時間半。
『あ、モニターにも表示された』
「はい、そちらにも表示されました時間が手入れの時間になります。今回はこちらの手伝い札を使いましょう」
こんのすけがアオへ手伝い札を渡すと、それを式神へ。
するとあっという間に手入れが完了した。
『おぉ。早い…陸奥、大丈夫?』
「あぁ、なんちゃあない!ありがとにゃあアオ!」
「うん、問題なさそうだね。それじゃ、次やろうか」
『ん。じゃあ薬研、待たせてごめん。手入れしようか』
「あぁ、大丈夫だぜ、大将。頼む」
薬研さんはアオへ本体を渡し、慣れた手つきでポンポンの準備をしていく。
準備が終わると、傍に用意していた道具で手入れを始める。
その様子を感心した様子で皆が見ている。
「アオ手慣れているな」
「ほぉじゃのぉ」
「主さんから聞いてたけど、ほんと手際いいね!」
『家族に教えてもらったし、自分のもやるしなぁ…薬研、違和感あれば我慢せず言ってくれ』
「そうだね。薬研さん、小さな違和感でもあればすぐに言ってくださいね」
「あぁ、けど何もないんだ。心地いいくらいだしな」
「アオ様は手慣れている分、手入れの作業がとても丁寧ですね」
『てか正直霊力をどれくらい込めればいいかわかんないんだよな…』
「あぁ… アオは感覚派だからね…今はどれくらい込めてるの?」
『んー…マッサージ感覚で軽く押さえてる感じ…?』
「マッサージ…」
「マッサージですか…」
「マッサージって…」
「まっさーじとはなんだ?」
小夜さんと乱さんがマッサージについて、鶴丸さんや陸奥守さん、薬研さんに説明している。
まさかマッサージ感覚とは…。
「大将…他に例えなかったのか?」
『んー……そうだなぁ…ポンポンに軽く水をつけてる感じか?』
「あー…まだそっちがわかる、かな…」
優しく、丁寧に進めるアオ。
霊力を込めながらだから、普通の刀の手入れより早い。
もう少ししたら終わるかな?
『あぁ、考えてたことがあるんだけど、今話して大丈夫か?』
「もちろん、どうしたの?」
『この本丸は、近侍と第一部隊隊長を別とする。で、近侍についてだけど、俺やみんなが慣れるまで、厚と小夜を近侍補佐に任命したい』
「僕たちを、ですか…?」
『二人の経験で俺らを支えてほしい。俺もわからないことだらけだし、慣れてきたら戦闘系審神者として活動しなきゃならないしな。政府にも居た経験がある二人は特に頼る事になるけど…』
手を休めず、視線も薬研さんの本体に向いてはいるけど、申し訳なさそうな表情で言うアオ。
厚さんと小夜さんは顔を見合わせると、厚さんはニッと、小夜さんは小さく笑う。
「大将、そんなに遠慮しなくていいぜ。オレも小夜も、大将や本丸のためになるならいくらでも力を貸すしな!」
「はい。頼ってもらえるのは、すごく、嬉しいです…」
『そか…ありがとう。陸奥達も、それでいいかい?』
「わしはもちろんえいよ」
「あぁ、心強い助っ人じゃないか」
「だな。俺らもわからん事は多いから、頼る事が増えるだろうしな。
今後のことを考えると、今のうちに厚達からいろいろ指南してもらう方がいいだろう」
『ありがとな』
安心したように笑うアオ。
手元の手入れはほとんど終わっている。
軽傷の薬研さん(短刀)だけど、こんなに早かったっけ…?
モニターを確認すると、ちょうど手入れが終了したようだった。
『よし、終わった。薬研、どう?』
「問題ない。今出陣しても敵大将の首を取れる気さえする」
『そんなにかい。まぁ出陣するかはこの後の予定によるんじゃないか?』
「そういや、柚。この後は何をするんだい?」
「そうですね。遠征は出陣と違い、難しいことはないので、各審神者のタイミングでやっていただきますし、アオは演練はしばらく免除ですから、内番についてですかね…ただ厚さんや小夜さんがいらっしゃるので、あまり意味はないと思いますが」
『てことは、一通りやった感じ?』
「だね。まぁ、後は柳という指導係にいろいろ聞くといいかな。現役審神者だしね」
「そういやぁ、柳はどこに…」
「ここに居たか」
『あ、国広』
「お帰りなさい、山姥切さん!」
「山姥切さん、お帰りなさい。柳と蛍丸は?」
「厨の隣の部屋だ。昼餉が出来たから呼びにきた」
『え、やな兄達お昼作ってくれてたん?』
「時間も微妙だったしな。昨日久々に主達の飯を食いたいと言っていただろう。柚はやることがあったからな」
「いくぞ」と言い、俺たちは山姥切さんについて行く。
「蛍丸には荷物持ちを頼んだんだが、俺と主で作るつもりだった昼餉を手伝ってくれてな。柚のとこでも手伝いしてるからか手慣れていたぞ」
「あ、ははは……」
前は俺が作って、それを手伝って貰ってたけど…疲れてるとそのままソファーで寝ちゃうし、仕事も遅くなることがあるからか、近侍じゃない刀剣が当番を決めて作る、って決まりができたんだよね……。
帰ったら蛍丸のお願い聞いてやろう……後みんなにお土産もだな。
厨の隣に、小さくもなく広くもない部屋がある。
大きめのテーブルに椅子があり、厨当番の作業やちょっとした休憩スペースになる場所だ。
そこに着くと、テーブルには人数分の食器があった。
柳は窓を開け、換気扇をつけ煙草を吸っていた。
「あ、主、アオさん。初出陣お疲れさまー」
『俺はまだ出陣したわけじゃないけどね。やな兄も蛍丸さんも国広も、お昼作ってくれてありがとう』
「ま、適当にな。手伝ってくれてる二人のリクエストだけど」
テーブルには大量のおにぎりがあった。
柳は煙草を灰皿に押し付けると、コンロの火を入れる。
「柳…灰皿どうしたの?」
「食料調達の際ついでに買ってきた。ここにきた時用に。アオ、後でお前の部屋にも一つ置いといてくれ」
『おけー。おにぎりいっぱいだな』
「俺が手軽に食べれそうな握り飯を提案した。蛍丸は豚汁だ」
「美味そうだなー」
「豚汁も野菜いっぱいだしね!」
「ほら、お前ら刀置くなりしろ。飲み物は緑茶用意してるが、冷たいのがよかったら氷入れてくれ」
「具材はなんですか…?」
「塩だけ、梅、ツナマヨ、昆布、焼肉風、オムライス風、おかか…後だし巻き卵もある」
『おおう、豪華…』
「主さんのオムライス!」
「オムライス風だけどな」
温め直した豚汁をお椀に入れ、それをテーブルに置く山姥切さんを手伝う。
蛍丸は湯呑みに緑茶を入れていく。
アオの指示で、みんな近くに本体を置いたり、羽織などを置いたりしている。
みんなが椅子に座ると、アオが手を合わせる。
『手短に。やな兄達ありがとう。陸奥と薬研はお疲れさん。いただきます』
アオの掛け声の後、みんなでいただきますを言うと、おにぎりに手を伸ばし食べ出す。
こんのすけはお稲荷さんを食べている。
さすが柳…。
「美味い!」
「おいしーねー」
「豚汁も美味いぞ」
「柳の旦那は料理が上手いんだな」
「実家でも手伝ってたし、審神者なりたては俺が料理してたしな」
「神さんの作るだし巻きと違いますね…」
「俺は風華達に教わったしなぁ… アオもこれくらいの味付けじゃねぇか?」
『やな兄のおにぎりにだし巻きに豚汁…うまぁ…』
「聞いてないね、これは」
柳の料理の美味しさにふにゃふにゃの顔をしているアオ。
昨日も見たけど、やっぱり美味しそうに、嬉しそうに食べてるアオを見ると安心するなぁ。
それぞれ豚汁もおかわりし、おにぎりもだし巻きも、全部の料理がなくなると、緑茶で一息つく。
柳は煙草吸ってるけど。
この後の予定を柳に話すと、何やら考えている。
「どうしたの?柳」
「あーほら、アオの刀剣に風呂の入り方を教えたり、万屋街教えたりとしないとな、って」
「あぁ…それで人選が乱さんか」
「まぁな」
「なら、人の感覚を教えたりできる乱さんと、厚さんと小夜さんを除く三人は今から風呂。俺たちは片付けと、畑の確認。で、その後万屋街でどう?俺は畑の確認したら政府戻らないといけないけど」
「あぁ…ん、了解。乱、まんばから端末借りて、風呂場の確認頼む」
「はーい!じゃあ山姥切さん、端末借りるね!」
『乱さん場所わかる?』
「大丈夫だよ!最初の本丸の作りはだいたい同じだからね!」
『そっか、ありがとう』
山姥切さんから借りた端末を持って、乱さんは風呂場へ向かう。
使った食器を流しに運ぶと、アオと小夜さん、厚さんが洗い始める。
「陸奥守達は洗い方とか、食器棚の確認とかしとけよ。これからはお前達がやるんだしな」
「わかっちゅうよ!」
「これくらいの大きさだと、三人くらいでやる方がいいな」
「そうだな、一人が洗い、一人が流し、一人が拭く。もう一人いるなら、食器棚に戻すという流作業がいいだろうな。小夜助、拭いたら俺が仕舞おう」
「ありがとうございます…」
薬研さんが拭いた食器を棚に戻し、鶴丸さんと陸奥守さんはアオ達の洗い方などを見学。
窓と換気扇の近くで、柳が煙草を吸っている。
「主、国行から連絡きたよ。厚が訓練から帰宅したって」
「あ、ほんとだ。俺の方にも連絡きてた」
「主のことだから、アオの研修中は音を出さないようにしてるだろうって、国行が俺の方にも連絡したみたいだね」
「あはは…よくお分かりで…」
「柚、政府戻ったら仕事か?」
「うん。書類仕事だね、ちょっと溜まってる感じで」
「ならこっちは大丈夫だから、戻っていいぞ?こんのすけもまんばも乱もいるしな」
「んー…それもそうだね……じゃあ任せるね」
「おう」
「アオ、俺と蛍丸は政府に戻るね。ここは柳たちに任せるから」
『あ、マジか。柚兄ありがとう。これからもよろしく』
ちょうど片付けが終わったみたいで、アオがそばにくる。
すると、ぎゅーと抱きついてきた。
俺は笑いながら頭を撫でてやる。
「些細なことでも、関係ないことでも何でもいい。連絡してきなよ。
これからはすぐに会えるんだしね」
『ん。ありがと、柚兄。ちゃんと布団で休んで、ちゃんとご飯食べてよ。蛍丸さん、みんなで見張りお願いね』
「任せて、アオ」
「酷くないか…」
「事実だろ」
苦笑しながらも、アオを離し、蛍丸と玄関へ。
アオと柳とこんのすけが見送りに来てくれた。
「こんのすけ、アオを頼むよ」
「はい、お任せください」
「あ、柚。四月のゆっくり休める日わかったら連絡しろよ。恒例行事すっから」
「あぁ、わかってるよ」
『恒例行事?』
「お前は今年からな」
『??』
それじゃ、と言い、俺と蛍丸は政府へゲートを繋げる。
ゲートを抜けると、奏さんが居て驚いた。
「え、奏さん。どうしたんですか?」
「お帰りなさい、柚。あなたを待ってたんです」
「?何か急用な案件でも入りました?」
「急用ではないですが…少し心配でしたので」
「あ、アオのこと?」
「はい…部署に戻りながら話しましょうか」
歩き出した奏さんについていくと、難しいような顔をしていた。
「新人だから心配、というだけじゃなさそうだよね」
「…アオさんは、霊力では戦闘系の条件をクリアしています。体力や運動面も、柳や山姥切さんと手合わせ出来るくらいですから、おそらくクリアでしょう。
…ですが、時間圧に耐えれるかはまだ分かっていません」
「あぁ、なるほど…確かにそこはまだ分かっていませんね」
「はい…なので、登録を候補者としての登録にしてます。代表は登録していいと言ってましたが、もしものこともありますし…それに、登録してしまえば、情報として他の役員にも連絡が回ります。
審神者を始めたばかりのアオさんの噂が出回れば、負担が大きくなると思いますので…」
「ですね…昨日始めたばかりなのに、不安や心配を与えることは、俺としても嫌ですし…教育係が柳ということは、もう知られてますか?」
「今のところはまだですが、時間の問題でしょうね。
柳が見習い受け入れ…教育係になったと知れ渡れば、アオさんが戦闘系審神者である証明にもなります…少しでも負担にならないよう、こちらで時間稼ぎをするしかないです」
部署に到着すると、奏さんは自分のデスクへ、俺も俺のデスクに座る。
パソコンを立ち上げ、書類と睨めっこを始める。
「…急がないとな…」
プライベート用のスマホを取り出し、神や神楽、奏さんへ送るメールを作成しながら、仕事を始めた。