龍神が審神者になる?
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――神side――
「さて…お前ら適当に座れ」
「神さん、主さん達だけで大丈夫なの?」
「問題ない。何かあっても柳とアオがいるからな。それに、柚と柳は有名だしな。喧嘩売られたりはしないだろ」
「へぇ、あの二人有名なのか」
「金髪の双子が揃って戦闘系の部署にいるからな。まあ目立ってな」
刀剣達が椅子に座ると、ちょうどノックの音がした。
「入れ」と言えば、二振りの短刀が来た。
「遅くなってすまない、神」
「すみません…」
「大丈夫だ。こいつらの主達に買い出し頼んだしな」
「厚に小夜?」
「……神、あいつらを買い出しに行かせて、俺たちに何か話があるんじゃないか」
「あぁ、確認したいこともあってな。とりあえず二人も座りな」
厚と小夜も席に座り、俺は新しい煙草に火をつけながら席に座る。
「確認したいこと、とは?」
「今ここに、共通点のある刀剣が集まってる。まあ、明石と愛染はいないが。わかるか?」
「…元本丸の仲間…ですね…」
「あぁ、そうだ。山姥切、厚、小夜、愛染、明石、蛍丸。この六振り以外、15年前に折れた。…が、少なくとも、今ここにいるメンバーは、あの日、折れるまでの記憶を思い出してる。
そうだな?乱、陸奥守、薬研、鶴丸」
紫煙を吐き出しながら、四振りを見ると、驚いた顔、困った顔と、様々だった。
「…顕現したては、分からなかったさ。だが、アオの霊力は、懐かしい感じがした」
「そうじゃのう…一晩寝たからか、霊力が馴染んだのか、よぉわからんけんど…起きたら思い出しちょった」
「え、と…ボクもそんな感じ…あと、主さんと柚さんを初めて見たとき、懐かしいって思った」
「確かに。柳と柚が五つのときまでは、一緒に暮らしてたからな…二人を見て、見覚えがあるような…って感じだったぜ」
「ボク達の本丸は、全員、ってわけじゃないけど…何振りかはボクと同じなんだ…でも山姥切さんの話を聞いてたから、主さんにも柚さんにもアオさんにも黙っておこう、て…」
「…そうか。お前たちは、元本丸の刀剣ってわかるのか?」
「俺たち六振りは、なんとなく、だな。乱含め何振りかもわかるようになってきたらしい」
「ボクたちもなんとなくなんだけどね…」
山姥切、厚、小夜、愛染、明石、蛍丸。
この六振りは、15年前、本丸の襲撃にあった際、当時の主と、主の子供を連れ、何とか現世に逃げ切れた。
だが追手によってもう無理だ、と思った時、俺らが見つけ、追手を倒し、保護した。
当時のこいつらの主と俺らは、面識ないはずだったが、大昔の知り合いと判明。
更にお腹に子を身籠っていて、もう生まれるという状態…急ぎ屋敷に戻り、手当や出産とばたばたとし、なんとか子は生まれた。
が…こいつらの主はもう長くないと分かっていた。
だから最後の願いを言い、その願いを、六振りは守っている。
幸い、命はなんとか助かったが、それ以来昏睡状態…俺の家族、ナナシが匿い、今も治療をしている。
「山姥切、お前んとこの記憶持ちの奴には話してるんだな?」
「あぁ。あいつの願いもあったし、話しておこうと思った。そう思ったのも、乱が思い出して、主に確認しようとしたからだ」
「…思い出したとき、悲しさも辛さも、嬉しさもあった…あの時、主さんはまだ子供だったけど、どうなったか聞きたくて……でも、山姥切さんの話を聞いてやめたの。ならボクは、前の主さんの願いを守って、今の主さんを守るって決めた」
「なるほど…柳が今も思い出さずに済んでるのはお前たちのおかげか」
「俺らは国行と国俊だけだから、誰にも話してないよ」
「だろうな。ま、もし今後蛍丸達が説明するとなると、柚が今後鍛刀した時にくる刀剣次第だろうな」
「山姥切、あの後…どうなったんじゃ?わしらにも教えとうせ」
山姥切と蛍丸、厚と小夜は、あの日のことを話し出した。
陸奥守、薬研、鶴丸は真剣に聞いていた。
俺?煙草吸って聞いてますが何か?
「…そうか、そんなことが…」
「すまない、お前たちは俺たちを逃がしてくれたのに、あいつを守れず…」
「山姥切の旦那、あんた達が謝ることはない。意識不明とはいえ、あのお人は生きてるんだろ?それに、あのお人の子らは生きてるんだ」
「そうじゃ。今のわしらはあの子を守らにゃいかん」
「あぁ、あの人の願いもそうだ。どういうわけか、記憶を持ったまままた顕現できたんだ。あの子のためになろう」
「柳と柚の記憶は、封印してあるが、両親については、事故で亡くなってると伝えてある。アオは封印してないが、同様に伝えてある。
お前たちも、アオや柳、柚には言うなよ。いつか自分たちで思い出すまでは」
「わかった」
「あと過保護になりすぎないように。とくにアオに対してな」
「神さん…神さんも神楽さんも、過保護だと思うよ…」
「まあ否定はしねぇよ。あいつの負担にならない程度なら大丈夫だろ」
「にしても…前の本丸の奴が、柳とアオの刀剣として顕現するとはなー」
「あー…その辺はよくわかんねぇけど、思い当たることなら」
紫煙を吐きながらそういえば、なんだなんだとこちらを向く刀剣ら。
いや、ほんとによくわかんねえけどな。
「柳、柚、アオの霊力。あいつの子供だから当たり前だけど、似てんだよ、あいつに。一番似てるのはアオなんだけどな。次に柳だ」
「あれ、柚さんは?」
「柚も似てるが、あの二人が一番似てるんだよ。柚はガキの頃、今よりも体弱かったからな、不安定だったんだ。今はだいぶ安定してるがな」
「つまり、前の主に似た霊力に引き寄せられた、ってことか?」
「たぶんだからわかんねぇぞ。偶然あいつらの元に顕現して、あいつらの霊力が馴染んで、似てる霊力に反応して、奇跡的に思い出したってだけかもしれねぇし」
「なるほどな…にしても、神、だったか。なぜ俺らが記憶を思い出してると分かったんだ?」
「あー勘だな」
「勘…」
「あぁ、今日アオを呼んだのは、厚と小夜のことで呼んだんだけど、受付が柚に皆が来たことを知らせ、俺にも連絡がきた。
で、モニターでエレベーターや、降りた場所の映像を見てたんだが、違和感があってな」
「あ、ボクも思った」
「あぁ…なるほどな」
乱と山姥切は分かってるみたいだが、三振りはよくわかってないようだった。
「薬研は懐に居たが、陸奥守や鶴丸は、初めてエレベーターに乗るのに、静かだった。緊張してる静かさってより、慣れてる静かさだったんでな。あと、柳のとこの記憶持ちの刀剣に似てる感じもしたんでな」
「あー…なるほどにゃあ…」
「はは…さっそくやらかしたというわけだな…」
「もし今後、俺たちのような刀剣が顕現したら、いろいろ教えないとな…」
「そうだな、その時は頼む」と笑いながら言うと、三振りは苦笑していた。
新しい煙草に火をつけ、吸いだすと小夜に突っ込まれた。
「神さん…吸うペース、早いと思う…」
「あー…ついな。見逃せ」
「それで、厚と小夜助がどうしたんだ?」
「あぁ、あの兄弟が審神者か政府役員になったら、六振りをそれぞれに任せようって、昔決めてたんだ。柳には、初期刀として山姥切。柚には、来派の三振り。で、アオにこいつらを。
まあ、山姥切を初期刀に選ぶかは賭けだったんだがな」
「来派は三振り揃ってる方がいいんじゃないかってなってな。それで柚は体弱かったし、三振りに任せることにしたんだ。柳は、早い段階で俺と小夜を顕現したから、アオさんが審神者か役員をするとなったら、俺らが配属するってなったんだ」
「その…昨日その話をする予定だったんだけど…急に任務が入ってしまって…」
「それで今日ってわけだ。六振りとも、今まで俺の刀剣としていろんな任務をこなしてくれてた。もしアオもお前たちも構わないなら、二振りを任せる、が、再契約という形になるからな。知識や経験は残るが、練度は最初に戻っちまう。つまり、お前たちとスタートは一緒になる」
陸奥守、薬研、鶴丸は顔を見合わせるが、すぐにお互い笑うと、頷く。
その顔だけで答えは分かっていた。
「わしらはえいよ。むしろ大歓迎じゃ!」
「あぁ、あの時の仲間が帰ってくるんだしな」
「それに、俺らがいなかった間の話も聞けるしな」
「けんど、厚と小夜はええんか?今の練度から最初に戻るっちゅうことやけんど…」
「あぁ、問題ない。前の大将の時、短刀は極修行終えてたけど、神さんと契約したから一度戻ってるしな。慣れた」
「それに、練度は戻っても、今までの知識や経験がなくなるわけじゃないですから…神さんのところでも学んだことは、消えません」
「なるほど…じゃあアオが了承すればいいだけだな」
「まあその辺は俺が説明するさ。お前たちは合わせてくれればいい」
にしてもあいつら長いな……そろそろ戻ってくるか?
と思っていたら、ノックが聞こえた。
「入れ」と言えば、買い出しに行ってた三人が戻ってきたが……。
「ちょっと待て、なんでクレープがある…」
「コンビニ近くのカフェのを見つけてね…アオの鼻が」
「それで適当に、全員分買ってきたってわけだ」
『美味しそうだったからなー』
柳と柚が持ってた袋を机に置き、どれにする?と皆に聞くアオ。
みんなはどれでもいいと言ってる。
『じゃあやな兄と柚兄の意見から、乱さんはストロベリー、国広はカフェオレ。蛍丸さんはマスカット』
「ありがとう!アオさん!」
「ありがとー」
「…いいのか?」
『急に呼び出していきなりパシリにした神のおごりだから気にしない!
陸奥は国広と同じカフェオレにしてみた!鶴丸はほうじ茶で、薬研は抹茶!』
柳と柚、アオの刀剣に配ると、厚と小夜の方にも行く。
『厚さんと小夜さんはどれがいいですか?といっても、みんなに配った後で申し訳ないですけど』
「え、俺らもいいのか…?」
『もちろん。人数分ありますから!』
「えと…なんでも大丈夫…です」
「俺も。神さんとアオさん、柳と柚が先に選んでくれ」
「俺らは残ったのでいいから、お前らが決めな」
「うんうん、神の仕事や政府での仕事といろいろ忙しいからね。神は無視していいよ」
「何気に少し機嫌悪いな柚…厚、小夜、選べないならアオに選んでもらいな」
「え…じゃあ、アオさん、お願いします…」
『おおう…んじゃあ……小夜さんにリンゴ、厚さんにレモン!』
「神はきな粉な」
「おう。お前らは何にしたんだ?」
『やな兄がずんだ、柚兄がオレンジ、俺はさくら』
美味しそうに皆が食べてるクレープ。
アオが言ったクレープの名前だけじゃわかりにくいよな。
…え、わかる?…まあわかりにくい人のために言うとだな、クレープに入ってるアイスのことだ。
いろいろ選んだなぁ…。
『袋には水分と、お菓子もあるよ。神のカートンもあるから』
「そりゃどーも。意外と買ってきたなぁ」
「神が来て早々パシリにしたし、それに好きなの買っていいってことだったからね」
「つか鼻で見つけるとか…」
「アオって鼻も耳もいい方だもんなぁ」
確かに。
妖の時より落ちたとはいえ、鼻も耳もいい方だ。
しかもアオの目は相変わらずいい。いろんな意味で。
ま、美味しそうに食べる姿を見れたし、良しとするか。
ちょくちょく気になる味のクレープをもらったり、自分のも分けたりして食べてるが…お菓子もあるんだよな?
相変わらず甘いもの好きだなと思いながら、俺は自分のクレープを食べきり、袋の中身を確認する。
お菓子は別として、水分もいろいろあった。
その中から無糖のコーヒーを選び飲む。
何振りかはクレープを食べきっていたが、アオはゆっくり食べていた。
「で、神。アオに何の用だ?」
「あぁ。アオに、こいつらを任せたいと思ってな」
「厚さんと小夜さんを?」
『???』
「柳の初期刀、山姥切と、柚のとこの来派、そしてこの厚と小夜は、昔同じ本丸に居たんだが…本丸襲撃にあってな。それ以来、俺の刀剣として働いてもらってた。けど俺が代表することになったからな…それで、ちょうど柳が審神者をすることになったから、山姥切を初期刀の五振りに入れ、選んでもらうことにした。
賭けだったけどな」
「そういやそんなこと言ってたな…できれば信用できる奴に任せたいから、まんばを初期刀選びの時混ぜたって」
「おう。見事お前は山姥切を選んでくれたし、俺も安心したわ。
で、来派の三振りは、体が弱い柚のサポートを任せたかったから、柚に。厚と小夜は、最初柳に任せようと思ってたんだが、早くに顕現したから、保留になったんだ」
『へぇ…あれ、柚兄には任せなかったの?』
「俺ら戦闘系の役員は、一部隊分の刀剣を所持できるけど、いろいろ条件があってね…」
「刀剣を所持できる役員は、まあ戦闘系か、ブラック本丸対策課…あとは許可がでてる奴しか無理なんだ。昔は、訳ありの刀剣を所持してた奴がほとんどだったが、それだと偏りすぎるからな…ベテランの役員ならいいんだが、柚は新人だったからな。
しかもマシになってたけど、体が弱いときた。鍛刀で揃えるもありだが、俺が心配ってのもあったしな。そこで、来派を任せることにした。
柚はあと二振り所持できるが、今のとこ鍛刀のみでしか許可が出ない」
『へぇ…奏さんとこの刀剣、堀川さんと石切丸さん、薬研さんも訳ありってこと?』
「そうだな。ただ奏は役員歴も長い。あと三振り所持できるが、その三振りを訳ありの刀剣にすることは可能だ」
『なるほど。…厚さんと小夜さんを俺にねぇ…』
「嫌か?」
『いんや、ただ……』
クレープを食べきり、真剣な目で俺を見てくるアオ。
なんとなく聞きたいことはわかる。
「……俺の家族だから、心配だからってのもある。
が、俺の刀剣を任せるなら、信用できる奴に任せたい。だから代表になっても、こいつらを俺の刀剣として、政府所属にしていた。代表になった時、こいつらを政府役員の誰か、もしくは政府所属の刀剣、新人、ベテラン関係なく審神者に任せる…選択肢はいろいろあった。
けど誰かに任せるってのは、無理だった。それでブラック本丸に行ったり、刀剣に任せっきりの役員に当たってみろ。俺が後悔するし、なんなら潰す」
『…なるほどねぇ……ちなみに、陸奥たちはいいのかい?』
アオは自分の刀剣達に目を向け確認する。
三振りは「もちろん」と笑う。
「仲間が増えるんはええことじゃき、反対せん」
「あぁ、それに政府で働いていたなら、いろいろ詳しいだろうしな」
「それに大将は、戦闘系審神者としてこれから動くんだ。厚たちの知識を借りることができるのはいいことだ」
『ふむ……厚さんと小夜さんは?神の元から離れることになるけど…てか、俺でいいのか?』
「あぁ。神さんからアオさんの話は聞いてるし、俺らも神さんが認めるお人についていきたいんだ」
「アオさんは、戦闘系審神者として、戦場に出ます…神さんは僕らを、大事にしてくれました…そんな神さんの大事な家族を、守りたいです…」
アオは『そっかあ…』と言うと、不敵に笑う。
『厚藤四郎、小夜左文字。
迷惑かけるし、わがままも言うし、変な俺でいいなら、俺の刀剣になってくれるかい?』
「!あぁ!」
「うん…!」
「決まりだ。手続きしてくるから、待ってな。柚、お前の部署でやるからついてきてくれ」
「めんどくさがったな…蛍、お前はここに居な。部屋も近いし、何かあれば内線するから」
「はーい」
柚に呆れられながらも、俺らは柚たちの部署へ向かったのだった。
「さて…お前ら適当に座れ」
「神さん、主さん達だけで大丈夫なの?」
「問題ない。何かあっても柳とアオがいるからな。それに、柚と柳は有名だしな。喧嘩売られたりはしないだろ」
「へぇ、あの二人有名なのか」
「金髪の双子が揃って戦闘系の部署にいるからな。まあ目立ってな」
刀剣達が椅子に座ると、ちょうどノックの音がした。
「入れ」と言えば、二振りの短刀が来た。
「遅くなってすまない、神」
「すみません…」
「大丈夫だ。こいつらの主達に買い出し頼んだしな」
「厚に小夜?」
「……神、あいつらを買い出しに行かせて、俺たちに何か話があるんじゃないか」
「あぁ、確認したいこともあってな。とりあえず二人も座りな」
厚と小夜も席に座り、俺は新しい煙草に火をつけながら席に座る。
「確認したいこと、とは?」
「今ここに、共通点のある刀剣が集まってる。まあ、明石と愛染はいないが。わかるか?」
「…元本丸の仲間…ですね…」
「あぁ、そうだ。山姥切、厚、小夜、愛染、明石、蛍丸。この六振り以外、15年前に折れた。…が、少なくとも、今ここにいるメンバーは、あの日、折れるまでの記憶を思い出してる。
そうだな?乱、陸奥守、薬研、鶴丸」
紫煙を吐き出しながら、四振りを見ると、驚いた顔、困った顔と、様々だった。
「…顕現したては、分からなかったさ。だが、アオの霊力は、懐かしい感じがした」
「そうじゃのう…一晩寝たからか、霊力が馴染んだのか、よぉわからんけんど…起きたら思い出しちょった」
「え、と…ボクもそんな感じ…あと、主さんと柚さんを初めて見たとき、懐かしいって思った」
「確かに。柳と柚が五つのときまでは、一緒に暮らしてたからな…二人を見て、見覚えがあるような…って感じだったぜ」
「ボク達の本丸は、全員、ってわけじゃないけど…何振りかはボクと同じなんだ…でも山姥切さんの話を聞いてたから、主さんにも柚さんにもアオさんにも黙っておこう、て…」
「…そうか。お前たちは、元本丸の刀剣ってわかるのか?」
「俺たち六振りは、なんとなく、だな。乱含め何振りかもわかるようになってきたらしい」
「ボクたちもなんとなくなんだけどね…」
山姥切、厚、小夜、愛染、明石、蛍丸。
この六振りは、15年前、本丸の襲撃にあった際、当時の主と、主の子供を連れ、何とか現世に逃げ切れた。
だが追手によってもう無理だ、と思った時、俺らが見つけ、追手を倒し、保護した。
当時のこいつらの主と俺らは、面識ないはずだったが、大昔の知り合いと判明。
更にお腹に子を身籠っていて、もう生まれるという状態…急ぎ屋敷に戻り、手当や出産とばたばたとし、なんとか子は生まれた。
が…こいつらの主はもう長くないと分かっていた。
だから最後の願いを言い、その願いを、六振りは守っている。
幸い、命はなんとか助かったが、それ以来昏睡状態…俺の家族、ナナシが匿い、今も治療をしている。
「山姥切、お前んとこの記憶持ちの奴には話してるんだな?」
「あぁ。あいつの願いもあったし、話しておこうと思った。そう思ったのも、乱が思い出して、主に確認しようとしたからだ」
「…思い出したとき、悲しさも辛さも、嬉しさもあった…あの時、主さんはまだ子供だったけど、どうなったか聞きたくて……でも、山姥切さんの話を聞いてやめたの。ならボクは、前の主さんの願いを守って、今の主さんを守るって決めた」
「なるほど…柳が今も思い出さずに済んでるのはお前たちのおかげか」
「俺らは国行と国俊だけだから、誰にも話してないよ」
「だろうな。ま、もし今後蛍丸達が説明するとなると、柚が今後鍛刀した時にくる刀剣次第だろうな」
「山姥切、あの後…どうなったんじゃ?わしらにも教えとうせ」
山姥切と蛍丸、厚と小夜は、あの日のことを話し出した。
陸奥守、薬研、鶴丸は真剣に聞いていた。
俺?煙草吸って聞いてますが何か?
「…そうか、そんなことが…」
「すまない、お前たちは俺たちを逃がしてくれたのに、あいつを守れず…」
「山姥切の旦那、あんた達が謝ることはない。意識不明とはいえ、あのお人は生きてるんだろ?それに、あのお人の子らは生きてるんだ」
「そうじゃ。今のわしらはあの子を守らにゃいかん」
「あぁ、あの人の願いもそうだ。どういうわけか、記憶を持ったまままた顕現できたんだ。あの子のためになろう」
「柳と柚の記憶は、封印してあるが、両親については、事故で亡くなってると伝えてある。アオは封印してないが、同様に伝えてある。
お前たちも、アオや柳、柚には言うなよ。いつか自分たちで思い出すまでは」
「わかった」
「あと過保護になりすぎないように。とくにアオに対してな」
「神さん…神さんも神楽さんも、過保護だと思うよ…」
「まあ否定はしねぇよ。あいつの負担にならない程度なら大丈夫だろ」
「にしても…前の本丸の奴が、柳とアオの刀剣として顕現するとはなー」
「あー…その辺はよくわかんねぇけど、思い当たることなら」
紫煙を吐きながらそういえば、なんだなんだとこちらを向く刀剣ら。
いや、ほんとによくわかんねえけどな。
「柳、柚、アオの霊力。あいつの子供だから当たり前だけど、似てんだよ、あいつに。一番似てるのはアオなんだけどな。次に柳だ」
「あれ、柚さんは?」
「柚も似てるが、あの二人が一番似てるんだよ。柚はガキの頃、今よりも体弱かったからな、不安定だったんだ。今はだいぶ安定してるがな」
「つまり、前の主に似た霊力に引き寄せられた、ってことか?」
「たぶんだからわかんねぇぞ。偶然あいつらの元に顕現して、あいつらの霊力が馴染んで、似てる霊力に反応して、奇跡的に思い出したってだけかもしれねぇし」
「なるほどな…にしても、神、だったか。なぜ俺らが記憶を思い出してると分かったんだ?」
「あー勘だな」
「勘…」
「あぁ、今日アオを呼んだのは、厚と小夜のことで呼んだんだけど、受付が柚に皆が来たことを知らせ、俺にも連絡がきた。
で、モニターでエレベーターや、降りた場所の映像を見てたんだが、違和感があってな」
「あ、ボクも思った」
「あぁ…なるほどな」
乱と山姥切は分かってるみたいだが、三振りはよくわかってないようだった。
「薬研は懐に居たが、陸奥守や鶴丸は、初めてエレベーターに乗るのに、静かだった。緊張してる静かさってより、慣れてる静かさだったんでな。あと、柳のとこの記憶持ちの刀剣に似てる感じもしたんでな」
「あー…なるほどにゃあ…」
「はは…さっそくやらかしたというわけだな…」
「もし今後、俺たちのような刀剣が顕現したら、いろいろ教えないとな…」
「そうだな、その時は頼む」と笑いながら言うと、三振りは苦笑していた。
新しい煙草に火をつけ、吸いだすと小夜に突っ込まれた。
「神さん…吸うペース、早いと思う…」
「あー…ついな。見逃せ」
「それで、厚と小夜助がどうしたんだ?」
「あぁ、あの兄弟が審神者か政府役員になったら、六振りをそれぞれに任せようって、昔決めてたんだ。柳には、初期刀として山姥切。柚には、来派の三振り。で、アオにこいつらを。
まあ、山姥切を初期刀に選ぶかは賭けだったんだがな」
「来派は三振り揃ってる方がいいんじゃないかってなってな。それで柚は体弱かったし、三振りに任せることにしたんだ。柳は、早い段階で俺と小夜を顕現したから、アオさんが審神者か役員をするとなったら、俺らが配属するってなったんだ」
「その…昨日その話をする予定だったんだけど…急に任務が入ってしまって…」
「それで今日ってわけだ。六振りとも、今まで俺の刀剣としていろんな任務をこなしてくれてた。もしアオもお前たちも構わないなら、二振りを任せる、が、再契約という形になるからな。知識や経験は残るが、練度は最初に戻っちまう。つまり、お前たちとスタートは一緒になる」
陸奥守、薬研、鶴丸は顔を見合わせるが、すぐにお互い笑うと、頷く。
その顔だけで答えは分かっていた。
「わしらはえいよ。むしろ大歓迎じゃ!」
「あぁ、あの時の仲間が帰ってくるんだしな」
「それに、俺らがいなかった間の話も聞けるしな」
「けんど、厚と小夜はええんか?今の練度から最初に戻るっちゅうことやけんど…」
「あぁ、問題ない。前の大将の時、短刀は極修行終えてたけど、神さんと契約したから一度戻ってるしな。慣れた」
「それに、練度は戻っても、今までの知識や経験がなくなるわけじゃないですから…神さんのところでも学んだことは、消えません」
「なるほど…じゃあアオが了承すればいいだけだな」
「まあその辺は俺が説明するさ。お前たちは合わせてくれればいい」
にしてもあいつら長いな……そろそろ戻ってくるか?
と思っていたら、ノックが聞こえた。
「入れ」と言えば、買い出しに行ってた三人が戻ってきたが……。
「ちょっと待て、なんでクレープがある…」
「コンビニ近くのカフェのを見つけてね…アオの鼻が」
「それで適当に、全員分買ってきたってわけだ」
『美味しそうだったからなー』
柳と柚が持ってた袋を机に置き、どれにする?と皆に聞くアオ。
みんなはどれでもいいと言ってる。
『じゃあやな兄と柚兄の意見から、乱さんはストロベリー、国広はカフェオレ。蛍丸さんはマスカット』
「ありがとう!アオさん!」
「ありがとー」
「…いいのか?」
『急に呼び出していきなりパシリにした神のおごりだから気にしない!
陸奥は国広と同じカフェオレにしてみた!鶴丸はほうじ茶で、薬研は抹茶!』
柳と柚、アオの刀剣に配ると、厚と小夜の方にも行く。
『厚さんと小夜さんはどれがいいですか?といっても、みんなに配った後で申し訳ないですけど』
「え、俺らもいいのか…?」
『もちろん。人数分ありますから!』
「えと…なんでも大丈夫…です」
「俺も。神さんとアオさん、柳と柚が先に選んでくれ」
「俺らは残ったのでいいから、お前らが決めな」
「うんうん、神の仕事や政府での仕事といろいろ忙しいからね。神は無視していいよ」
「何気に少し機嫌悪いな柚…厚、小夜、選べないならアオに選んでもらいな」
「え…じゃあ、アオさん、お願いします…」
『おおう…んじゃあ……小夜さんにリンゴ、厚さんにレモン!』
「神はきな粉な」
「おう。お前らは何にしたんだ?」
『やな兄がずんだ、柚兄がオレンジ、俺はさくら』
美味しそうに皆が食べてるクレープ。
アオが言ったクレープの名前だけじゃわかりにくいよな。
…え、わかる?…まあわかりにくい人のために言うとだな、クレープに入ってるアイスのことだ。
いろいろ選んだなぁ…。
『袋には水分と、お菓子もあるよ。神のカートンもあるから』
「そりゃどーも。意外と買ってきたなぁ」
「神が来て早々パシリにしたし、それに好きなの買っていいってことだったからね」
「つか鼻で見つけるとか…」
「アオって鼻も耳もいい方だもんなぁ」
確かに。
妖の時より落ちたとはいえ、鼻も耳もいい方だ。
しかもアオの目は相変わらずいい。いろんな意味で。
ま、美味しそうに食べる姿を見れたし、良しとするか。
ちょくちょく気になる味のクレープをもらったり、自分のも分けたりして食べてるが…お菓子もあるんだよな?
相変わらず甘いもの好きだなと思いながら、俺は自分のクレープを食べきり、袋の中身を確認する。
お菓子は別として、水分もいろいろあった。
その中から無糖のコーヒーを選び飲む。
何振りかはクレープを食べきっていたが、アオはゆっくり食べていた。
「で、神。アオに何の用だ?」
「あぁ。アオに、こいつらを任せたいと思ってな」
「厚さんと小夜さんを?」
『???』
「柳の初期刀、山姥切と、柚のとこの来派、そしてこの厚と小夜は、昔同じ本丸に居たんだが…本丸襲撃にあってな。それ以来、俺の刀剣として働いてもらってた。けど俺が代表することになったからな…それで、ちょうど柳が審神者をすることになったから、山姥切を初期刀の五振りに入れ、選んでもらうことにした。
賭けだったけどな」
「そういやそんなこと言ってたな…できれば信用できる奴に任せたいから、まんばを初期刀選びの時混ぜたって」
「おう。見事お前は山姥切を選んでくれたし、俺も安心したわ。
で、来派の三振りは、体が弱い柚のサポートを任せたかったから、柚に。厚と小夜は、最初柳に任せようと思ってたんだが、早くに顕現したから、保留になったんだ」
『へぇ…あれ、柚兄には任せなかったの?』
「俺ら戦闘系の役員は、一部隊分の刀剣を所持できるけど、いろいろ条件があってね…」
「刀剣を所持できる役員は、まあ戦闘系か、ブラック本丸対策課…あとは許可がでてる奴しか無理なんだ。昔は、訳ありの刀剣を所持してた奴がほとんどだったが、それだと偏りすぎるからな…ベテランの役員ならいいんだが、柚は新人だったからな。
しかもマシになってたけど、体が弱いときた。鍛刀で揃えるもありだが、俺が心配ってのもあったしな。そこで、来派を任せることにした。
柚はあと二振り所持できるが、今のとこ鍛刀のみでしか許可が出ない」
『へぇ…奏さんとこの刀剣、堀川さんと石切丸さん、薬研さんも訳ありってこと?』
「そうだな。ただ奏は役員歴も長い。あと三振り所持できるが、その三振りを訳ありの刀剣にすることは可能だ」
『なるほど。…厚さんと小夜さんを俺にねぇ…』
「嫌か?」
『いんや、ただ……』
クレープを食べきり、真剣な目で俺を見てくるアオ。
なんとなく聞きたいことはわかる。
「……俺の家族だから、心配だからってのもある。
が、俺の刀剣を任せるなら、信用できる奴に任せたい。だから代表になっても、こいつらを俺の刀剣として、政府所属にしていた。代表になった時、こいつらを政府役員の誰か、もしくは政府所属の刀剣、新人、ベテラン関係なく審神者に任せる…選択肢はいろいろあった。
けど誰かに任せるってのは、無理だった。それでブラック本丸に行ったり、刀剣に任せっきりの役員に当たってみろ。俺が後悔するし、なんなら潰す」
『…なるほどねぇ……ちなみに、陸奥たちはいいのかい?』
アオは自分の刀剣達に目を向け確認する。
三振りは「もちろん」と笑う。
「仲間が増えるんはええことじゃき、反対せん」
「あぁ、それに政府で働いていたなら、いろいろ詳しいだろうしな」
「それに大将は、戦闘系審神者としてこれから動くんだ。厚たちの知識を借りることができるのはいいことだ」
『ふむ……厚さんと小夜さんは?神の元から離れることになるけど…てか、俺でいいのか?』
「あぁ。神さんからアオさんの話は聞いてるし、俺らも神さんが認めるお人についていきたいんだ」
「アオさんは、戦闘系審神者として、戦場に出ます…神さんは僕らを、大事にしてくれました…そんな神さんの大事な家族を、守りたいです…」
アオは『そっかあ…』と言うと、不敵に笑う。
『厚藤四郎、小夜左文字。
迷惑かけるし、わがままも言うし、変な俺でいいなら、俺の刀剣になってくれるかい?』
「!あぁ!」
「うん…!」
「決まりだ。手続きしてくるから、待ってな。柚、お前の部署でやるからついてきてくれ」
「めんどくさがったな…蛍、お前はここに居な。部屋も近いし、何かあれば内線するから」
「はーい」
柚に呆れられながらも、俺らは柚たちの部署へ向かったのだった。