はるか昔、人が好きな龍神の夫婦が居ました。
その夫婦は、山奥にひっそりと暮らしながらも、人のふりをしてはよく、人里や町に訪れていました。

ある時夫婦は、孤児たちを見つけ、一緒に暮らすようになりました。
孤児たちは、夫婦が龍神であることは知っていました。
なぜなら、孤児の中には、妖との間に生まれた子供もいたからです。

孤児たちはすくすくと育ち、また夫婦にも一人娘が生まれました。

いつしか、山に龍神様がいるという噂が流れ、人の中で暮らせなくなった者たちが集まり、龍神の隠里と呼ばれるようになりました。
人も、妖も、小さな神も。
人と妖の間に生まれる子もいました。
でもこの里の者たちは、お互いを傷つけず、支え合いながら暮らしていました。

ある時、龍神の夫婦と最初に暮らし始めた孤児たちが、龍神の眷属にしてほしいと願い出ました。
夫婦は眷属にする気はないと断っていました。
でも孤児たちは諦めず頼み続けました。
そして、その願いが叶い、眷属となりました。

大人になった孤児たちも、それぞれ伴侶を作り、子供も生まれ、すくすくと育ち、里も賑やかになっていきました。


ですが、ある時その幸せは、異形のものに壊されたのです。
妖でもない、荒魂に似たそれは、大群で押し寄せてきました。
龍神の夫婦は、里の者たちをすぐに逃がし、眷属と迎え撃ちました。
だけど、倒しても倒してもあふれ出てくる異形の者たち。

夫婦は最後の力を使い、眷属達に転生の術をかけました。
逃がした娘を、この先見守ってほしいという願いを込めて。
眷属達は泣きました。
そして眷属達は、強制的に転生の準備に入りながらも、二人の最期を見届けたのでした。


龍神の娘は、両親の兄弟、叔父二人に逃がされましたが、自分だけ助かったことを悔やみました。
知り合いの陰陽師の術式の中にあった呪い、死んでも何度も転生する呪いを自分の魂に刻み、そのまま息を引き取りました。

叔父二人は、人の世界でこっそり暮らしながら、眷属達と姪っ子を待ち続け、探し続けました。
繰り返し、繰り返し、探し、待ち続けました。


そして、今生の物語が始まったのだった…。